明日の株式相場に向けて=インフレ突入のエントランスは株高の匂い
きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比111円高の3万8807円と反発。朝方は買い手控えムードが蔓延し、引き続き下値模索の動きを強いられたものの、前場中盤以降に不意に景色が変わり、何かのスイッチが入ったかのように日経平均は一貫して強含む展開となった。後場に入っても終始プラス圏でジリジリと水準を切り上げた。
前日の米国株市場ではエヌビディア<NVDA>が再び売られ、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>やインテル<INTC>などその他の半導体関連株も総じて軟調。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は2.5%安と大幅な下げをみせ、この流れを受け東京市場でも半導体セクターの主力株を中心に売りの洗礼を浴びる格好となった。明らかに投資家のマインドは冷めていた。来週18~19日に日銀金融政策決定会合が行われ、これに半歩遅れて19~20日の日程でFOMCが開催される。この内容を見極めたいとの思惑から、目先は手を出しにくい相場となっている。ただ、買いが手控えられれば必ず株価が下がるということでもない。株価の強弱は、あくまで売りと買いのバランスであり、「今は売り方の立場でも仕掛けようがない時間軸にある」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。日米の金融政策会合を通過した時点で、それがどういう結果であっても、アク抜け感から株価が急上昇するというケースは十分に考えられる。投資家が戦々恐々とショックに身構えているような状況は、逆に空売り筋にとっても怖い場面なのである。株式市場においてネガティブシナリオであっても想定内であれば、吹っ切れて株価が舞い上がるというパターンはこれまでに何度も繰り返されてきた。
では、来週の日銀決定会合で“想定されるネガティブシナリオ”とはいかなるものか。これはあす15日に開示される連合の賃上げに関する第1次集計の内容にもよるが、前日発表された春闘の主要企業による一斉回答を見る限りはデフレ脱却を強く認識させるもので、日銀はマイナス金利解除を前倒し的に決めるという点については大方織り込まれている。加えて、「YCCの撤廃とETF買い入れ停止も同時に発表される可能性は十分にある」(生保系エコノミスト)というが、この2つについては既に形骸化している部分もあり、マーケット側から見れば今さら感も拭えない。実際、ETF買いについては週明け11日に東京市場が波乱安の展開に見舞われた際、前引け時点でTOPIXが2%超下落していたのにも関わらず日銀は動かなかった。そこで地ならしは行われているという解釈である。
一方、“想定外のネガティブシナリオ”としては、会合後の記者会見で植田日銀総裁がマイナス金利解除後の金融政策について、間を置かずに利上げを示唆する場合だ。普通に考えれば、ゼロ金利状態を放置することも今の環境では妥当性に乏しいことに変わりはない。ただし、これについては「99%の確率で利上げのタイミングを植田総裁が匂わすようなことはない」(前出の生保系エコノミスト)という見方が支配的だ。しばらくゼロ金利のモラトリアムが続くと分かれば、東京市場に海外マネーが再び流れ込む可能性は高い。
個別株物色では新たに「インフレ」という視点を持ちたい。金市況をはじめ高騰するコモディティ価格を念頭に置いて、例えば、きょう急動意で底値圏から急浮上気配をみせている住友金属鉱山<5713>に着目。週足チャートで眺めれば今週の大陽線で大勢トレンド転換を果たした可能性があり、目先の押し目は買いで対処して面白い。また、貴金属の回収・リサイクルを手掛ける松田産業<7456>なども底入れ足となってきた。5日・25日移動平均線のゴールデンクロスに続き、75日線クリアで見直し買いに弾みがつきそうだ。
もちろん 金価格高騰の流れを捉えるのであれば、ド真ん中直球ストレートで純金上場信託(現物国内保管型)<1540>なども投資対象として魅力的だが、当然ながら金価格に連動して既にかなりの高値圏にある。対して住友鉱や松田産業は足もとの業績が冴えないからこそ今の株価ポジションであるわけで、出遅れ妙味という観点で期待値は高い。
あすのスケジュールでは、1月の第3次産業活動指数が午後取引時間中に発表される。このほか、3カ月物国庫短期証券の入札が午前中に行われる予定。海外では2月の中国70都市の新築住宅価格動向のほか、米国で重要指標発表が相次ぐ。3月のNY連銀製造業景況感指数、2月の米輸出入物価指数、2月の米鉱工業生産・設備稼働率、3月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などに注目が集まる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日の米国株市場ではエヌビディア<NVDA>が再び売られ、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>やインテル<INTC>などその他の半導体関連株も総じて軟調。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は2.5%安と大幅な下げをみせ、この流れを受け東京市場でも半導体セクターの主力株を中心に売りの洗礼を浴びる格好となった。明らかに投資家のマインドは冷めていた。来週18~19日に日銀金融政策決定会合が行われ、これに半歩遅れて19~20日の日程でFOMCが開催される。この内容を見極めたいとの思惑から、目先は手を出しにくい相場となっている。ただ、買いが手控えられれば必ず株価が下がるということでもない。株価の強弱は、あくまで売りと買いのバランスであり、「今は売り方の立場でも仕掛けようがない時間軸にある」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。日米の金融政策会合を通過した時点で、それがどういう結果であっても、アク抜け感から株価が急上昇するというケースは十分に考えられる。投資家が戦々恐々とショックに身構えているような状況は、逆に空売り筋にとっても怖い場面なのである。株式市場においてネガティブシナリオであっても想定内であれば、吹っ切れて株価が舞い上がるというパターンはこれまでに何度も繰り返されてきた。
では、来週の日銀決定会合で“想定されるネガティブシナリオ”とはいかなるものか。これはあす15日に開示される連合の賃上げに関する第1次集計の内容にもよるが、前日発表された春闘の主要企業による一斉回答を見る限りはデフレ脱却を強く認識させるもので、日銀はマイナス金利解除を前倒し的に決めるという点については大方織り込まれている。加えて、「YCCの撤廃とETF買い入れ停止も同時に発表される可能性は十分にある」(生保系エコノミスト)というが、この2つについては既に形骸化している部分もあり、マーケット側から見れば今さら感も拭えない。実際、ETF買いについては週明け11日に東京市場が波乱安の展開に見舞われた際、前引け時点でTOPIXが2%超下落していたのにも関わらず日銀は動かなかった。そこで地ならしは行われているという解釈である。
一方、“想定外のネガティブシナリオ”としては、会合後の記者会見で植田日銀総裁がマイナス金利解除後の金融政策について、間を置かずに利上げを示唆する場合だ。普通に考えれば、ゼロ金利状態を放置することも今の環境では妥当性に乏しいことに変わりはない。ただし、これについては「99%の確率で利上げのタイミングを植田総裁が匂わすようなことはない」(前出の生保系エコノミスト)という見方が支配的だ。しばらくゼロ金利のモラトリアムが続くと分かれば、東京市場に海外マネーが再び流れ込む可能性は高い。
個別株物色では新たに「インフレ」という視点を持ちたい。金市況をはじめ高騰するコモディティ価格を念頭に置いて、例えば、きょう急動意で底値圏から急浮上気配をみせている住友金属鉱山<5713>に着目。週足チャートで眺めれば今週の大陽線で大勢トレンド転換を果たした可能性があり、目先の押し目は買いで対処して面白い。また、貴金属の回収・リサイクルを手掛ける松田産業<7456>なども底入れ足となってきた。5日・25日移動平均線のゴールデンクロスに続き、75日線クリアで見直し買いに弾みがつきそうだ。
もちろん 金価格高騰の流れを捉えるのであれば、ド真ん中直球ストレートで純金上場信託(現物国内保管型)<1540>なども投資対象として魅力的だが、当然ながら金価格に連動して既にかなりの高値圏にある。対して住友鉱や松田産業は足もとの業績が冴えないからこそ今の株価ポジションであるわけで、出遅れ妙味という観点で期待値は高い。
あすのスケジュールでは、1月の第3次産業活動指数が午後取引時間中に発表される。このほか、3カ月物国庫短期証券の入札が午前中に行われる予定。海外では2月の中国70都市の新築住宅価格動向のほか、米国で重要指標発表が相次ぐ。3月のNY連銀製造業景況感指数、2月の米輸出入物価指数、2月の米鉱工業生産・設備稼働率、3月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などに注目が集まる。(銀)
出所:MINKABU PRESS