サンフロ不動産 Research Memo(1):通期は利益予想を上方修正。期末増配を見込む
■要約
サンフロンティア不動産<8934>は、世界の大都市、東京におけるオフィスビルや店舗ビルを中心に、不動産活用の専門サービスを提供する企業である。同社グループの事業は、「不動産再生」「不動産サービス」「ホテル・観光」の3事業に大別される。不動産再生事業は主に不動産のリプランニングや賃貸ビル、不動産小口所有商品の販売を、不動産サービス事業はオフィスの売買仲介・賃貸仲介、プロパティマネジメント、ビルメンテナンス、滞納賃料保証、貸会議室を主な事業内容としている。ホテル・観光事業はホテルの運営・開発・再生・販売、地域創生事業などを手掛けている。不動産再生事業を軸に、最適な事業ポートフォリオを構築することで、収益の多角化を実現している。これにより新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)といった事業環境の急変化にも柔軟に対応し、2023年3月期まで営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益については業績予想を12期連続で達成した。また同社グループのクレドである「利他」の精神が、全従業員の価値観を揃え部門間での協業を可能にし、付加価値の高い商品とサービスを生み出す強みとなっている。
1. 2024年3月期第3四半期累計の業績概要
2024年3月期第3四半期累計の業績は、売上高62,258百万円(前年同期比17.4%減)、営業利益14,163百万円(同3.6%減)、経常利益13,902百万円(同3.5%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益9,744百万円(同5.9%減)となった。前年同期に物件売却が集中した影響により反動減となったが、ホテル観光事業が好調に推移したこともあり、通期の利益予想を上方修正した。不動産再生事業では、利益率が計画を上回って推移しており、2025年3月期に向けた物件の仕入れに注力する方針である。不動産サービス事業では、新拠点を開業・増床した貸会議室事業が引き続き好調を維持するなど、各事業とも堅実に成長している。ホテル・観光事業では、旅行需要の拡大やインバウンドの回復が続き、稼働率・客室単価ともに上昇しており、大幅な増収増益となった。通期の利益予想を上方修正したことに加え、第25期の記念配当の実施により、期末配当の増配を発表した。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の業績予想は、売上高79,000百万円(前期比4.6%減)、営業利益16,700百万円(同12.0%増)、経常利益16,500百万円(同12.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11,600百万円(同0.1%減)としている。2024年2月8日に通期業績予想の修正を公表しており、売上高は前回予想を下回るものの、利益率の上昇と需要拡大により、営業利益以下の段階利益は前回予想を上回る見込み。不動産再生事業では、リプランニング事業において販売物件の利益率が期初計画を上回り、セグメント利益が期初予想の水準に到達した。そのため、販売計画を一部見直し、期初の売上高予想に対して4,500百万円の下方修正を行った。不動産サービス事業では、セグメント全体の業績がおおむね計画どおりで進捗しているため、売上高及び利益の予想を据え置いた。ホテル・観光事業では、旅行需要の拡大を受け、ホテル運営事業において前回予想を上回る売上高・営業利益を見込んでいる。2024年3月期第3四半期の通期業績予想に対する経常利益の進捗率は84.3%と高い水準で推移している。不動産サービス事業の堅実な成長に加え、ストックビジネスであるホテル運営事業の業績が拡大傾向にあり、通期計画実現の蓋然性は高いと弊社は見ている。
3. 成長戦略
同社グループは中期経営計画において、2025年3月期に売上高1,000億円、経常利益200億円を掲げている。経営指標は、経常利益率20%、自己資本比率50%水準、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上としている。各事業において成長戦略を打ち出し、ESG、デジタル化推進、キャッシュ・フローを重点ポイントに挙げている。中期経営計画の下、オフィス需要の増減などのリスクに対応しつつ、収益基盤の多角化やESG投資の推進など、将来的な成長戦略に積極的に取り組んでおり、安定的な収益の確保と将来的な成長への期待が高まる。また、1株当たり当期純利益は2022年3月期から右肩上がりで、安定配当を継続しており、中長期的な株価向上に対する蓋然性も高いと弊社では見ている。
■Key Points
・都心オフィスビル事業を中心に、安定的な利益創出による底堅い成長を実現
・ 2024年3月期第3四半期累計の業績は、不動産再生事業では計画を上回る利益率を確保、ホテル・観光事業は旅行需要拡大・インバウンド回復により好調継続
・2024年3月期の業績予想は、経常利益を上方修正、過去最高益更新を見込む。通期業績予想に対する経常利益の進捗率は84.3%と高い水準で推移、通期計画実現の蓋然性は高い
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
《HH》
提供:フィスコ