貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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7735 スクリン

東証P
9,067円
前日比
-31
-0.34%
PTS
9,080円
23:58 11/22
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
11.0 2.23 2.72 11.41
時価総額 9,211億円
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銀行株の買い場を探る! 注目点は米金利動向と「持ち合い解消」か <株探トップ特集>


―「ほぼトラ」で米金利上昇なら追い風、地銀の低PBR改善には根強い期待―

 日銀が18~19日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策が解除されるとの観測が急速に広がっている。にもかかわらず銀行株は今週に入り、全体相場に連れる形で調整を余儀なくされた。米国の重要経済指標の発表を控え、国内金利に影響を及ぼす米国金利の方向性を見極めたいとする姿勢は強まっており、12日の東京市場で日経平均株価の下げ幅は一時500円を超えた後に下げ渋ったものの、 銀行株への押し目買い意欲は限られた。

 米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ加速による米金利低下は、日本の金利の上昇圧力を抑制する方向に作用する。一方で、米国での粘着的なインフレを背景にFRBの利下げ観測が後退した場合は、米金利の上昇余地が広がるとみられ、銀行株の反騰機運を高めることとなる。更に、減税策などを公約に掲げるトランプ前大統領が今秋の大統領選で再選を果たすことを確実視する「ほぼトランプ(ほぼトラ)」の雰囲気が強まれば、財政不安から米国の金利が一段と切り上がるシナリオが横たわっている。

 加えて、日本国内では金融セクター全般に政策保有株の縮減というテーマも存在する。低PBR(株価純資産倍率)の状況にある地方銀行に対しては、資本効率の更なる向上などが期待できる環境にある。

●3月会合の政策修正観測広がる

 日経平均株価は前週7日にザラ場中の高値4万472円をつけた後、上げ商状は一服し、3営業日後の12日までの間、下げ幅は一時2200円となった。日本株全般を押し下げる一因として、「3月マイナス金利解除説」を挙げる声は多い。先週以降、3月の決定会合で日銀がマイナス金利の解除について議論するとの報道が相次いでおり、国内金利が上昇し、株式相場にネガティブな影響が出るとの警戒感から売り圧力が強まったとの指摘がある。

 3月解除説が市場参加者の間で有力視される背景には、まずは政治日程がある。4月28日に衆院東京15区と島根1区、長崎3区で補欠選挙の投開票が行われる。4月の決定会合は衆院補選前となる25~26日。岸田政権の支持率が低迷するなか、選挙直前に政策変更となれば政治情勢に微妙な作用を及ぼしかねない。4月会合ではなく3月会合で前倒ししてマイナス金利解除に動いたほうが、日銀としてはあらぬ批判をかわすことが可能だという見方が出ている。

 今年の春闘の賃上げ率が当初の予想を上回る水準になる可能性が高まっている点も、3月解除説をサポートしている。連合は7日、傘下の労働組合が要求した賃上げ率が中間集計の段階で平均5.85%となったと発表した。もしこの水準で妥結となった場合は足もとの消費者物価の伸びを上回る水準となり、実質賃金のプラス転換による景気の底入れの期待が膨らむ。春闘の集中回答日は3月13日。そこで示された水準は、日銀が賃上げ情勢を見極めるための材料となり、金融政策の判断に生かされることになると想定されている。

●メガバンクよりも地銀のPBRは低水準

 時事通信が6日、3月の決定会合に関し、一部出席者がマイナス金利政策の解除が妥当だとする意見を表明する見通しだと伝えた。これを受けて銀行株は上昇指向を強めたが、東証の銀行株指数は8日に天井を形成した後、全体相場とともに調整色を強めている。

 マイナス金利の解除により短期金利が上昇し、更に中期から長期、超長期までを含む利回り曲線(イールドカーブ)の傾きが急(スティープ化)となれば、短期市場で資金を調達し、長期で運用する金融機関にとって、事業環境が一段と好転することとなる。直近ではマイナス金利の解除後の0.25%幅の利上げに対する期待も強まりつつある。ただ国内金利が一段と上昇するには、経済成長とともに外部環境からの追い風が欠かせない。

 米国ではFRBによる6月の利下げ観測が強まった状況にある。もっとも、経済指標次第でこの観測は大きく変動する余地があり、特に2月の米消費者物価指数(CPI)の公表に関しては、米国債版「スーパーチューズデー」とも表現され、市場参加者の関心を集めている。金融市場ではトランプ前大統領の再選シナリオに備えようとするムードも強まりつつあり、直近の米国債の価格上昇(金利の低下)は行き過ぎとして、投資家に売りを推奨する金融機関も現れた。

 米国金利の動向はなお流動的な面があるが、日本の銀行株が総じて低PBRの状態であることには変わりがない。特に 地銀 メガバンクと比べてPBRの水準が低く、その修正余地の大きさが意識されている。PBRが1倍割れの上場企業に対する機関投資家の圧力は日増しに強まっており、資本効率の改善に向け政策保有株の縮減などを求める声も強まっている。

 持ち合い解消は株主による経営陣への監視機能を強め、企業価値の向上に大きく寄与すると考えられている。地銀が持ち合い株を売却して得た資金の一部については、自社株買いや配当に活用されることも期待されている。株式を相互保有する損保各社による地銀株の放出リスクがあっても、資本効率の向上や経営体質の強化を見込む投資家の資金の呼び水になる可能性は十分にあるはずだ。日経平均株価が3万8000円台と歴史的な高値圏にある足もとの相場において、地銀各社が保有する上場銘柄の多くは時価が簿価を上回った状況にあるとみられており、業績のボトムラインを押し上げるエネルギーが蓄積された状況にあると言えるに違いない。

●有報で持ち合い関係を確認すると…

 地銀各行の有価証券報告書を確認すると、政策保有銘柄の顔ぶれはさまざまだ。例えば京都フィナンシャルグループ <5844> [東証P]傘下の京都銀行は任天堂 <7974> [東証P]を筆頭に、ニデック <6594> [東証P]や村田製作所 <6981> [東証P]、京セラ <6971> [東証P]など電子部品大手の株式を保有する。京都FGは総還元性向を50%以上とする方針とともに、中期経営計画では政策保有株式を段階的に縮減する姿勢も示している。隣県の滋賀銀行 <8366> [東証P]も村田製やニデックのほか、島津製作所 <7701> [東証P]や半導体製造装置のSCREENホールディングス <7735> [東証P]など京都銘柄を保有している。

 ハイテク関連では、半導体ウエハー世界首位である信越化学工業 <4063> [東証P]を保有銘柄に挙げる地銀が北信越地域を中心に多い。長野県地盤の八十二銀行 <8359> [東証P]は前期時点で上場株式116銘柄を保有。貸借対照表への計上額は合計4477億円と地銀のなかでも多く、信越化の計上額は2520億円に上る。八十二の株価は年初来で一時30%を超す上昇となり1000円の大台に乗せる場面があったが、足もとのPBRは0.4倍台。信用倍率は1倍を下回る売り長の状態だ。

 新潟県地盤の第四北越フィナンシャルグループ <7327> [東証P]や、福井銀行 <8362> [東証P]などの有報においても、貸借対照表計上額の上位銘柄に信越化の名が登場する。第四北越FGの配当利回りは3%台と銀行セクターのなかでは比較的高い水準。福井銀のPBRは0.3倍台と割安感が強い。

 福島県地盤の東邦銀行 <8346> [東証P]は、日東紡績 <3110> [東証P]株の保有を前期の有報で明らかにしている。額は18億円程度にとどまるが、日東紡の株価は生成AIの需要拡大を受けたデータセンター向けのスペシャルガラスなどの成長期待から、2023年3月末の水準から今年3月には一時3倍を超える上昇となった。東邦銀の株価自体は18年以来の高値圏とはいえ、300円台で推移している。

●自動車メーカー、インバウンド関連など地域ごとに特色

 山梨中央銀行 <8360> [東証P]は25年3月期までに上場政策保有株式を時価ベースで100億円程度縮減する目標を設定する。23年3月期の貸借対照表計上額の上位には、インバウンド需要の回復が追い風となる富士急行 <9010> [東証P]と、不動産大手の住友不動産 <8830> [東証P]、そして半導体向け材料の成長期待が強いトリケミカル研究所 <4369> [東証P]、サンリオ <8136> [東証P]が名を連ねている。山梨銀のPBRは0.3倍前後だ。

 自動車メーカーと持ち合いの関係にある地銀も多い。名古屋銀行 <8522> [東証P]や三重県地盤の百五銀行 <8368> [東証P]など、中部地方の地銀にはトヨタ自動車 <7203> [東証P]と持ち合いの関係にあるところが目立つ。岐阜県地盤の十六フィナンシャルグループ <7380> [東証P]はトヨタとともに、インテル<INTC>関連銘柄のイビデン <4062> [東証P]との持ち合いの関係が示されている。

 地銀上位のしずおかフィナンシャルグループ <5831> [東証P]は、前期の貸借対照表計上額において第一三共 <4568> [東証P]に続く形で、インドで快走するスズキ <7269> [東証P]が登場。群馬銀行 <8334> [東証P]は、SUBARU <7270> [東証P]の計上額が最も多く、東洋製罐グループホールディングス <5901> [東証P]、信越化が上位に入っている。

 円安メリットの自動車に対し、円高メリットの代表格とされるニトリホールディングス <9843> [東証P]については、北洋銀行 <8524> [東証P]が持ち合いの関係にある。前期の計上額は約610億円。北海道地盤の同行に対しては、インバウンド需要の拡大や、ラピダスによる次世代半導体工場の建設を受けた地域経済の活性化による効果も期待されている。

  インバウンド関連では、地銀大手の千葉銀行 <8331> [東証P]の前期の有報で政策保有株式において、オリエンタルランド <4661> [東証P]とマツキヨココカラ&カンパニー <3088> [東証P]の名が登場。OLCは千葉興業銀行 <8337> [東証P]の前期の有報にもその名が上位に記されている。更に、山陰合同銀行 <8381> [東証P]の前期の有報には、北海道のケーキ「ルタオ」などブランド菓子を製造する寿スピリッツ <2222> [東証P]が登場する。今期は純利益で過去最高を計画する山陰合銀は株価水準を切り上げながらも配当利回りは3%台とあって、全体相場の調整局面では下値抵抗力を示しそうだ。

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