ドーン Research Memo(6):多様なクラウドサービスが順調に成長軌道に。知財経営の成果が顕在化
■中長期の成長戦略・トピック
1. 中期経営計画(2023年5月期~2025年5月期)の進捗
ドーン<2303>は、2022年7月に、2023年5月期を初年度とし2025年5月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定し、推進中である。数値目標としては、最終年度(2025年5月期)には売上高で1,550百万円(2022年5月期の1.27倍)、営業利益で同551百万円(同1.38倍)を計画する(M&Aや新サービスによる増分は考慮していない)。進行期(2024年5月期)は2年目にあたるが、業績が好調に推移しており営業利益目標を前倒しで達成する可能性さえ出てきた。ROE(自己資本当期純利益率)に関しては、M&Aなどを行いつつも10%以上を維持したい考えだ。将来的には、売上高で50億円、従業員体制200名規模とし、プライム市場上場基準適合を目指す。中期経営計画の重点施策は、1)Gov-tech市場の深耕、2)社会課題解決サービスの創出、3)社内体制強化・クリエイティブ人財育成、4)M&A・事業提携、の4つに整理されている。これまでは地理情報システム(GIS)事業で培った独自技術・ノウハウを最大限に活用しつつ、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全分野向けの各種クラウドサービス(SaaS)を提供し安定成長を達成してきたが、今後は、さらなる企業価値の向上と持続的な成長を進めるため、社会変化を見据えた企業理念・ビジョンとして“社会課題に挑戦”を目指す。具体的には、健康や人材不足対策などの新規テーマの発掘に成功し、随時プロジェクトをスタートさせている。
2. Gov-tech市場深耕:多様なクラウドサービスが順調に成長軌道に
同社のクラウドサービスの中では、緊急通報システム「NET119」はクラウド利用料収入の約4割を占める大黒柱である。管轄人口シェアで7割を超えて飽和傾向にあるものの、解約率も低く推移しており今後も安定収入が期待できる大きな存在である。映像通報システム「Live119」は、導入する消防本部が増えるのに加え、同技術を活用した派生サービスの進展が始まっている。自治体では水道・ガス点検業務などで現場と本部を映像でつなぐ役割を「Live-X」が果たす事例がある。2023年11月には、建設機械レンタル大手のカナモト<9678>(本社:北海道札幌市)で導入・運用開始が開始された。建設機械の故障のほか、操作説明や災害時対応・事故対応等に関する問い合わせ対応を、映像通話により迅速かつ的確に実現できる。災害情報共有サービス「DMaCS」、自治体が防災情報を配信するスマートフォンアプリ「防災アプリ」は、デジタル庁が公開する「防災DXサービスカタログ」に掲載されたことが契機となり新規導入にはずみがついている。また、消防以外でも、愛知県や広島県などの警察で採用されている防犯アプリは、実際の痴漢被害の解決事案によりその効果が証明され、香川県などでの導入が予定されている。最新の案件ではマイナンバーカード・自動車運転免許証関連のシステムの受注が決定しており、市場規模の大きな新分野への進出として評価できる。安心安全が要求される自治体・行政のシステムにおいて同社の技術力や実績は高く評価されており、主力以外にも多様なクラウドサービスの導入が進んでいる。
3. 知財経営の成果が顕在化
同社は2020年以降、知財経営に力を入れており、その成果が特許として顕在化してきた。特許件数ベースでは、2016年の出願も入れて7件出願(公知)しており、そのうち3件は取得(有効ステイタス)されている。同社の特許の特徴は、同社が行ってきた実証実験や独自の研究開発の成果として出願されたものであり、防災・防犯や交通・インフラなどの効率的な管理に関わるものが多い。一例を挙げると、2016年には主力クラウドサービスである「NET119」の基盤となる特許「緊急通報管理装置(特許6017077)」を取得。2023年には「手配車両決定システムおよびその方法(特許7343877)」を取得している。2022年に公知された「交通規制識別マーク確認装置およびそのプログラム(特開2022-065724)」は自動運転社会に貢献するものである。2023年には、映像通報システム「Live119」の拡張機能として、消防本部から救急現場に居合わせた市民に対し付近のAEDの設置場所等の情報を伝送する「AED 位置情報伝送機能」に関する特許を出願している。将来的には特許によるストック収益も期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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提供:フィスコ