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【特集】夏相場にキラめく「ペロブスカイト太陽電池」、量産化で新たな舞台へ <株探トップ特集>

ペロブスカイト太陽電池の量産化に向けての動きが加速している。太陽電池でのゲームチェンジャーになることが予想されるだけに、官民挙げて攻勢に出る構えだ。

―次世代電池の主戦場、官民タッグも追い風に巨大マーケットで商機つかむ銘柄とは―

 「ペロブスカイト太陽電池」を巡る動きが活発化している。欧州・中国などの海外勢も覇権を握るべく開発・生産体制の構築を急ぐが、日本では今月下旬から官民協議会を開催し、産業競争力の強化を図り攻勢をかける構えだ。国が目指す2025年の事業化を目前に、関連企業の動向も一気に慌ただしくなっている。ペロブスカイト太陽電池という巨大市場で商機をつかむ関連銘柄を追った。

●月内に官民協議会設置

 ペロブスカイト太陽電池については、日本発の技術ながら研究開発競争で欧州・中国勢が猛追しており、早期の量産技術、生産体制の構築が求められている。こうしたなか、今月21日に齋藤健経済産業相が閣議後の記者会見で、経産省をはじめメーカーや東京都など約150の団体から構成されると伝わる官民協議会を、月内に設置することを表明したことで注目度が一気に高まった。

 ペロブスカイト太陽電池は、現在主流のシリコン製太陽電池に比べて「薄く、軽く、曲がる」という三拍子そろった特性を持つ。従来品に比べ用途が格段に広いうえ、ビルの窓など設置場所も柔軟だ。加えて、製造工程が少ないことで低コスト化も期待できるという、まさに次世代電池の“本命”と言われる所以(ゆえん)がここにある。

●40年には世界の市場規模64.9倍

 市場調査の富士経済による最新のレポート(2024年版 新型・次世代太陽電池の開発動向と市場の将来展望)では、ペロブスカイト太陽電池の世界市場規模は40年には23年比で64.9倍の2兆4000億円に拡大すると予測。国内では、「商用化は25年ごろとみられ、その後市場は中長期的に拡大する」としている。市場規模の急拡大が予想されるなか、各国の開発競争も激化している。業界大手関係者は「ペロブスカイトは、間違いなくゲームチェンジャーになる」と話すが、海外勢の動きが加速しているだけに警戒感も強めている。

 ペロブスカイト太陽電池には「フィルム基板型」と「ガラス基板型」があり、特性に応じた需要の拡大が見込まれている。同レポートによると、軽量で応用製品の重量制限が少ないフィルム型は、「建物の壁面や窓、電気自動車などへの搭載に向けた研究開発が進められており、30年以降に本格的な市場が立ち上がり、40年の世界市場は5100億円が予測される」。一方、ガラス型については「生産技術の観点で難易度が低いことから将来的にも市場の多くを占め、40年の世界市場は1兆8900億円」に拡大するとした。

●リードする積水化

 既に、壁や窓を利用した太陽光発電の実用化に向けた動きは急速に進んでいる。ペロブスカイト太陽電池の開発では積水化学工業 <4204> [東証P]、パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]、東芝といった日本を代表する大手企業がリードするが、とりわけ積水化の攻勢には目を見張るものがある。

 同社は昨年10月、大阪本社が入居する堂島関電ビルに国内で初めてフィルム型ペロブスカイト太陽電池を実装したと発表。翌11月には、同太陽電池による世界初となる高層ビル(東京都千代田区)でのメガソーラー発電計画を公表した。都心部における、創エネルギーの最大化及びエネルギーの地産地消の拡大へつなげる方針だ。今年に入っても、さまざまな施設や環境のもと実証実験を行っており、来年25年の事業化に向けた動きを加速させている。業績も好調に推移している。同社の25年3月期の連結業績予想は、営業利益段階で前期比8.1%増の1020億円を計画しており、過去最高益更新の見通しだ。

●攻勢かけるエヌピーシー

 エヌ・ピー・シー <6255> [東証G]は太陽電池製造装置の大手で、ペロブスカイト太陽電池分野でも攻勢を強めている。薄膜系太陽電池の製造装置で、培った実績が活用できることが強みだ。顧客の米太陽電池メーカーのファースト・ソーラー<FSLR>が、M&Aによりペロブスカイトの研究を進展させており製造装置を受注済み。また、国内の複数社からも、合計で数億円規模の受注を獲得済みという。多くの企業が、量産に向けた動きを加速させるなか、製造装置を手掛ける同社には強い追い風が吹いている。24年8月期連結業績予想は、営業利益段階で前期比2.2倍となる21億4900万円と急拡大する見込みだ。

●サカタINXはコンソーシアム参加

 インキ大手のサカタインクス <4633> [東証P]も、新規事業として次世代型太陽電池材料の開発に取り組む。同社の基盤技術である塗工技術を用い、京都大学が立ち上げた「フィルム太陽電池研究コンソーシアム」にも参画している。24年12月期の連結業績予想は営業利益で前期比3.9%減の110億円を予想するが、今月14日に発表した第1四半期の同利益は39億2600万円(前年同期比60.8%増)と大幅増益で着地し、好調な滑り出しとなった。株価は15日に1805円まで買われ年初来高値を更新。いったんは上昇一服も、再び上値指向をみせており、ここからの展開に注目が集まっている。

●存在感高めるマクニカHD

 半導体商社のマクニカホールディングス <3132> [東証P]は、急速にこの分野での存在感を高めている。3月29日に、傘下のマクニカと神奈川県、ペロブスカイト太陽電池の開発者である宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授が代表を務めるペクセル・テクノロジーズ(川崎市麻生区)が、同太陽電池と蓄電池の社会実装に向けた実証や普及啓発に関しての連携協定を締結したと発表。すでにマクニカは、環境省の事業採択を受け、ペロブスカイト太陽電池の量産化を目指しペクセル・テクノロジーズとともに、横浜市の大さん橋での実証事業を開始している。マクニカHDの25年3月期の連結業績予想は、営業利益で前期比0.4%増の640億円を計画。微増とはいえ、過去最高益を更新する見込みだ。

●MORESCは頭角現す

 MORESCO <5018> [東証S]は独立系の化学品メーカーだが、ペロブスカイト太陽電池関連事業で頭角を現している。次世代事業の創出として、同関連事業の推進を掲げており、需要拡大を背景に成長期待が強まりそうだ。同電池向けの高機能な封止材の開発を進め、26年以内の実用化を目指す。同社の封止材は、直接貼り合わせてもペロブスカイト素子にダメージを与えず、加えて基材に貼り合わせるだけで優れた密着性を発揮(加熱やUV処理が不要)するという。この分野での、株式市場における同社の知名度はまだまだなだけに、認知度向上が株価を後押しする可能性も秘めている。25年2月期の連結業績予想は営業利益で前期比22.5%増の15億円を予想。株価は上値の重い展開が続くが、ペロブスカイト太陽電池にスポットライトが当たるなか、目を配っておく必要がありそうだ。

●日精化、ホシデンにも注目

 ペロブスカイト太陽電池の正孔輸送材料「Spirokite(スピロカイト)」を手掛ける日本精化 <4362> [東証P]にも、晴れの舞台が待っていそうだ。正孔輸送材料は、マイナス(電子)をブロックし、プラス(正孔)だけを通すことで電気の方向を整え、効率よく発電するための役割を担うだけに、需要拡大を背景に出番到来も近いとみたい。また、24年度後半にペロブスカイト太陽電池の量産を目指す、情報通信部品大手のホシデン <6804> [東証P]の動向からも目が離せない。

 こうしたなか、ペロブスカイト太陽電池の量産化推進のカギを握る「ヨウ素」関連株には、株式市場の熱い視線が向かっている。主原料となるヨウ素は世界産出量の約30%が国内産であるため、輸入に頼ることなく安定供給できるという大きなメリットがある。ヨウ素生産では、伊勢化学工業 <4107> [東証S]をはじめ、K&Oエナジーグループ <1663> [東証P]、豊田通商 <8015> [東証P]などの関連株に更なる活躍期待が高まっている。

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