エスプール Research Memo(5):障がい者雇用支援サービスは好調持続、環境経営支援サービスが急成長
■エスプール<2471>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業の売上高は前期比23.1%増の12,555百万円、営業利益は同2.0%増の2,981百万円と増収増益基調が続いた。売上高は主要サービスすべて増収となったが、利益ベースでは障がい者雇用支援サービスや環境経営支援サービスなどが増益となる一方で、広域行政BPOサービス、ロジスティクスアウトソーシングサービスが減益となるなど明暗が分かれた。また、会社計画(売上高12,908百万円、営業利益3,635百万円)に対しても広域行政BPOサービスの未達を主因として下回る結果となった。主要サービスの動向は以下のとおり。
a) 障がい者雇用支援サービス
障がい者雇用支援サービスの売上高は前期比19.8%増の6,904百万円と会社計画(6,900百万円)を達成し、営業利益も同10%台前半の増益、金額ベースでは約25億円となった。営業利益率は売上構成比の変化(ストック型売上となる農園管理収入の構成比上昇)や減価償却費の増加(約3億円増)、屋内型農園施設の立ち上げ負担等により若干低下したものの、約36%と高水準をキープした。2023年1月に一部のメディアで農園を活用した障がい者雇用支援サービスに対して否定的な報道があった影響で上期の営業活動が停滞したものの、2023年4月に開催された厚生労働省の労働政策審議会(障害者雇用分科会)において、同サービスに関する否定的な見解や規制等を検討する動きがなかったことから、下期以降は引き合いも再び活発化し、第4四半期の受注は650区画超と四半期ベースで過去最高を更新した。期末受注残も580区画に積み上がった(前期末比40区画増)。
売上高の内訳を見ると、設備販売高は同8.1%増の2,338百万円となった。新たに9施設(屋外5/屋内4)を開設し、1,446区画(同9.9%増)を販売した。期末契約企業数は606社で新規に108社を獲得した一方で、顧客事由により12社の解約があった。期末の運営管理区画数は前期末比21.5%増の7,549区画となり、運営管理収入は同29.9%増の3,905百万円となった。また、人材紹介料他も販売区画数の増加に伴って同11.7%増の655百万円となった。なお、同社は業界の健全化を目的とした団体の設立に向けて同業者との協議を進めていたが、意見の相違により見送ることとなり※、2024年前半に自主ガイドラインを策定・公表することにしている。
※同社は農園活用型支援サービスのガイドライン策定・健全化を目的とした業界団体の設立を目指していたが、同業で2番手となる(株)スタートラインは農園活用型以外の支援サービスも含めた業界団体の設立を目指し、2023年10月に(一社)日本障害者雇用促進事業者協会を設立した(2024年1月末の会員企業数は10社)。
b) ロジスティクスアウトソーシングサービス
ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上高は前期比9.6%増の1,470百万円と増収基調が続いたものの、営業利益は2023年7月に新設した流山センターの立ち上げコスト増を主因として、同5割減の約80百万円と2期ぶりの減益に転じた。売上高の内訳は、EC通販発送代行サービスが同10.5%増の1,346百万円、物流センター運営代行サービスが同0.9%増の124百万円となった。会社計画(売上高1,475百万円、営業利益は前期比横ばい)に対して、売上高はほぼ計画どおりとなったが、営業利益は新センターの立ち上げに伴う人件費増により計画を下回った。
c) 広域行政BPOサービス
広域行政BPOサービスの売上高は新拠点の開設に伴い前期比52.7%増の1,389百万円と拡大したものの、営業損失で5百万円(前期は244百万円の利益)を計上した。会社計画(売上高1,900百万円、営業利益500百万円)に対して大きく下回った要因は、売上高は新型コロナウイルス関連やマイナンバー関連などのスポット業務の縮小・終了をカバーするだけの新規案件の受注が進まなかったこと、また、こうした状況から新規拠点の開設も当初計画の13~15拠点から10拠点に抑えたことが未達要因となった。一方、利益面では2023年11月期に新設したBPOセンターの稼働率が計画を大きく下回り、賃借料やリース料、人件費などの固定費負担が収益を圧迫した。なお、期末のBPOセンター拠点数は前期末比9拠点増(新設10拠点、閉鎖1拠点)の20拠点となった。
d) 環境経営支援サービス
環境経営支援サービスの売上高は前期比30.7%増の949百万円、営業利益は同164百万円増の約5億円となり、営業利益率で50%超になったと見られる。上場企業に対するTCFD開示支援業務に加えて、CDP回答支援業務や温室効果ガス排出量算定業務も想定以上に受注できたことで、会社計画(売上高900百万円、営業利益約4億円)に対しても超過した。売上高の9割超はこれらコンサルティングサービスで占められ、旺盛な需要に対応すべくコンサルタントを中心に人員体制を前期末比2倍増の74名に強化したことも高成長につながった。
e) 採用支援サービス
採用支援サービスの売上高は前期比18.5%増の716百万円、営業利益も約1億円と同数千万円の増益となり、2期ぶりに過去最高業績を更新した。経済活動の正常化に伴い、主要市場であるサービス業界(外食・小売等)におけるアルバイト・パートの求人需要が高まり、応募受付数が同8.4%増の675千件と伸長したこと、また売上高の約1割を占めるWeb面接代行サービスも堅調に推移したことが増収要因となった。受付件数増加に伴うセンターの稼働率上昇で、利益率も大きく改善した。なお、顧客企業数は168社と着実に増加している。
(2) 人材ソリューション事業
人材ソリューション事業の売上高は前期比19.7%減の13,310百万円、営業利益は同24.7%減の1,257百万円と2期連続の減収減益となり、会社計画(売上高15,800百万円、営業利益1,620百万円)に対してもそれぞれ未達となった。主力のコールセンター業務の売上高がスポット案件(新型コロナウイルス感染症のワクチン接種や臨時給付金関連業務)の減少により、同23.3%減の11,093百万円と大きく落ち込んだことが主因だ。当初の想定では第2四半期以降に上向くと見ていたが、新規案件の獲得も低調でスポット案件の落ち込みをカバーできなかった。ただ、新型コロナ関連の売上比率は第4四半期で5%未満まで低下しており、売上高もほぼ下げ止まったと見ている。一方、販売支援業務は同15.1%増の1,440百万円と4期ぶりの増収に転じた。約7割を占める携帯電話ショップ向けの低迷が続いたものの、人手不足が深刻なホテル・空港関連業界向けの伸長によりカバーした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ