城南進研 Research Memo(10):2026年3月期に営業利益率10%を目指す(2)
■城南進学研究社<4720>の今後の見通し
(2) 基本戦略
a) 学びの個別最適化と教室力の強化
個別指導部門の収益回復施策として、学びの個別最適化と教室力の強化を推進し、学力向上と志望校への合格という顧客目標を実現することでブランド力を向上させ、生徒数の拡大につなげる。学びの個別最適化に向けては、2022年3月期より「城南コベッツ」において各生徒のニーズに合わせたオーダーメイド型の教育サービス「スタディ・フリープラン※1」を導入した。個々人に最適化した「本当の“個別指導”」を追求したことにより、学力の向上や志望校への合格実績が増えるなどその成果も見え始めている。2022年4月~8月に実施した生徒・保護者アンケートでは、「教室の指導に満足している、または非常に満足している」と回答した比率が98.9%に達し、受講生の93.5%の成績がアップ※2するなど高い結果が得られている。顧客満足度の向上で退塾率も改善傾向であり、今後は新規生徒の獲得数をいかに増やすことができるかが課題となる。小学生については「りんご塾」の導入などが施策の1つとなるが、そのほかの施策としては友達紹介や自社Webサイトの充実による問い合わせ件数の拡大に取り組む。
※1 時間割を撤廃し、生徒一人ひとりのスケジュールに合わせて、通塾だけでなくオンラインでの受講も可能とした「定額・通い放題」プラン。2023年9月時点で同プランを選択する生徒数は全体の3割弱を占めている。
※2 公立中学生において、入塾後に英語・数学の成績が向上した割合(2023年1月集計。集計対象:在籍12ヶ月)
b) 付加価値の高い幼少教育事業の新展開
幼少教育事業では、STEAM※を中心とした複数の乳幼児教育サービスを提供する複合型スクール「城南ブレインパーク」をリブランディングし、運営のノウハウをパッケージ化して2025年3月期から全国にFC展開する予定だ。すでに複数の加盟候補企業と交渉中である。プログラムメニューは「くぼたのうけん」や「りんご塾」のほか、英語教育、プログラミング教室、暗算教室、絵画・造形教室など豊富に揃えている。曜日ごとに異なるプログラムを提供するなど多様なニーズを取り込むことが可能となるため、単一のプログラムをサービス提供するよりも収益化しやすいというメリットがある。
※ STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の略語で、これらを統合的に学習する教育理念のことをSTEAM教育と呼んでいる。
少子化の進行で学習塾や保育市場では顧客獲得競争が激化しており、顧客獲得施策及び新たな収益源として乳幼児教育サービス領域に進出を検討する企業も増えており、こうした需要を取り込んでいく戦略だ。とりわけ、2023年4月に業務提携を発表した明光ネットワークジャパンでは全国に個別指導塾を1,700教室以上(FC含む)展開していることから、FC教室数の成長をけん引していくものと期待される。
c) 教育格差を是正する教育ソリューション事業の積極的展開
同社はBtoBtoCのビジネスモデルとなる教育ソリューション事業を積極的に展開すべく、新たに「みんなにまなびをプロジェクト」を発足した。教育の地域格差や経済格差を解消し、あらゆる人に教育機会を提供するというコンセプトのもと、「安価」「オンライン」の要素を併せ持つ教育サービスを乳幼児から高校生向けに提供するプロジェクトである。その第一弾として、2023年10月にデジタル学習のポータルサイト「みんなのまなびライブラリー」をリリースした。
顧客対象は法人企業・団体となり、福利厚生サービスの一つとしての活用を想定している。経済的な問題や地理的な問題で、塾や稽古事に通えない従業員の子どもたちが、同サービスを通じて自宅で簡単に学びにアクセスできるため、「教育格差解消」につながるソリューションとして普及拡大に取り組む。コンテンツとしては幼児を対象とした「キッズ育脳ワーク」、小中学生を対象とした「デキタス」、高校生・高卒生を対象とした「デキタス・コミュ」及び「推薦対策映像講座 スピードマスター版」の4つサービスを揃えており、通常価格よりも安価な料金で提供するほか、保護者向けに育児や教育に役立つ講演会も定期的に開催する。また、今後もコンテンツのさらなる拡充を進める予定だ。
現状は「デキタス」の導入企業に対して、「みんなのまなびライブラリー」の提案を行っており、一部で導入が進んでいるもようだ。子育て支援に関する様々な取り組みが進むなか、同サービスは企業側でも福利厚生の1つとして導入しやすい内容で、上手くプロモーション展開できれば大きく成長する可能性もあり、今後の動向が注目される。
d) 攻めの収益構造改革
2021年3月期以降、不採算教室のてこ入れや整理統合、RPAツールの導入などによる業務効率の改善などに取り組み、収益体質を筋肉質なものに変えてきたが、2024年3月期以降も攻めの収益構造改革を継続する方針だ。主な施策としては、LTV(社内・関連会社・業務提携先)及びシナジーを最大化する運営体制を構築すべく、業務提携戦略を推進する。前述した明光ネットワークジャパンとは、「りんご塾」「くぼたのうけん」などの児童乳幼児教育ブランドの相互展開を進めるほか、その他の共同開発及び相互提供などにも取り組む。また、2022年11月に業務資本提携を締結した学研ホールディングス<9470>とは、メタバースを用いたオンライン自習室の試運営を開始しており、今後も相互連携の可能性について協議を進める。そのほかにもシナジーが見込める案件であれば積極的に提携戦略を推進する方針だ。また、収益体質の強化に向けて、教室の整理統合や商品の整理を検討するほか、子会社の合併なども含めた管理業務の合理化やDX推進による間接コストの一段の絞り込みを進める予定だ。
e) 理念経営を具現化する人財の育成
次世代リーダーの育成及び人的資本への投資戦略を策定すべく、2023年3月に「理念経営人財育成委員会」を発足した。経営者と従業員とのコミュニケーションの活性化を通して、次世代リーダーの育成を促進し、クレド(行動指針)を中心にステークホルダーの価値を高める活動を担える人財の育成を図る。また、人的資本投資計画を策定し、人的資本を可視化するとともに人財戦略をブラッシュアップしながら企業価値の向上を目指す。人財投資の一環として、アルバイト講師の人財育成を強化するための組織「iconet」も新たに発足しており、これら投資の成果が今後顕在化するものと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ