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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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9435 光通信

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大山季之【米国株マーケット・ビュー】 ─「マグニフィセント7」、実は4社? では脱落する3社とは


◆あまりにも大きなギャップ、「FRBの本音」と「マーケットの期待」

 S&P500株価指数<^SPX>がついに2年ぶりに史上最高値を更新した。昨年後半から米国株式市場はゴルディロックス(適温)相場が続き、当面は高値圏でのもみ合いが続くとは考えていたが、正直、今の相場の勢いには「怖さ」さえ感じる。少し前まで多くの専門家が、2024年は米国景気がスローダウンするだろうと予測し、ソフトランディングできるかどうか、などと話していたのだが、いまでは、ひょっとしたら"ノー・ランディング"か、という声さえ出始めている。
 
 確かにこの1カ月の米国経済の動きを見ると、小売り統計も堅調だし、昨年末に感じていたような景気悪化のリスクは後退したようだ。実際、米国の消費者マインドを反映すると言われるミシガン大学の消費者信頼感指数では、1月19日に発表された数値が市場予測の70を大きく上回る78.8となり、前月、12月の数値を9ポイント以上上回った。この数値は新型コロナウイルスによる行動制限が緩和されたばかりの21年7月以来の高い水準だ。
 
 株式市場でも、昨年11月のウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事の発言をきっかけに、早期利下げの思惑から始まった年末"パーティー"が、年が明け、1月も終わろうとするいまも、まだ続いている。ただし、いまのS&P500の株価はPERが19.7倍程度まで上昇していて、コロナ前5年間の平均約17倍と比べてもバリュエーション面で過熱感があるし、普通に考えれば、これ以上の伸びしろはない。ここにきて、パーティー開始のきっかけをつくった当のウォラー理事が「射程距離には入っているが、急ぐべきではない」と、市場をけん制する発言をして"パーティー"の幕引きに動き出してもいる。
 
 私が納得したのは、1月18日のアトランタ地区連銀、ボスティック総裁の発言だ。「利下げを決定した後に、再び利上げをするようなことがあれば、中央銀行たるFRBの決定としては最悪だ」。これに尽きるのではないか。確かに、アメリカの物価は着実に2%の目標に向け、徐々に下がってきているし、誰もが今年は金利が下げに転じる、と考えている。だが、問題はその時期と規模だ。ボスティック総裁は、それを慎重に見極めるためには時間が必要だと言っている。
 
 したがって、今年の利下げは、FRBが年末に示唆した通り、第3四半期以降、年3回(多くとも年4回)が妥当ではないか。昨年来、多くの市場関係者たちが期待した、「3月から年6回以上の利下げ」というのは、やはり「前のめり」過ぎる。現状では金融当局と市場の期待値のギャップがかなりあると言わざるを得ず、この状態が続く限り、当面は両者の綱引きで、ボラティリティ(変動率)が高い相場が続くのではないか。

◆マーケットの期待通りだったTSMCの好決算

 ところで、いまの米国株高をけん引しているのは、言うまでもなく「生成AI」ブームをはじめとしたマグニフィセント・セブンなどハイテク各社への期待だ。今回の決算の先陣を切って、1月18日に発表された台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の決算では、24年12月期は20%台の増収となる見通しだという。同社の発表によると、昨年までコロナ禍で積み上がっていた在庫がさばけたために、今期は、本格的に「生成AI」などの先端半導体の生産に力を入れることができるためということだが、この決算内容は、世間の期待通りに先端半導体へのニーズが高まっていることを証明したと言えよう。

 今後、「コパイロット・プロ」の提供を開始したマイクロソフト<MSFT>をはじめ、ハイテク各社の注目決算が目白押しだが、一方、一時は「生成AIブーム」に乗り遅れたと思われていたアップル <AAPL> の株価も持ち直してきている。バンク・オブ・アメリカ<BAC>が投資判断を「中立」から「買い」に引き上げたことがきっかけになっていて、アップルの端末に生成AIが組み込まれることへの期待が背景になっている。
 
 ただ、前回も記したが、正直な感覚では、いまのアップルは、新型「iPhone」次第という構図になっていて、成長性という点ではあまり魅力を感じない。私は本当の意味でアップルの再評価が始まるのは、それ以外の要素が加わった時、具体的に言えば、ヘルスケアに進出した時だろうと考えている。例えば「アップル・ウォッチ」に医療機器が組み込まれて、糖尿病や肥満症の人が、どこにいても体のケアをすることができるようになったらどうなるだろう。顧客の分母も飛躍的に拡大するだろうし、スマートフォン以来の大きな社会的なイノベーションを生み出すことになるのではないか。そんな期待で同社を見ていたのだが、まだそれには少し早いようだ。
 
 余談になるが、いま、アメリカの市場ウォッチャーの間で冗談めかして言われているのは、「マグニフィセントって7社だったっけ」ということ。実は6社かもしれないし、クラウド大手3社、マイクロソフト、アルファベット<GOOGL>、アマゾン<AMZN> にエヌビディア<NVDA> を加えた4社かもしれない。エヌビディアは別格として、ビック・テックとは言え、"事業分散"と"顧客分散"がしっかりできている会社しか、最終的には生き残れないのではないかという議論だ。
 
 そうなると、EV(電気自動車)に経営資源を集中しているテスラ<TSLA>は抜けるし、SNSだけのメタ・プラットフォームズ<META>もスマートフォン依存のアップルも抜ける。そして、これらの会社が抜けるとすると、それに代わる3社はどこになるか、などと言うことが、面白おかしく話されている。

◆「もしトラ」でも成長が期待できるのはバークシャーとこの2社

 事業分散と顧客分散ができている会社を分かりやすく日本企業で挙げるなら、例えば、オリックス <8591> や光通信 <9435> のような会社だ。オリックスはリースを本業にしながら、多彩な事業ポートフォリオを持っているし、光通信は意外かもしれないが、携帯電話の販売を祖業としながら、今や完全に事業投資会社になっていて、しかも投資する案件は他の事業とのシナジーを生むものばかり。かなり魅力的な事業ポートフォリオを揃えている。
 
 では、こうした会社をアメリカで探すとすると、どの企業を選ぶべきか。真っ先に挙げたいのは、やはりバークシャー・ハサウェイ<BRK.B> だろう。日本ではウォーレン・バフェットのイメージが先行し、投資会社のように思う人もいるかもしれないが、ご存じの通り、自動車保険や損害保険などの保険事業、石油や天然ガスなどのエネルギー事業、鉄道事業や小売り事業など、様々な事業を展開しているコングロマリットだ。
 
 あと個人的に注目しているのは、世界最大の建設機械メーカーのキャタピラー<CAT> と、同じく世界最大の農業機械メーカー、ディア&カンパニー<DE>だ。どちらもそれぞれの分野で多種多様な製品を供給し、様々な関連事業も手掛けている。世界経済の成長が続く限り、中長期的に業績も拡大していくだろうし、事業分散ができているので、リスクも少ない。
 
 リスクと言えば、今年最大のリスク要因として市場関係者の間で騒がれているのが「もしトラ」、つまりトランプ大統領の誕生というリスクだ。だが、この3社なら、今年の大統領選でトランプが勝ったとしても安心して持っていられるのではないか。
 
 他に、ヘルスケアの分野では、前回、イーライ・リリー<LLY>やノボ・ノルディスク<NVO>を挙げたが、業界最大手のユナイテッドヘルス・グループ<UNH>も事業分散という点では外せない。医療保険サービスから医療機関向けの情報支援など、ヘルスケアに関するありとあらゆるサービスを手掛けていて、時価総額では昨年、イーライ・リリーに抜かれたが、ひたすら、安定成長を続けている。新たなイノベーションを生み出すような「夢」を感じるような企業ではないが、投資対象としての安心感はある。
 
◆これから半導体セクターで投資をするなら、この銘柄が「穴」
 
 事業分散とは違うかもしれないが、やはり先端半導体は今後の世界経済の成長エンジンになることは確かだろう。中でも私が期待したいのは、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD> やインテル<INTC> といった「生成AI」では出遅れていた半導体メーカーだ。出遅れたことは確かだが、両社ともエヌビディアに追いつこうと必死に事業改革もしているし、積極的に投資もしている。
  
 特にインテルは半導体の微細化で何周も周回遅れになっているが、一昨年、最先端の半導体設計で急成長しているケイデンス・デザイン・システムズ<CDNS> とアライアンスを組んで、同社のCEOがインテルのマネジメントに加わるなど、本気度を感じる。現時点では完全に出遅れているが、中長期の投資対象としては「穴」と考えていいのではないか。

 出遅れという点では、銀行株にも注目すべきだろう。トランプ前大統領は今回の選挙公約として、「対中規制の強化」と「すべての輸入品に10%の関税をかける」などを掲げている。つまり、今から想定できるのは、「もしトラ」が実現した場合、再び物価が上がっていく、ということだ。そうなると、金利低下を織り込んで、出遅れている銀行株、中でもアナリストからポジティブな発言が出されるようになってきたシティグループ<C> や、業績を立て直しつつあるゴールドマン・サックス・グループ<GS> にも妙味があるのではないか。

 いずれにせよ、現時点で米国株はバリュエーション面では上値余地がないが、それを打破する可能性があるとすれば、企業の業績しかないだろう。11月の大統領選を視野に入れつつ、今後の各社決算の行方に注視していきたい。

◇大山季之(おおやま・のりゆき)
松井証券マーケットアナリスト 
1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、10年バークレイズ証券、12年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案、自社株買い、金融商品組成などに関わる。現在は松井証券のマーケットアナリストとして、米国のマクロ経済分析や企業、セクターの分析等を行う。

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