ナック Research Memo(3):「暮らしのお役立ち」を基本戦略として、5つの領域で事業を展開(1)
■事業概要
ナック<9788>の事業セグメントは、「暮らしのお役立ち」を基本戦略として、クリクラ事業、レンタル事業、建築コンサルティング事業、住宅事業、美容・健康事業の5つで構成されている。クリクラ事業ではウォーターサーバーを扱っており、業界の雄として知られ、レンタル事業のダスキン事業でも、ダスキンのFCとして有数の企業となっている。
1. クリクラ事業
クリクラ事業は、ウォーターサーバー事業を直営と加盟店など約500拠点の配送ネットワークで展開している。「クリクラ」とは、同社における宅配水サービスのブランドである。同社は2002年に宅配水事業に進出後、2004年に自社ブランド「クリスタルクララ」を全国展開し、2009年にブランド名を現在のものに変更した。
「クリクラ」の水は、生産から配達・メンテナンスまですべてを自社で管理している。製造には、宇宙開発の現場などでも利用されている最先端テクノロジーの逆浸透膜(RO膜)システムを使用し、原水に含まれる不純物や雑味を取り除いている。さらに56項目の厳しい水質安全基準を満たした、安心安全な水を提供している。ウォーターサーバーは産院でも使用され、赤ちゃんのミルクや離乳食など、乳幼児がいる子育て世帯にとって有用なサービスである。同社はSNS上においても、子育て世帯向けに「安心・安全なお水」を訴求している。
サーバーレンタル料と配送料は無料である。そのうえ環境にもやさしいサステナブルなボトルを採用しているため、余計なゴミが出ない点や、サーバーメンテナンスを一年に一回必ず行い、洗浄済みのサーバーと機械を交換する点も特長となっている。
水の配送については、自社配達を行っている。水の輸送は重量があるため、外部に委託した場合は多額のコストがかかるが、自社で完結することによってリーズナブルに製品を提供できる。ウォーターサーバーを設置し、水の配達を繰り返すことで売上が発生するため、安定的かつコンスタントに収益を挙げることができるのが、このビジネスの強みである。新サーバー・新サービスの開発にも取り組んでおり、定額制の浄水型ウォーターサーバー「feel free(フィールフリー)」や炭酸水が飲めるマルチサーバー「クリクラShuwa」、電気代を最大55%削減できる「クリクラ省エネサーバー」などを手掛けている。また、水道水を注ぐだけで、おいしい水が好きなだけ飲める浄水型ウォーターサーバー「feel free」より新たに登場した「putio(プティオ)」は、コンパクトなボディに多彩な機能を搭載している。クリクラ事業は、ストックビジネスとして安定的な収益を毎期計上しており、今後も安定した収益源として全体の収益に貢献する。宅配水サービス以外では、クリクラの原水を原料として、クリクラの製造工場で作られた低濃度で弱酸性~中性の安心・安全な次亜塩素酸水溶液「ZiACO(ジアコ)」を手掛けている。“除菌”と“消臭”の2つの効果を発揮するノンアルコール除菌水であり、部屋の除菌・消臭、さらには衣服の消臭・花粉除去だけでなく、台所まわり、車内、トイレの除菌・消臭など、様々なシーンで利用できる。
2. レンタル事業
レンタル事業は、創業の原点であるモップ・マットなどのダストコントロール商品を扱うダスキン事業をはじめ、介護用品や福祉用具、害虫駆除機等のレンタル・販売、総合ビルメンテナンスなど、顧客のニーズに沿った衛生環境を保つビジネスを展開している。
(1) ダスキン事業
主力は、同社の出発点であるダスキン事業である。ダスキンの992番目の加盟店として創業して以来、ダスキンのフランチャイジーとして1984年より30年以上、全国約1,900店の加盟店で売上高・顧客数ともに首位を継続している。また、関東を中心に北海道、大阪、愛知、福岡と幅広くエリアを拡大している。「モップのレンタル」という従来のダスキンのイメージから抜け出し、清掃用品の定期的なレンタルやプロによる清掃サービス、家事代行、害虫駆除、庭木の手入れ、リペアなど幅広いジャンルでサービスを提供している。
ダスキン事業の中でも、先行き需要が拡大し、成長エンジンとして機能しそうなのがケアサービス部門である。ハウスクリーニングのほか、トイレやキッチンなど水回りの清掃、エアコンクリーニングなどを展開している。世帯構成において単身世帯、共稼ぎ世帯、高齢者世帯などの比重が今後高くなるに従い、家事代行をはじめとする役務提供サービスに対する需要が一段と拡大すると同社は想定している。
また、2018年8月に締結したダスキンとの資本業務提携契約に基づき、特に共働き世代や高齢者世代へのお役立ちに注力し事業展開を進めてきた結果、ケアサービス部門は提携前と比較し売上高が約2.5倍に増加している。2023年11月には事業拡大・成長のため、新たに共同プロジェクトを発足し、両社の拡大・成長につながる事業強化策などを検討する計画である。
(2) ウィズ事業
自社ブランドとして1988年にスタートした飲食店向け害虫駆除器「with」を、飲食店や施設、店舗などに定期レンタルで展開している。薬剤メーカーと提携した「with」は、薬剤ベーパーセクトと機械本体一対で高い駆除率を誇る害虫駆除システムである。毎週2回、6時間自動的に繰り返し薬剤を噴霧しゴキブリを駆除することが特徴で、人のいない時間帯にマシンがタイマーで作動し、レストランや施設における衛生管理をサポートする。このほか、エアコンに設置する空気清掃器「BeCleanフィルター」や、節水洗浄ノズル「Bubble90」を手掛けている。
(3) 総合ビルメンテナンス業
(株)アーネストにおいて総合ビルメンテナンス事業を展開している。オフィスビルや商業施設、マンションなど、建物に関わる総合的なメンテナンスとして、オフィスや施設の日常清掃・定期清掃・消毒除菌作業を幅広く手掛けており、導入企業は累計で1,000社を超える。対象となる清掃施設は、マンションや一般オフィスビルから、店舗・商業施設、病院・介護施設、教育機関、パチンコ店、工場、ホテル、神社仏閣・教会など幅広く、それぞれ培ったノウハウを用いて綺麗に清掃する。そのほか、衛生面や設備面から保守管理するビル管理業務、テナントの空調工事や、入居・退去にともなう内装工事、それらに伴う電気工事などの設備工事のほか、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)においてはウイルス・細菌対策やワクチン職域接種会場、厚生労働省が実施する水際対策の支援事業の運営を手掛けた。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
《SO》
提供:フィスコ