アンジェス Research Memo(10):研究開発費減少により2023年12月期第3四半期累計の経常損失は大幅縮小
■業績動向
1. 2023年12月期第3四半期累計の業績概要
アンジェス<4563>の2023年12月期第3四半期累計の事業収益は102百万円(前年同期比57百万円増)、営業損失は9,207百万円(同3,248百万円減)、経常損失は4,720百万円(同5,342百万円減)、親会社株主に帰属する四半期純損失は4,798百万円(同5,396百万円減)となった。
事業収益は、希少遺伝性疾患に関するオプショナルスクリーニング検査の手数料収入が前年同期比35百万円増加の73百万円と順調に増加したほか、「コラテジェン(R)」も販売先の在庫調整が一巡したことにより同7百万円増の15百万円と回復に転じた。また、EmendoにおいてOMNIプラットフォーム技術に関する売上を、研究開発事業収益として13百万円計上した。同技術の導入を検討している企業1社に対して評価のための試験試料等を有償で提供したものである。
売上原価は同17百万円増加の90百万円となった。ACRLの売上原価が新規検査機器購入に伴う減価償却等の計上により、同26百万円増加の76百万円となった一方で、「コラテジェン(R)」の製品売上原価が製品評価損の減少により、同9百万円減少の14百万円(うち、製品評価損3百万円含む)となった。製品評価損を除いた「コラテジェン(R)」の売上総利益率は20%台半ばの水準だったと推定される。
研究開発費は同3,688百万円減少の4,839百万円となった。Emendoの研究開発費が人件費を中心に増加した一方で、前期に国内におけるコロナワクチンの開発を中止したことを主因として、研究用材料費が601百万円、外注費が3,495百万円それぞれ減少した。販管費は同480百万円増加の4,380百万円となった。為替の円安進行によりEmendoののれん償却額が同164百万円増加の2,271百万円となったほか、Emendoにおける弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬増加により、支払手数料が同283百万円増加した。営業外収支は同2,095百万円改善した。外貨預金及びEmendoへの貸付金の評価替えを行った結果、為替差益が同453百万円減少の1,562百万円となった一方で、補助金収入が同2,551百万円増加の2,921百万円と大幅に増加した。補助金収入の内訳は、国内のコロナワクチン開発に係る補助金収入で2,815百万円、Vasomuneの「AV-001」に関する同社開発費負担分に係る補助金収入で106百万円となっている。
2023年12月期業績はおおむね会社計画どおりに推移する見通し
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の業績は事業収益で190百万円(前期比123百万円増)、営業損失で13,500百万円(同2,816百万円減)、経常損失で7,500百万円(同7,110百万円減)、親会社株主に帰属する当期純損失で7,500百万円(同7,214百万円減)となる見通し。
事業収益は、「コラテジェン(R)」の製品売上高で約20百万円(前期実績11百万円)、スクリーニング検査の手数料収入で約170百万円(同55百万円)を見込んでいたが、確定診断のための遺伝学的検査受託サービスの開始が遅れたこともあり手数料収入が想定を下回る見通し。
研究開発費は、Emendoの開発費が増加するものの、コロナワクチンの国内開発費がなくなったほか、他の開発費も絞り込むことで前期の10,999百万円から70~80億円程度に減少する見通し。一方、販管費は期初想定どおり若干の増加を見込んでいる。連結ベースの従業員数は150名程度と前期比で10名程度上回る水準となる見通しだ。
経常損失は、期末の為替レートの水準や補助金の計上時期によって変動する可能性がある。2023年9月末の為替レートが150円/ドルをやや上回る水準だったため、12月末のレートが同水準から大きく円高になった場合は為替差益が縮小する。また、国内のコロナワクチン開発に係る補助金収入については、第3四半期末の前受金で27億円程度※になっていると見られ、厚生労働省の監査が終了したことで、25億円程度が営業外収益として計上される。
※2023年9月末の前受金は3,304百万円だが、このうち約6億円は第2四半期に塩野義製薬から受領した「NF-kBデコイオリゴ」の国内臨床試験に係る開発協力金となっている。
なお、2024年12月期の研究開発費については、現段階で2023年12月期並みの水準を想定しているようだ。Emendoの米国での臨床試験開始による費用増加が見込まれるものの、その他開発費を引き続き抑制することで横ばい水準を維持する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ