「睡眠ビジネス」に熱視線、ニーズ急増で“覚醒する銘柄”総ざらい <株探トップ特集>
―厚労省ガイド取りまとめで注目度アップ、製品やサービスを手掛ける企業に商機―
厚生労働省は昨年12月21日に「健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会」を開き、「健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)」を取りまとめた。小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上を目安に睡眠時間を確保するよう推奨し、高齢者は長い床上時間が健康リスクになるとして寝床で過ごす時間が8時間以上にならないように注意喚起している。同省が2024年度から開始する国民健康づくり運動「健康日本21(第3次)」でも睡眠に関する目標値が定められており、睡眠ビジネスのニーズは更に拡大しそうだ。
●重要なのは質と量
睡眠は健康増進・維持に不可欠な休養で、睡眠不足は日中の眠気や疲労に加え、頭痛などの心身異常の増加、情動不安定、注意力及び判断力の低下による作業効率や学業成績の落ち込みなど多岐にわたる影響を及ぼし、事故などの重大な結果を招く場合がある。また、さまざまな睡眠の問題が慢性化すると肥満、高血圧、2型糖尿病、心疾患や脳血管障害の発症リスクの上昇や症状の悪化につながる可能性があるほか、うつ病など精神疾患の発症リスクを高めるともいわれている。そのため、日常的に睡眠休養感(睡眠で休養がとれている感覚)と睡眠時間をともに十分に確保することにより、心身の健康を保持し、生活の質を高めていくことが重要となる。
楽天グループ <4755> [東証P]傘下の楽天インサイトが昨年10月に公表した睡眠に関する調査(全国20~69歳の男女1000人を対象)によると、睡眠に関する悩みがある人は全体の6割以上にのぼり、悩みの内容では「寝ても疲れがとれない」との回答が最も多く、次いで「眠りが浅い」「夜中に目が覚める」となっている。経済協力開発機構(OECD)による21年版の調査でも日本人の睡眠時間は世界各国と比べて少ないと指摘されており、今後は健康意識や睡眠障害の治療に対する意識が一段と高まることが見込まれ、睡眠の質向上につながるビジネスを展開する企業の追い風となりそうだ。
●企業の取り組み続々
NTTデータグループ <9613> [東証P]は昨年12月、24年7月から自社保有するアレア品川に睡眠解析に特化したカプセルホテルを開業することを明らかにした。ホテル事業を展開するナインアワーズ(東京都千代田区)、米アルファベット<GOOGL>傘下でスマートウォッチを手掛けるフィットビットとの協業により、スリープテック、フードテック、ウェルネスデータを融合させた健康増進の新事業に本格参入する計画。27年にはグローバルで1000万人の睡眠データ(3万床)を取得し、世界最大規模での睡眠データの蓄積・分析サービスを提供するとしている。
大塚ホールディングス <4578> [東証P]傘下の大塚製薬は昨年11月、イオン <8267> [東証P]グループのイオンリテール及びカケハシ(東京都港区)と構成したコンソーシアムが、経済産業省が推進する23年度「ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業)」の実証事業者に採択されたと発表した。この事業では食事、運動、睡眠などに関連する生活に密着した複数の異業種企業が連携してPHR(パーソナル・ヘルス・レコード:生涯にわたる個人の保健医療情報)を活用することで新たな価値体験を提供できるよう実証を行うという。
エムスリー <2413> [東証P]とソニーグループ <6758> [東証P]の合弁会社であるサプリムは昨年10月、医師監修の睡眠障害リスクチェックが自宅で簡単にできる「Sleep Doc(スリープドック)」の提供を開始した。これはスマートウォッチ型のウェアラブルデバイスを睡眠時に装着し、2日間分の睡眠を計測することで、睡眠時無呼吸症候群のリスクをチェックできるサービス。運輸運送業のドライバーをはじめとした多忙なワーカー、プロ・アマのスポーツ選手など、日々の健康管理とパフォーマンス改善を必要とする人の睡眠課題を可視化する。
第一工業製薬 <4461> [東証P]は昨年10月、睡眠に不満をもつ健常者に対する臨床試験で、カイコハナサナギタケ冬虫夏草摂取による睡眠改善効果を確認したことを明らかにした。この試験では摂取によって寝つきや中途覚醒が改善し、睡眠の質を向上させることが示されており、同社は今後も更なる研究を進めることで睡眠不足大国とされる社会課題の解決につなげる構えだ。
●サスメドなどにも注目
また、不眠障害用アプリケーションの医療機器製造販売承認を取得しているサスメド <4263> [東証G]も見逃せない。不眠障害は、入眠障害、中途覚醒、早期覚醒、熟眠困難などの症状がある睡眠障害の病態の一つで、うつ病や不安障害などの精神疾患の発症リスクにつながる因子であることからQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)に影響する社会的な問題となっている。このアプリは不眠障害を抱える患者に対し認知行動療法を実施するために用いられるもので、不眠につながる患者の考え方や生活習慣を根本的に変えることを目的としている。
このほかでは、米社と睡眠習慣や心拍数を測定する非接触モニタリングの国内販売で協業するソースネクスト <4344> [東証P]、睡眠データ解析に強みを持つエコナビスタ <5585> [東証G]、自分の体温を身体に戻す高機能繊維「光電子シリーズ」を展開するドリームベッド <7791> [東証S]、不眠症の緩和を目的とした医療機器「NEWPEACE Medical Sheet」を販売するMTG <7806> [東証G]、身体にかかる負担を軽減するフィジカルサポートマットレス「ReFull(リフル)」を手掛けるミズノ <8022> [東証P]などにも注目。
ストレス緩和や睡眠の質向上などのニーズを捉えた「Yakult1000」を販売するヤクルト本社 <2267> [東証P]、「キリン おいしい免疫ケア 睡眠」の売り上げが好調なキリンホールディングス <2503> [東証P]、睡眠の質向上に役立つ機能があることが報告されているGABAを配合した機能性表示食品「ネルノダ」を販売するハウス食品グループ本社 <2810> [東証P]、遠赤外線効果による暖かさで深い眠りに誘う寝具やリラックスウェアを扱うポーラ・オルビスホールディングス <4927> [東証P]、快適な安眠空間をつくる寝室用芳香剤を展開する小林製薬 <4967> [東証P]、疲労感やストレスを和らげる機能を持つ機能性表示食品「ルナリズムNeru(ネル)」を提供するメニコン <7780> [東証P]もマークしておきたい。
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