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6167 冨士ダイス

東証P
770円
前日比
-7
-0.90%
PTS
772.1円
09:17 11/27
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
26.0 0.75 5.19 83.88
時価総額 154億円
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冨士ダイス Research Memo(5):業務効率化、成長分野の新製品開発、グローバル展開を推進(1)


■冨士ダイス<6167>の中長期の成長戦略

1. 筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築
2021年6月に中期経営計画としてフェーズ1で2024年3月期に売上高17,000百万円、営業利益1,490百万円を目指すとした。しかし、原材料・電力料金高騰の影響により当初計画を見直している。ただしフェーズ2で2027年3月期に売上高20,000百万円、営業利益2,500百万円をターゲットに設定している。環境変化で収益未達予想となっているが、フェーズ1での基本コンセプト「筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築」が進行しており、フェーズ2では売上高の拡大及び収益率の向上により、営業利益率12.5%以上を目指す。

2. 次世代自動車への対応・拡販
同社の業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、マグネット関連に注力する。

二次電池ケース成形用金型では、円筒型を中心に日系メーカー向けに供給している。しかし主力ユーザーが生産地を米国に変更する見通しとなったもようで、同社第2四半期の売上が第1四半期比較で大きく減少する事態となった。この影響から電機・電子部品向けの売上計画に対し、上期進捗率が37.9%に留まった。この変更により足元は一時的な需要減少に見舞われたが、残存する国内需要が引き続き上向きであるため新規案件を含め受注活動を活発化させている。

同社はこのような環境のなかで丸形に加え角形にも注力する。角形においては国内ではトヨタ自動車<7203>がパナソニック( 株 )との共同出資会社であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)で生産を強化するが、海外では豊田通商<8015>と自前の電池工場建設を決めた。2030年までに139億ドルを投入、年間生産能力30GW(EV換算40万台分)の工場を米国ノースカロナイナ州に建設する予定で、まずは2025年に量産を開始する予定としている。このように、米国でのリチウムイオン電池生産が大きく拡大することを踏まえ、同社では米国での市場調査を強化している。いずれにしてもリチウムイオン電池は安全性担保のために部材の品質精度が求められ高精度の金型が必要であり、改めて2025年3月期以降の高成長が見込まれる。さらに長期的にも政府が2030年に国内150GWh/年、グローバル600GWh/年(世界シェア20%)の製造能力を確立し、開発・生産をリードする世界拠点づくりを進めるとしており、同分野の成長が続こう。

モーターコア用抜き金型では、日系モーターコア製造各社向けに超硬部材売上が拡大している。同市場では国内外に多くの競合が存在している。現在、用途としてはハイブリッドカー(HEV)向けが多いが、同社は、今後EV向けの急拡大を見据え、新材種「VG48」を投入した。EV用ではHEV用と比較し大出力・高トルクを必要とするため、直径を大きくする必要がある。具体的にはHEVが直径100mm~150mm程度に対しEV用は150mm~200mm程度となる。またEVでは航続距離が問題となっているが、回転数を上げてモーター出力を高め、バッテリー搭載量を変えずに航続距離を伸ばすことができる。具合的には高出力化のために磁力密度を上げる必要から電磁鋼板の積層数を増やすことになる。HEV用が積層数100~200層に対しEV用は200~300層の例が多い。ただし、積層数を増やすと渦電流による鉄損が大きくなるため、同時に電磁鋼板の厚さを薄くする必要も出ており、電磁鋼板の強度を低下させずに歪や破損を抑えるために電磁鋼板の高硬度化も必要となっている。このような様々な要求に対応すべく開発されたのが「VG48」である。同超硬合金ではモーターコアの打抜き時の高負荷に耐える耐久性を持ち、耐摩耗性において従来品に対し25%改善するなどの特性を有し、他社に対し差別化が進んだと見られる。

現在はHEV用モーターコア金型への母材供給が中心と見られるが、最大手の( 株 )三井ハイテックがEV向けに対し従来のカシメによるダボ積層から接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応するなどの動きがある。特にトヨタ自動車は電磁鋼板を加熱して焼鈍し鉄損を低減させる方針から、接着方式では接着剤が溶けるため焼鈍できない。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充することでユーザーの選択肢を増加させ、今後メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。なお黒田精工( 株 )はEV向け通信にテスラや欧州EVメーカーに拡大しているが、一部米国納入先のLucidMotorsの販売目標大幅下方修正などの影響もあり、恐らく2024年3月期上期の低迷の一因となったと見られるが、これも一過性の状況で、2025年3月期には欧州メーカーの量産化で同社への需要が高まると見られる。また同社は既存モーターコア金型メーカーへの母材供給を中心に拡大を目指すが、EVモーターへの新規参入を図る自動車部品メーカーや電機機器メーカー向けにモーターコア金型の供給を積極的に行う方向にある。なお今後の需要拡大に向け、岡山製造所にCIP装置(冷間等方圧加圧装置:液体を圧力媒体に高い等方圧力を粉体に加え成型する装置)を増設、2023年9月より本格稼働している。これにより設備能力が15%アップ、メンテナンス性も向上しており、金型供給が増加ともなれば売上増とともにさらなる付加価値上昇も期待できる。

マグネットについては、車載用を中心にEVの本格拡大によりネオジム磁石需要の拡大が続く見通しである。同社は粉末成形用金型、さらには海外向けに金型及び金型素材の供給を行っており、EVの拡大とともに需要拡大が見込まれる。

全体を通じ、2020年3月期第1四半期の売上実績を100として直近の2024年3月期第2四半期は96~97の水準に落ち込んだものの、上期としては平均110レベルにある。本来は年率20%以上の成長が見込まれ、2024年3月期は計画を下回ると見られるも、EVの普及加速とともに2025年3月期以降は売上拡大が再加速すると見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

《SO》

 提供:フィスコ

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