デリカフHD Research Memo(3):2024年3月期第2四半期累計業績は増収増益を達成
■業績動向
1. 2024年3月期第2四半期累計の業績概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高で前年同期比9.1%増の25,344百万円、営業利益で同359.9%増の329百万円、経常利益で同231.9%増の379百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同196.2%増の320百万円と増収増益となった。外食需要の回復に加えてミールキット事業が伸長したこともあり、売上高は過去最高を連続で更新した。経常利益の増減要因については、人件費や運送費、研修費等を中心に販管費が同434百万円増加したものの、増収効果で499百万円、仕入率の改善により101百万円、製造原価率の改善で92百万円の増益となり、全体では11期ぶりに過去最高益を更新した※。
※2013年3月期第2四半期累計の経常利益378百万円をわずかに上回った。営業利益の過去最高は同期に計上した388百万円。
ただ、会社計画に対しては売上高で155百万円、営業利益、経常利益でそれぞれ120百万円下回った。売上高については、一部不採算取引の見直しを実施したこと、利益面では第2四半期に入って想定外のコスト増要因が発生したこと等が主な下揺れ要因だ。具体的には、夏場の記録的な猛暑によりトマトや葉物野菜の生育不良・品質不良が発生した影響で市況が高騰し、第2四半期に入って仕入率が悪化したほか、カット野菜の生産性も低下した。こうした影響で少なく見積もっても60~100百万円程度のコスト増になったと同社では試算している。また、2023年7月末の深夜に奈良事業所の隣接地で火災が発生し、建物に被害はなかったものの約1ヶ月にわたりセンターの稼働停止を余儀なくされ、同事業所で予定していた商品の加工を他事業所に移管して対応した結果、臨時雇用費や物流費が追加的に発生したことなどから50百万円程度の損失が発生した見込みであり、営業利益の下振れ要因となった。営業利益が第1四半期の299百万円から第2四半期に29百万円まで落ち込んだのもこうした要因が重なったためだ。ただ、奈良事業所のトラブルが発生したなか、類焼発生当日も顧客先には予定どおり翌日9時までに商品を納品できており、安定供給を実現する同社の生産体制・物流インフラの強さが改めて確認される結果となった。
同社は事業拡大に向けて人員体制の強化を進めている。2023年9月末時点の正社員は前年同期比45名増加の726名、平均臨時雇用者数は同167名増加の2,178名といずれも過去最高水準となった。1人当たり平均売上高は873万円となり、2021年3月期第2四半期累計を底に上昇傾向が続いている。
(1) 商品別・業態別売上動向
商品別売上高を見ると、カット野菜は前年同期比11.2%増の11,700百万円、ホール野菜は同7.3%増の9,664百万円、その他(ミールキット含む)は同7.5%増の3,979百万円とすべての部門で増収となり、過去最高を更新した。カット野菜は、人手不足と簡便に調理できる利便性の高さを背景に外食業界や給食事業者向けなどで採用が広がった。ホール野菜についても外食業界向けを中心に堅調に推移した。その他ではミールキットのOEM向けの拡大が増収要因となった。
業界別売上高増減率を同社が開示している売上構成比率から試算すると、主力の外食業界向けが前年同期比14.6%増、コロナに強い外食業界向けが同16.5%増とそれぞれ好調が続いた。同期間における外食業界の売上高が約14%の増加となっており※、おおむね業界の動きに沿った伸長となった。2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の取り扱いが2類相当から季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げられたことや、訪日観光客が回復したこともあり外食業界が活況を取り戻した格好だ。全国展開する大手外食企業とは概ね取引を行っているが、個々の取引先における取扱いシェアの拡大(取引集約による提供エリア拡大等)に注力している。2024年3月期第2四半期累計ではファストフードチェーンの関東エリアで新たに取り引きを開始したほか、居酒屋チェーンで提供エリアを全国に拡大するなどの成果があった。
※(一社)日本フードサービス協会が毎月発表している月次伸び率の単純平均値。
また、給食事業者向けも既存顧客の取引シェア拡大により、同17.7%増と好調に推移した。一方で、中食業界向けが同18.2%減、量販・小売業界向けが同4.3%減となった。外食業界向けが繁忙となったことで、低採算案件の受注を抑制したことが減少要因となっており、売上総利益率の改善には寄与した。
(2) 事業セグメント別業績
青果物事業の売上高は前年同期比9.1%増の25,020百万円、セグメント利益(経常利益)は同531.5%増の343百万円となった。前述したように外食業界向けを中心に売上高が拡大し、原価率も改善したことで増収増益となった。
物流事業の売上高は前年同期比8.0%増の2,022百万円、セグメント利益は同155.1%増の23百万円となった。売上高はグループ内取引の拡大に加え、外部顧客向け(トラックの空きスペースを利用した受託物流サービス)も新規案件の獲得が進んだことで、同20.9%増の285百万円と好調に推移した。同社では自社物流の強化も進めており、車両費や人件費等の増加分を受託物流サービスの拡大により打ち返した格好となっている。
研究開発・分析事業の売上高は前年同期比3.6%減の48百万円、セグメント損失は1百万円(前年同期は2百万円の損失)となった。売上高は大手企業からの検証試験の受託分析サービスが増加した一方で、公的補助事業の獲得が進まなかったこと等により減少した。減収となったものの、人件費の減少などにより損失額は若干縮小した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ