デリカフHD Research Memo(1):2025年3月期以降、青果物総合加工メーカーとしてさらなる飛躍を目指す
■要約
デリカフーズホールディングス<3392>は外食・中食業界向けにカット野菜や、ホール(丸)野菜等を卸す、業務用青果物流通業の国内最大手で、農産物の流通を通じて農業の発展と人々の健康な生活づくりに貢献する創造型企業である。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以降、量販・小売業界向け顧客の開拓並びにBtoC事業やミールキット※事業を相次いで立ち上げるなど事業ポートフォリオの変革にも取り組み、業容を拡大している。
※ミールキットとは、あらかじめ決まった料理メニューを簡便に作れるように、肉や魚、野菜などの食材と調味液などをパックにして提供する商品で、肉や魚などは半分調理した状態、野菜はカットした状態で提供される。
1. 2024年3月期第2四半期累計の業績概要
2024年3月期第2四半期累計(2023年4月?9月)の連結業績は、売上高で前年同期比9.1%増の25,344百万円、経常利益で同231.9%増の379百万円となった。売上高は、コロナ禍の収束に伴い外食業界向けで2ケタ増となったほか、ミールキット事業も拡大したことで過去最高を連続更新した。利益面では、猛暑による一部の野菜の生育不良の影響があったものの増収効果で吸収し、経常利益で11期ぶりに過去最高を更新した。会社計画に対して経常利益は120百万円の未達となったが、猛暑の影響でトマトをはじめとする各種野菜の市況が高騰し仕入率が悪化したことが主な要因である。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の連結業績は、売上高で前期比8.5%増の52,000百万円、経常利益で同56.0%増の1,200百万円と期初計画を据え置いた。第2四半期までの進捗率は売上高で48.7%、経常利益で31.6%と利益の進捗率が低くなっているが、市況高騰分の価格転嫁が11月から進んでいることや、足元も外食業界向けの活況が続いていることもあり、今後野菜の生育状況が再び悪化するなどの状況にならない限り、下期に挽回することは可能と見られる。なお、BtoC事業(ミールキット事業含む)についてはOEMを中心に順調に拡大中で、売上高は前期比1割増の40億円程度となる見通し。今後、商品開発やブランド戦略を強化してさらなる成長を目指す。また、冷凍加工商品事業も新たにスタートした。10月より冷凍焼いもの販売も開始しており、大手回転寿司チェーンや大手スーパーへの導入が決定したほか、タイなどへの輸出も開始されており、今後の動向が注目される。
3. 成長戦略
2022年3月期からスタートした3ヶ年の中期経営計画では、2024年3月期に売上高450億円、経常利益10億円を目標に掲げていたが、売上高については1年前倒しで達成し、経常利益も超過する可能性が高い。基本戦略として掲げた「事業ポートフォリオの変革」「青果物流通インフラの構築」についてもおおむね達成できたものと評価される。2025年3月期以降は、業務用青果物の流通及びカット野菜のトップ企業としてさらなる成長を推進するほか、新規領域である冷凍加工商品の拡大並びにミールキットを中心としたBtoC事業、輸出事業を育成することで、青果物総合加工メーカーとしてのポジションを確立していく考えだ。2023年に業務提携を発表したエア・ウォーター<4088>、(株)ベジテックとの連携強化により、主に流通インフラ面の拡充と効率化を進めることが期待される。同社は既存事業のオーガニックな成長で中期的には700億円程度まで売上規模を拡大できると見ており、これに付加価値の高い新規領域を育成することで収益性の向上を目指す。青果物の全国流通から各種加工品の製造販売まで一貫して行う企業は他になく、独自のポジションを確立することでさらなる飛躍を目指しており、今後の成長が期待される。
■Key Points
・2024年3月期第2四半期累計業績は外食需要の回復を追い風に増収増益を達成
・市況高騰分の売価改善が進み、2024年3月期業績は期初計画を達成する見込み
・2025年3月期以降の成長につながる事業ポートフォリオの変革、青果物流通インフラの構築等が順調に進展
・新規事業の育成により青果物総合加工メーカーとしてのポジションを確立し、さらなる成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ