キャリアリンク Research Memo(2):事務系及び製造系人材サービス事業を展開する総合人材サービス会社
■事業概要
キャリアリンク<6070>は、1996年に創業した人材派遣サービス会社で、短期間での大量動員・業務立ち上げを可能とする運用ノウハウを強みに事務系人材サービス事業を中心に成長を続けてきた。2017年に製造系人材サービス事業の成長を加速していくため、キャリアリンクファクトリー(株)を子会社として新設し事業承継したほか、2018年からは営業系人材サービスにも領域を拡大した。(2024年3月期より営業系人材サービス事業は事務系人材サービス事業のBPO関連事業部門に統合した。)また、2018年3月に金融業界向け人材サービス事業や人事給与計算請負事業等を行う(株)ジャパン・ビジネス・サービス(以下、JBS)の全株式を取得して子会社化した。
2024年3月期第2四半期累計の売上構成比を見ると、BPO関連事業部門を中心とした事務系人材サービス事業が全体の85.4%を占め、次いで製造系人材サービス事業が13.9%、その他(JBSの子会社である東京自動車管理(株)が行う自動車管理事業)が0.6%であり、事務系人材サービス事業が主力事業となっている。各事業の内容は以下のとおり。
1. 事務系人材サービス事業
(1) BPO関連事業部門
事務系人材サービス事業の8割弱を占めるBPO関連事業部門では、主にBPO事業者※が請け負ったBPO業務への人材派遣、並びに企業及び地方自治体の業務プロセスの一部についての企画提案型の請負業務等を行っている。2020年以降、自治体向けの業務請負案件が増加し、2023年3月期以降は派遣業務を上回る売上規模となっている。
※ 官公庁及び地方公共団体並びに企業等の業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを含めて外部委託することをBPOと呼び、受託する事業者をBPO事業者と言う。
企業や官公庁がBPOを導入するメリットは、固定費の流動化(業務繁忙期に合わせた人員は不要)や管理コストの削減が挙げられ、また、窓口業務やコールセンター業務などでは、利用客に対するサービス品質の向上といった効果も期待できる。2006年に施行された「公共サービス改革法」を契機に、官公庁や外郭団体で「市場化テスト」という名のもとに競争入札制度を導入し、民間企業の活用を積極的に進めてきた。
同社の強みは、1,000人を超える大量動員を要する大型プロジェクトでも、1ヶ月程度の短期間で立ち上げることができる運用ノウハウを持っていることにある。スタッフの採用に関しては、独自の人材マッチングシステム(Webシステムを活用した適性テストの実施やシフト希望確認など)によって、短期間で最適な人材を集めることを可能としている。また、社員を現場に常駐させることによって、スタッフの労務管理を含めた現場での運用能力強化とオペレーションの改善提案等による業務効率向上を図り、顧客満足度の向上につなげている。
事務処理・データ入力・書類発送等を中心としたBPO業務の運用に関して、同社は経験豊富なSV(スーパーバイザー)をリーダーとする10人程度のチーム編成を組み(チーム派遣)、日々の業務を処理している。SVを配置することで、業務研修の実施やスタッフの勤務シフトの平準化を行い、業務の早期立ち上げ及び円滑な運用と生産性向上を可能としている。特に大量の人員が必要とされる大型プロジェクトでは最適な運用システムと言うことができ、サービス品質の高さから大手BPO事業者の取引先も拡大している。
(2) CRM関連事業部門
CRM(Customer Relationship Management)とは、企業が顧客満足度の向上を目的に、顧客との良好な関係を構築していくための経営手法を指す。同事業部門では、テレマーケティング事業者及び企業等のコンタクトセンターへの人材派遣・紹介サービスを行っている。テレマーケティング事業者への人材派遣では、BPO関連事業部門と同様にチーム派遣を行うことで、取引先におけるシェア拡大に取り組んでいる。
(3) 一般事務事業部門
一般事務事業部門では、事務業務分野の人材派遣、紹介予定派遣サービスを行っている。一般事務分野の人材派遣業務は、パーソルホールディングス<2181>やパソナグループ<2168>など大手人材派遣会社との競争も激しいが、同社ではBPO案件の受注につなげるためのフック役と位置付けている。
なお、2024年3月期より営業系人材サービス事業を事務系人材サービス事業に統合しており、売上高としてはBPO関連事業部門に含めている。
2. 製造系人材サービス事業
製造系人材サービス事業は、子会社のキャリアリンクファクトリーで展開している。売上高の約6割を食品加工業向け、約4割を輸送機器や電子機器、医療機器分野等の製造加工業向けで占めている。外国籍労働者を積極的に採用・派遣しているのが特徴で、就業者に占める外国籍労働者の比率は事業拡大とともに上昇し、2024年3月期第2四半期累計で6割を占めるまでになっている。営業拠点も年々拡大しており、姫路本社のほか厚木、千葉、大宮、つくば、静岡、名古屋、岡崎、四日市、大阪、三宮、福岡、熊本、沖縄と合計14拠点で展開している。今後も外国籍の留学生や在留者等が多く居住するエリアを中心に拠点を開設し、業容拡大を進めていく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ