サクシード Research Memo(10):第2四半期は苦戦したが、期初計画の達成を目指す
■業績動向
3. 2024年3月期の業績見通し
サクシード<9256>は2024年3月期の業績について、売上高3,440百万円(前期比17.1%増)、営業利益445百万円(同16.3%増)、経常利益445百万円(同11.4%増)、当期純利益298百万円(同10.9%増)を見込んでいる。第2四半期は対面型家庭教師サービスが苦戦したが、利益構成比が小さいうえ戦略の修正を進めていることから、セグメント別を含めて期初予想を変更していない。
日本経済は、コロナ禍からほぼ回復したが、ウクライナ情勢などに起因する原材料高や円安などが続いており、依然不透明な要素を抱えている。教育や福祉の業界でも、働く環境や人材強化といった課題への認知が高まり、課題解消に向けて政策も動き出そうとしている。こうしたなかで同社は、下期も、成長に加速をつけるため教育人材支援事業と福祉人材支援事業で営業人員の増強を進める考えだ。また、個別指導教室事業では、新規開校によって神奈川県のドミナントを強化するとともに、神奈川県以外のドミナント化に向けて千葉という新たなエリアに乗り出した。家庭教師事業については、オンライン型家庭教師のプロモーションを強化する一方、対面型家庭教師は第2四半期の苦戦を背景に戦略を修正している。足元では、外部向け人材サービスの好調ぶりが顕著であることから、対面型家庭教師サービスの苦戦をカバーする可能性もあると思われる。
教育人材支援事業では2ケタの増収増益を予想している。コロナ禍で教育現場におけるDXが加速したもののICT支援員は依然として不足しており、今後も需要が増加していくと予測されている。部活動指導員やALT(外国語指導助手)・プログラミング講師などでも、教員の負担を軽減するため外部に委託する動きが強まっている。特に教員の長時間労働の問題は放置すれば日本の教育現場の質の低下に結び付く重要な課題であるため、公立校を含めて、教員や部活動指導員など外部人材の利用が増えてくると想定される。こうした課題に対して、同社は人員を増強しサービス拡大に対応できる営業体制を構築、自治体や学校の案件獲得に向けてプロポーザルや入札への参加も強化してきた。これが奏功し、足元では問い合わせが増加している。自治体の予算策定は年度末に向けて実施されるため、こうした問い合わせが反映されれば、来期以降の収益拡大に直結することが予想される。
低収益性の介護向け人材サービスから撤退した福祉人材支援事業では、需要が見込まれる保育施設や学童施設、放課後等デイサービスに経営資源を集中する方針である。具体的には、自治体向けに学校介助員などの人材サービスを一層強化、「小1の壁問題」が追い風になっている学童保育の領域も注力する。さらに、有資格者の登録が多いという強みを生かして放課後等デイサービス向け人材紹介を拡大していく考えである。これにより引き続き増収を予想するが、新規登録者の獲得に向けてSNS広告などを強化するため、利益面では横ばいを見込んでいる。しかし、外部向け人材サービスの好調が続いていることから、この辺はバッファとなる可能性があると考えられる。
個別指導教室事業では、事業拡大に向けて新規校舎の開校を加速する予定である。ドミナントエリアの神奈川県はもちろんだが、全国展開への足掛かりとして千葉県のドミナントエリア化をスタート、生徒層が多いと見込まれるエリアには積極的に出店を進める計画である。「新松戸校」を含め新規校舎各店の立ち上がりが順調なことから、通期で新規校舎4店を予定しており、第2四半期の3店に加え、2月~3月の生徒募集に合わせて下期に1店~3店出店したい考えだ。埼玉県などでも出店候補地を探しているが、新規校舎は早くて来期と思われる。以上のことから増収を予想するが、新規校舎が増えることで出店費用や運営費用の増加が見込まれ、営業利益率は若干低下する見通しである。
家庭教師事業では、前期に伸びが想定より鈍くなったオンライン型家庭教師だが、依然全国的にニーズが強いことから、SNS広告など訴求効果の大きいメディアに厳選するなどプロモーションを強化する計画である。一方、対面型家庭教師については、拠点を持たずに対応可能エリアを開発する体制(ビジネスが大きくなっても小規模拠点で対応可能)が構築できたことから、展開エリアを首都圏・関西圏から中京圏や九州へと拡大、将来的には全国展開も検討していた。しかし、第2四半期の苦戦を受け、無理に展開エリアを広げるより、課題のプロモーション戦略を見直すことで採算を改善するという方向に一旦方針転換した。今期は出血を止め、来期以降に利益率改善を進めるという流れになると思われ、今後、再びエリア拡大を狙うにしても、効率の良い大都市部から慎重に広げていくことになりそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SI》
提供:フィスコ