クオールHD Research Memo(11):第一三共エスファはグループシナジーによりさらなる成長に期待(2)
■クオールホールディングス<3034>の中期業績目標と成長戦略
(2) 医療関連事業
医療関連事業では、積極的なM&A戦略による規模拡大と同時に各子会社のオーガニック成長に取り組むことで、2024年3月期比売上高1.2倍増、営業利益率12%以上の維持を目指す。既存子会社については年率10%の売上成長を目標としている。アポプラスステーションでは、CSO事業において専門領域人財の育成に注力し、CMR数1,000名体制を目指す。また、CRO事業では大手食品メーカーとの協業による受託試験の受注拡大にも取り組む。
アポプラスキャリアでは、薬剤師だけでなく医療事務や産業医、医師、看護師など医療職種の拡大を図り、子会社のオンコールとの協業などによって顧客企業の多様なニーズに対応することで売上成長を目指す。藤永製薬では他企業との共同開発やリポジショニング※による新製品の開発、第一三共エスファとの協業などにより売上拡大を図る。
※既存の承認薬や開発中の薬を転用して、新たな疾患の治療薬として開発する手法のこと。
(3) 第一三共エスファ
第一三共エスファは、第一三共<4568>がGE医薬品市場への参入を目的に2010年に設立した企画と販売に特化したファブレスメーカーで、AG製品の国内販売シェアは2022年度で約26%とトップに位置しており、売上高の約75%をAG製品で占めている。販売品目は第一三共以外にも複数の製薬企業とAG製品の開発販売権許諾契約を結び製品化しており、現在は18品目を販売している。2023年3月期の業績は、売上高で78,769百万円、営業利益で12,865百万円と2ケタ増収増益となった。
成長戦略としては、AG製品のライセンス獲得による売上拡大に加えて、他社新薬や既存薬の併売などを行うための販売機能の拡大、新技術などでのリポジショニングや未承認薬の導入・共同開発などによる新製品の開発をグループシナジーも利かせながら進めていくことで、年率15%以上の売上成長と15%以上の利益率維持を目指す。
グループシナジーの創出としては、販売機能の拡大に対する効果が期待される。販売のためのMR人材について、第一三共エスファで160名が在籍しているが、これに藤永製薬の60名やアポプラステーションのCMR人材を活用できる可能性があり、販売拡大のために必要となるMRのリソースについてはグループで十分に賄える見通しだ。また、開発面でのシナジーとしては、藤永製薬との連携による開発力強化に加えて、クオールの調剤薬局を通じで患者や薬剤師、医師などの声を反映した製品開発が可能になる点が挙げられる。特に後者においては、先発品よりアドヒアランス※が向上するGE品を開発できる可能性も高まり、開発面でのプラス効果は大きいと弊社では見ている。そのほか、新規事業を立ち上げるべくイノベーション事業部を新設し、全く新しい取り組みの検討も開始している。
※アドヒアランス:病気に対する治療方法について患者が十分に理解し、服用方法や薬の種類に十分に納得したうえで実施、継続することを指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ