トレンダーズ Research Memo(5):2024年3月期第1四半期は美容カテゴリが貢献
■業績動向
1. 2024年3月期第1四半期の業績概要
トレンダーズ<6069>の2024年3月期第1四半期の業績は、売上高1,434百万円(前年同期比46.0%減)、営業利益185百万円(同57.2%減)、経常利益185百万円(同58.4%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益122百万円(同60.6%減)となった。マーケティング事業の一部取引について契約内容の変更を行い、グロス計上からネット計上に変更したため、売上高は表面的には大幅に減少した。なお、計上方法の変更は利益面には影響しない。変更された計上方法で算出した前年同期の売上高は1,788百万円となり、実質的には同19.8%の減収となっている。
2024年3月期よりマーケティング事業において選択と集中を行い、美容カテゴリへ注力した結果、美容カテゴリは前年同期比12.9%の増収となったが、食品・飲料など美容以外のカテゴリは同46.5%減収となり、事業全体では同3.4%の減収となった。美容以外のカテゴリの既存顧客に対しては、美容以外の担当チームを編成し取引を継続しており、新規受注があれば受けていくが同社から積極的な営業は行わないスタンスだ。また、インベストメント事業において、前年同期には営業投資有価証券の売却収益312百万円が発生したが、今期は売却がなく同91.6%の大幅な減収となった。一方、粗利は同0.6%増の812百万円と四半期で過去最高を更新した。マーケティング事業において、食料・飲料など美容以外のカテゴリにおける粗利が同51.1%減となった一方、SNS分析やコンサルティングなど利益率の高い案件が増えた美容カテゴリの粗利が30.2%増と伸び、事業全体の粗利は同10.0%増となった。インベストメント事業の粗利は同70.3%減となっている。販管費は626百万円と同67.7%と急増した。マーケティング事業の成長に伴い人材投資を増やし、第1四半期で24名増員したほか、業務委託費の増加、MimiTVの認知拡大に向けたTVCMなどの大型広告投資164百万円などが第1四半期に集中した。その結果、営業利益以下各段階利益は前年同期比で大幅な減益となったが、もともと下期偏重の利益発生を想定しており、同社では第1四半期の売上高・各段階利益ともに計画を上回る進捗状況にあると捉えている。
2. トピックス
(1) 美容マーケティング領域
同社は2023年4月1日付で、TikTokマーケティングを専門とするCARAFUL(資本金20百万円、所在地:東京都渋谷区)を完全子会社した。TikTokはショート動画に特化したSNSであり、企業のマーケティング活動においても需要が高まっている。同社サービスのプラットフォーム別売上比率においても、1.4%(2022年3月期通期)から6.8%(2023年3月期通期)へと成長しており、今回の子会社化により同社グループとしてTikTokマーケティング需要を捉え成長させていくことが期待される。買収後もTikTok案件の提案数や受注数は同社の想定を上回って推移している。
同社が美容マーケティング領域で注力している施策が、運営する美容メディアMimiTVの認知度向上だ。そのため、タレントの後藤真希氏をアンバサダーに起用し、2023年4月に初のTVCMを関東エリアで放映した。それ以外にも交通広告・SNS広告などを展開している。広告効果によりメーカーの担当者、流通・広告代理店の関係者への認知度が高まり、MimiTVの2024年3月第1四半期受注売上高は前年同期比で1.5倍に成長した。また同時期に、MimiTVユーザーの声を生かしながら、誰もが使い易いメイクブラシセットを自社で制作し、MimiTV初のプロデュースブランド「mimish」として5月より販売を開始した。第2四半期以降も、MimiTVのフリーペーパーを8月に制作、そのほか書籍出版、大型リアルイベントの開催など様々な認知度向上施策を計画している。
(2) メディカルマーケティング領域
2023年5月に韓国でアートメイクサロン「J.URBANTOUCH」を展開するUrbancompany Co., Ltd.(代表:イム・ソジン)と、アートメイク事業に関する業務提携を行った。このアートメイクは独自の技法により施術の際の痛みが少なく、また仕上がりも自然で着色が良いことから、韓国のみならず日本からも年間1万人以上が訪れるほどの人気を集めている。また、施術者を育成するアカデミー事業も展開しており、累計で約1,000人もの施術者を輩出している。同社は、レベニューシェア型のメディカルマーケティング事業として、このアートメイククリニックのプロデュースやアカデミー事業運営の支援を行い、国内でのアートメイクの普及を図る計画である。
また2023年8月にはレプリテック(所在地:東京都渋谷区)との業務提携により、再生医療領域に参入した。レプリテックは2015年の創業以来、次世代型遺伝子発現ベクター※1の開発・ベクターの受託製造・靭帯の細胞療法の開発などの再生医療領域に取り組んでいる。今回、同社が独自に開発した幹細胞培養上清液※2の毛髪再生治療活用に向けて、同社の事業提携先である自由診療クリニックでの評価を2023年9月より開始する。その後は毛髪再生治療専門クリニックのプロデュースや、薬剤の卸販売などの事業展開を計画している。
※1 遺伝子発現ベクター:特定の遺伝子を標的細胞に導入し、その遺伝子からタンパク質を発現させるために使用されるDNAまたはRNA分子のことで、遺伝子組み換え技術やタンパク質の生産に用いられる。
※2 培養上清液:細胞を培養する際に使用される培養液の上澄みで、細胞から分泌された成長因子やサイトカインなどの有効成分が含まれ、細胞自体を使わない再生医療や美容の分野で注目されている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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