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【特集】米国でETF承認観測浮上、「暗号資産」関連株は再び輝き増すか <株探トップ特集>

巨額資金流出事件など負の歴史を持つ暗号資産だが、世界各国で金融当局による法整備も進められてきた。米国での現物型ETF承認後は、機関投資家が暗号資産市場にアクセスしやすくなると考えられている。

―機関投資家の参戦期待でビットコイン相場は上昇、GameFiの成長見据えた事業展開も加速―

 暗号資産(仮想通貨)を巡るニュースフローが急増している。巨額資金流出事件を経て世界各国で法整備が進み、米国では現物型ビットコインETF(上場投資信託)の承認観測が高まっている。日本国内でも暗号資産領域で事業の拡大を目指す企業は多く、関連企業の株価浮揚力に期待が膨らんでいる。

●現物型ビットコインETFの承認観測で見直し機運

  ビットコイン相場に上昇圧力が掛かっている。9月末にビットコイン価格は2万6900ドル台となっていたが、11月2日には3万6000ドルに迫る水準まで急騰。その後も高値圏を維持している。

 米資産運用大手ブラックロック<BLK>が申請中の現物型ビットコインETFに関し、米国の証券清算・決済機関が、将来的に取引可能な銘柄であることを示唆する「適格ファイル」に追加したことが明らかになったと10月下旬に伝わった。すでに先物型のETFは存在するものの、規制当局が現物型ETFを承認すれば、機関投資家による資金の流入を伴って、暗号資産の取引量が一段と増加すると期待されている。

 ビットコインを巡っては2024年に「半減期」が到来することも想定されている。半減するのはビットコインのマイナー(採掘者)が得られる報酬で、ビットコインの希少性を維持するための仕組みの一つと言われている。ビットコインの供給量が絞られて価格に上昇圧力が掛かるとの思惑もあって、暗号資産市場に対して投資家の注目度が一段と高まっている。

●証券大手でファンド立ち上げの動き

 とはいえ暗号資産の歴史そのものは、スキャンダラスな事件を抜きにしては語れない。巨額のビットコインが消失した14年の「マウントゴックス事件」や、18年の暗号資産交換業者コインチェックでの不正資金流出事件、22年のFTXトレーディングの経営破綻などを記憶する投資家は多いはずだ。一方で、金融当局による法整備は進み、日本国内では法定通貨との連動性を持つステーブルコインを企業間決済に活用しようという機運が高まっている。

 証券各社も暗号資産の領域では攻めの姿勢を鮮明にしている。SBIホールディングス <8473> [東証P]は暗号資産の交換・取引サービスを提供しつつ、マーケットメイカーとしてグローバルに事業を展開する企業も傘下に持つ。野村ホールディングス <8604> [東証P]子会社のレーザー・デジタル・ホールディングスは9月、機関投資家向けのビットコインファンドの立ち上げを発表した。コインチェックの不正資金流出事件後、同社を傘下に収めたマネックスグループ <8698> [東証P]は、暗号資産関連の中核銘柄でもある。

 大手金融機関に限らず、暗号資産市場の拡大は、関連するビジネスを展開する企業群の業績に追い風となるとも考えられている。

●東京短資と協業のDガレージなどに注目

 デジタルガレージ <4819> [東証P]は、金融機関の短期資金取引を仲介する東京短資(東京都中央区)とブロックチェーン金融サービスを展開するCrypto Garageを共同で設立。11月1日に同社は、野村などが設立し、機関投資家にカストディー(資産管理)業務を提供するKomainuホールディングスとの協業を発表した。日本の法人・機関投資家による暗号資産への関心の高まりを受け、デジタル資産を管理するための安全で信頼性の高いプラットフォームの開発を進める。Dガレージの株価は10月に3000円を割り込み、20年3月以来の安値圏に沈む場面があったが、主力の決済事業の成長期待は高く、見直し買いの余地も感じさせる。

 セレス <3696> [東証P]はグループ会社のマーキュリーが暗号資産販売所「コイントレード」を運営。4月、デジタル資産プラットフォーム事業を手掛ける米国企業との戦略的パートナーシップ締結を発表し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策やセキュリティー強化に関する顧客ニーズの高まりに応じる態勢を整えた。暗号資産交換業大手のビットバンク(東京都品川区)にも出資するセレスは11月8日に今期の利益予想を下方修正したが、暗号資産市場が活況となった場合はセレスの利益を押し上げる効果が見込まれるとあって、1000円を下回って推移する株価の反騰シナリオを期待したい。

 GMOインターネットグループ <9449> [東証P]の傘下にあるGMOフィナンシャルホールディングス <7177> [東証S]は、暗号資産交換業のGMOコインを運営。また、GMOとGMO-FH、あおぞら銀行 <8304> [東証P]が共同出資するGMOあおぞらネット銀行は10月12日、デジタル通貨事業のディーカレットDCP(東京都千代田区)とインターネットイニシアティブ <3774> [東証P]とともに、デジタル通貨「DCJPY」の取引・決済サービスについて、来年7月の開始に向けて共同で推進すると発表した。GMOあおぞら銀を巡っては、GMO側が金融庁から銀行主要株主の認可を取得して保有する種類株を普通株に転換した場合、グループによる議決権保有割合は50%となる見通し。GMO-FHはこのうち25%(現在は7.43%)を保有することとなるという。暗号資産交換業とともに、デジタル通貨というもう一つの成長軸がGMO-FHの収益を拡大させるシナリオに期待が膨らむ。

 金現物価格との連動性を持つ暗号資産「ジパングコイン」を手掛ける暗号資産交換業者のデジタルアセットマーケッツ(東京都千代田区)に対しては、インタートレード <3747> [東証S]が三井物産 <8031> [東証P]や日本取引所グループ <8697> [東証P]などとともに出資する。デジタルアセットマーケッツは今年夏、同社の販売所において、銀やプラチナとの連動性を持つ暗号資産の取り扱い開始を発表するなど、商品の拡充に努めている。インタートレの株価は10月下旬以降、じりじりと水準を切り上げており、反騰攻勢を更に強められるか注目される。

 クシム <2345> [東証S]の連結子会社であるチューリンガムは、国内外の暗号資産交換所でIEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)と呼ばれる暗号資産を使った資金調達を支援してきた。クシムの株価は9月以降、やや荒い動きをみせてきたが、25日移動平均線を下回った足もとの水準では押し目買い機運の高まりに期待したい。

●GameFiでコロプラなども要マーク

 暗号資産の基礎となるブロックチェーン技術を活用したゲーム領域で事業を展開する企業群も、暗号資産関連銘柄として位置づけられている。ブロックチェーンゲームは、プレイヤーが保有するデジタル資産をNFT(非代替性トークン)マーケットプレイスで売買することができ、「遊びながら稼ぐ」世界を提供している。

 コロプラ <3668> [東証P]は、ゲームと金融が融合した「GameFi」事業の展開を目的に昨年11月に連結子会社Brilliantcryptoを設立。今年7月、コインチェックとIEOに向けた契約を締結したと発表した。新規発行された暗号資産は開発中のブロックチェーンゲームに利用される予定だ。コロプラの23年9月期連結決算は減収減益で今期の業績予想は非開示とする。プライム上場ながらPBR(株価純資産倍率)が0.98倍にとどまっており、割安感も意識される。

 モバイルファクトリー <3912> [東証S]の暗号資産QYS(キス)コインは、24年上期に国内でのIEOを計画する。位置ゲーム「駅メモ! Our Rails(アワメモ!)」で同コインを導入し、経済圏の拡大に努める構えだ。gumi <3903> [東証P]は今年9月、ゲーム「ファントム オブ キル ─オルタナティブ・イミテーション─」に関連する暗号資産「Oshi Token」について、暗号資産取引所への上場決定を発表。更に、作詞家の秋元康氏が総合プロデューサーを務めるアイドルグループ創造のプロジェクト「IDOL3.0 PROJECT」を巡り、出資先企業のオーバースが暗号資産「Nippon Idol Token」のIEOを実施した。

 KLab <3656> [東証P]は、子会社のBLOCKSMITH&Co.が、暗号資産と交換できるゲーム内通貨を貯められるショート動画クイズアプリ「QAQA(カカ)」の本リリースを目指す。モバファクとgumi、KLabの3社の株価は下値を模索する展開が続いていたが、足もとでは底入れの兆しも見えつつある。

 このほか、「ネクスコイン」の発行体であるネクスグループ <6634> [東証S]は、GameFi分野での事業拡大に注力する。前述のデジタルアセットマーケッツへの出資企業に名を連ねるセブン銀行 <8410> [東証P]、ジャパンインベストメントアドバイザー <7172> [東証P]、愛媛銀行 <8541> [東証P]、日産証券グループ <8705> [東証S]、キーウェアソリューションズ <3799> [東証S]、アストマックス <7162> [東証S]なども関連銘柄に加わりそうだ。

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