メディアS Research Memo(7):「コーポレートDX」は増収増益、「マイクラス」は好調な受注見込み(2)
■メディアシーク<4824>の業績見通し
(3) ライフスタイルDX
2024年7月期の業績予想においては、売上高が前期比4.3%増の309百万円、営業利益が前期比14.3%減の78百万円を見込んでいる。2024年7月期の各サービスの業績予想では、売上高は「EdTech」が前期比0.4%減の222百万円、「FanTech」が同67.6%増の57百万円、「HealthTech」が同25.6%減の29百万円、「FinTech」は1百万円を見込んでいる。「FanTech」においては、2023年3月に「BOYS MEETING from Thailand」の配信を開始し、一緒に写真が撮れるフォトフレームアプリやLINEスタンプの販売もスタートした。2023年7月期に将来的な成長を見込んで投資を増額したことから、2024年7月期は「FanTech」の割合が大きく増加する見通しである。
「EdTech」「FanTech」「HealthTech」及び映像コンテンツを活用したオリジナルアプリの制作を可能とする「S-applico」の展開を強化する。このアプリの特徴は、クリエイター自身が動画や音声などのデジタルコンテンツを配信するスマートフォンのオリジナルアプリを開発し、各アプリストアで配信することで、サブスクリプション型課金と広告収入で登録するファン数に比例して収益を安定させられる点で、クリエイターはアプリの開発から運営までワンストップで活用できる。加えて、金融サービスに最新テクノロジーを融合させたアプリ「エスコレ」を開発し「FinTech」にも参入した。
同社は、2023年5月31日よりWeb決済代行業者であるSBペイメントサービス(株)及び後払い決済代行業者である(株)キャッチボールと協業し、新サービス「エスコレ」をスタートした。同社のスクール運営システムである「マイクラス」を運営していくなかで、コロナ禍以降に急速に進むサブスクリプションに対応する料金回収システムを構築し、後払い機能付きのクレジット継続課金システムのサービスを開始した。エスコレのメリットとして、1) 継続課金サービスに便利であること、2) 料金の回収漏れがゼロになること、3) 料金回収における督促の手間を軽減できること、4) 初期費用負担が軽減できることがある。同サービスの展開により、同社は定常的な売上を計上することが見込まれる。
2023年9月、同社は瞑想アプリ「RusselIME」をリニューアルローンチした。同アプリは2020年7月に正式にローンチされ、同年にGoogle Play ベストオブ「隠れた名作部門」を受賞するも、2022年に一旦休止していた。その後、同社は、ラッセル・マインドフルネス・エンターテイメント(株)と協業し、同アプリを「S-applico」を活用してより見やすくより使いやすく改良し、有名アーティストのオリジナル瞑想コンテンツも収録した独自性の高いアプリにリニューアルした。
(4) ブレインテック・DTx
同社は、医療機器プログラムの開発能力とブレインテックのノウハウを軸に、製薬企業、医療機器メーカー、大学病院と積極的に連携を行い、オープンイノベーション型の共同事業を推進している。慢性疼痛においては、千葉大学医学部付属病院痛みセンターにて行われたニューロフィードバックを用いた研究の論文を公開し、軽度認知症についても研究・開発と並行して大学病院と連携を進めている。現状、治療用アプリの受託開発を行っているが、その後はニューロフィードバックに関するエンジンの提供、ブレインテックサービスにおける「自由診療※」への提供を目指し、治療用アプリの医療承認後の販売を目指す。2024年7月期は、従来通り、通年を先行投資期間実施期間と位置づけ、独自技術を活用したDTxビジネスの実現に向け、慎重に事業を進める。
※ブレインテックサービスにおいては医療行為のうち患者が自己負担で行うもので、神経難病の診断・診療を行う医師や医療機関と連携して提供していくものとされている。
2023年3月に接骨院・鍼灸院の支援事業を展開するアトラグループ<6029>と合意した、脳波を活用したヘルステック事業のサービス開発は、2023年8月にブレインテックトレーニングサービスとして提供をスタートした。同サービスは、接骨院・鍼灸院・マッサージ院向けに痛みの緩和を目的として開発され、アトラグループが提供している療養費・自費・物販などの売上一括管理ソフト「A-COMS」とシステム連携させることで、脳のデータが常に確認できるようになり、施術後の患者の状態をより多面的に評価することが可能になった。まずはアトラグループが運営するほねつぎ接骨院への導入を先行的にスタートし、全国の「A-COMS」利用会員の施術所に通う患者1万人を対象として提供する。2024年7月期には回数券型または月額定額制による売上高が増加する見込みである。
2022年12月に同社グループは、1) 医薬申請を想定しているソフトウェアを主体とするプログラム、2) 疾病の予防、診断・治療などの医療行為を実施するデジタル技術をDTxと定義し、「DTxカオスマップ2022」を作成した。DTxの向上による医療的成果が期待されており、デジタル技術による医療サービスを推進することで、治療効果の向上や医療費削減、人手不足解消などにつながることが見込まれる。そのため、同社は、DTx関連の国内企業や今後国内での展開を予定している外資系企業を基に、「循環器系疾患(心臓血管)」「がん」「脳卒中」「感染症(呼吸器)」「認知症」「整形外科疾患」「精神・行動障害」「内分泌・代謝系疾患(糖尿病)」「その他」の9カテゴリーに分類し、約50企業からなる同マップを作成した。
(5) ベンチャーインキュベーション
投資先のスタートアップ企業やベンチャー企業のIPO実現によるキャピタルゲイン等により同社の純資産は大きく拡大しており、さらなる成長に向けて取り組む。現在は、動画分析技術を核にスポーツテックの事業領域で事業展開を行うRUN.EDGEへ1億円の出資をはじめ、他3社に投資を行っている。各社ともに業績は順調で軌道に乗りつつ、上場に向けて準備に入っている。
同社は、上場企業にも積極的に投資を行ううえで、新しいコンサルティングのビジネスモデルをスタートさせた。同社取締役が投資先の上場企業の社外取締役に就任し、ガバナンスの管理を行いながら同社と共同開発をすることで、上場企業は時価総額を上げ企業価値を高めていく。一方で、同社は投資先である上場企業の企業価値が上昇することで、同社の純資産を拡大させることができる。既にこのビジネスモデルの実証効果は証明されており、同社と投資先の上場企業の双方にメリットが生まれている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
《SI》
提供:フィスコ