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明日の株式相場に向けて=車載向けパワー半導体に暗雲か

 きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比161円高の3万858円と反発。後場に入って右往左往し、結局高く引けたものの依然としてはっきりしない。3万円トビ台~3万1000円のゾーンを千鳥足でさまよい歩く展開が続いている。

 きょうは日銀の金融政策決定会合の2日目であり、その結果と引け後の植田日銀総裁の記者会見に注目が集まった。米国ではFRBが日銀に半歩遅れて、きょうとあすの2日間でFOMCを開催するが、こちらの方はシナリオの大筋が見えており波乱要素に乏しいというのが大方の見方だ。日銀とFRBの大きな違いは、前者が大規模緩和策からの脱却を目指す「スタート地点にこれから向かおう」としているのに対し、後者は激走を経て、まさに金融引き締め政策の「ゴールテープを切ろうとしている」場面にあることだ。

 日銀の決定会合の結果は、マーケットにとっても消化難だった印象を受ける。日経平均は後場に入り乱高下という表現は当たらないが、狭いゾーンで上に行ったり、下に行ったり、迷いに迷った。反発して引けたのは結果オーライではあったが、この程度の反発で留飲を下げた投資家はいないと思われる。

 マイナス金利の解除については当分先の話、イメージとしては来年春先であるとの認識が広がっていて、今回の焦点はイールドカーブ・コントロールの許容変動幅を現行の1%上限から引き上げるのか否かにスポットが当たっていた。結果として玉虫色の内容となり、発表当初は市場関係者も「わざとピントをぼかしたような表現で煙に巻いているような印象も受ける」(ネット証券アナリスト)という声が出ていた。要点をざっくり拾うと、10年債利回りについてこれまでは0.5%をメドに1%上限(厳格に抑制するラインで毎営業日、指値オペで対応)としていたが、今回は1%をメドにして、上限については触れていない。実質的には許容変動幅の拡大だが、1.5%上限といったような文言はなく「機動的に実施する」、つまり「適当に国債を買い入れます」という曖昧さである。

 そして、もう一つ大きなポイントは展望リポートにおける物価見通しだ。今回のリポートでは、23年度コアCPIは中央値で従前見通しの2.5%から2.8%に、そして24年度の見通しについてはこれまでの1.9%から2.8%に大幅に引き上げた。だが、25年度については1.6%から1.7%への小幅な引き上げにとどめ、目標の2%ラインに届かないという見立てであった。つまり、足もとでマイナス金利解除を急がないことへの論拠として25年度は2%を下回るという見通しを示し、これを盾にモラトリアム化させている。植田日銀総裁のハト派路線は未だ健在といってよさそうである。

 前日の当欄で空売り比率の話に触れたが、前日取引終了後の時点で東証合計の空売り比率が遂に54.3%まで上昇した。50%を大きく上回ってきたことで、株式需給面では「陰の極」を示唆。きょうは日銀の決定会合がよほどネガティブシナリオでなければ、目先筋の空売り手仕舞いで全体指数は上昇する公算が大きかった。実際その通りの展開だったが、これは全体相場の底が入ったというのとはまた別の話である。日銀狂騒曲に浸った1日となったが、その陰できょうは 半導体関連株への売りがかなり苛烈だった。マクニカホールディングス<3132>の好決算を受けての15%安は材料出尽くしと呼ぶにはあまりに暴力的な下げで、決算跨ぎのトレードの怖さを物語る。半導体関連株でも、ローム<6963>やルネサスエレクトロニクス<6723>など「電気自動車(EV)向け パワー半導体」に絡む銘柄の下げが際立つように見受けられたのは不気味だ。これは前日の米株市場でパワー半導体関連のオン・セミコンダクター<ON>が決算を嫌気され22%の暴落に見舞われたことと無縁ではなさそうだ。

 あすのスケジュールでは、10月の新車販売台数、10月の軽自動車販売台数など。海外では10月の財新中国製造業購買担当者景気指数(PMI)、10月のADP全米雇用リポート、10月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、9月の米雇用動態調査(JOLTS)、9月の米建設支出のほか、米FOMCの結果公表とパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの関心が高い。また、ブラジル中銀が政策金利を発表。フィリピン市場は休場となる。国内主要企業の決算発表では、トヨタ自動車<7203>、日本製鉄<5401>、アステラス製薬<4503>などがある。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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