STIフードHD Research Memo(1):コロナ禍と原材料高を克服し、再び成長軌道へ
■要約
1. セブン-イレブン向けをメインに、水産系のチルド惣菜やおにぎり具材を販売
STIフードホールディングス<2932>は、魚など水産資源を原材料に、食品や食材の生産・販売を行う食品メーカーである。主として大手コンビニエンスストアチェーンであるセブン-イレブン向けに、焼魚などチルド惣菜やサーモンフレークなどおにぎり具材を販売している。販売先別では、セブン-イレブングループ向けの売上高が86.0%を占め(2022年12月期)、内訳はチルド惣菜やおにぎり具材、冷凍食品、缶詰などの常温食品となっている。セブン-イレブン以外では、ECサイトなどで食品、外食向けに食材、食品スーパーには缶詰などを販売している。製品別では、水産原材料を使ったチルド惣菜や缶詰、レトルト製品など食品、及びおにぎりや弁当、パスタ、サラダ向け水産具材などの食材に分けられる。
2. 強みは技術力、一貫生産体制、フードロス削減、さらに調達力とセブン-イレブンの力
同社の強みは、量産やおいしさ、品質を追求した独自の技術力、高効率な一貫生産体制、フードロスの削減にある。なかでも技術力については、常にいくつもの新しい技術・製法を開発しており、その結果3年に1回程度、ガス置換パック技術をはじめとする大きな技術革新に成功し、高い参入障壁を築いてきた。一貫生産体制では、一貫生産と徹底した温度管理によって冷凍・解凍の回数を1回にまで削減、分業のため冷凍・解凍の回数が多くなる同業他社に大きな差をつけている。また、一貫生産によって素材を使い切ることで、徹底したフードロス対策ができるというメリットもある。ほかにも、祖業が商社のため海外を含め同社自ら検品や買付をしていることや、小売最大手のセブン-イレブンの力を利用できることも強みといえる。
3. 強い企業集団を作り上げるため、キャパシティ増強や海外への展開など重点施策を展開
同社は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)や原材料高という厳しい時を経て、原材料調達へのこだわり、良品製造の徹底、知的財産管理が事業への貢献を追求することでより強い企業集団を作り上げるという重点方針を再確認した。そのなかで、主力顧客であるセブン-イレブンとの取引拡大や新たな販路の拡大に注力していくことは当然だが、(1) 生産キャパシティ増強への取り組み、(2) (株)FRDジャパンの陸上養殖事業への参画、(3) 海外店舗への展開、(4) 北米進出への取り組み――の4つを重点施策とした。なかでも、生産キャパシティ増強への取り組みについては、(株)STIミヤギのデイリーラインをさらに増強する一方、関西エリアでの生産体制強化に関して、投資効率を重視して新工場の建設をいったん取り止め、既存工場のM&Aを検討することとなった。さらに、熟練度向上による既存各工場の生産効率アップも目指す。
4. 価格改定などを背景に業績は好調、2023年12月期は業績見通しを上回る可能性が高まる
2023年12月期第2四半期の業績は、売上高で前年同期比15.3%増の14,835百万円、営業利益で同53.1%増の1,035百万円と大幅増収増益となった。2022年から漸次進めた価格改定に加え、第2四半期に入って依然高水準とはいえ原材料コストが落ち着いてきたことが要因である。もちろん技術力を背景に価格改定とともにバリューを引き上げたことも奏功した。同社は2023年12月期業績を、売上高で前期比8.8%増の30,000百万円、営業利益で同20.9%増の1,800百万円と見込んでいる。第2四半期が会社想定を上回って推移したと見られるが、同社は期初の業績見通しを変えていない。特に同社の勢いが落ちているわけではなく、販管費が想定以上に増加するわけでもないため、通期業績が期初見通しを上回る可能性が高まっており、再成長につながることが期待される。
■Key Points
・水産資源を原材料に食品や食材を生産するメーカー。技術力や一貫生産などに強み
・コロナ禍と原材料高を経て、強い企業集団を作り上げるという重点方針を再確認
・価格改定などを背景に業績好調、2023年12月期は業績見通しを上回る可能性が高まる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SI》
提供:フィスコ