セグエ Research Memo(8):ネットワークセキュリティの新たなリーディングカンパニーを目指す(2)
■中長期の成長戦略
(2) 3つのビジネスの強化
VADビジネスの伸長、システムインテグレーションビジネスの強化、自社開発ビジネスの拡大を図るものであり、セグエグループ<3968>の今後の成長戦略の中心をなす取り組みと言える。
a) VADビジネスの伸長
「VADビジネスの伸長」としては、新規セキュリティ商材の継続的取り扱い、効率的な販売体制のさらなる強化、着実なサポートサービス(ストック収入)の積み上げを推進する。売上高目標としては、2021年12月期の52.6億円から、2024年12月期には83.5億円(年平均成長率16.7%)を掲げている。
目標達成に向けて、2022年12月期には、新たに5つのセキュリティ商材の取り扱いを開始し、着実にサポートサービス(ストック収入)を積み上げて、売上高はほぼ計画通りであった。2023年12月期には77.6億円を計画するが、第2四半期の進捗率は58.7%と順調である。DX需要が強く、納期改善によりITインフラ関連のプロダクト売上が伸びた。特に、主力製品の売上は、Juniper製品が前年同期比133%増、Ruckus製品も同57%増と好調であった。半導体不足が解消に向かい納期が改善したことにより、受注残高分の納品が進んだものであるが、受注高は引き続き堅調に推移している。下期には、需要増に合わせ、ロジスティックセンターを首都圏に開設する計画である。
b) システムインテグレーションビジネスの強化
「システムインテグレーションビジネスの強化」としては、コンサルタント・営業・技術人員の増強加速、西日本等のエリア開拓、クラウド・DX・AIなどの領域拡大、案件の大型化などを推進する。売上高目標としては、2021年12月期の61.6億円から、2024年12月期には75.9億円(年平均成長率7.2%)を掲げている。
2022年12月期は、「収益認識に関する会計基準」の適用及び付随する取組みにより、売上高に減少影響を受けつつも、ほぼ計画通りであった。2023年12月期には68.2億円を計画するが、第2四半期の進捗率は59.6%と順調である。上期は、後述の通り、ジェイズ・テクノロジーが始動し、東京・九州にDXセンターを開設した。下期には、タイのISS Resolutionにて、人材確保や2024年12月期以降に向けた新規ビジネスの検討を進める計画だ。
新たな取り組みとしては、2023年1月に、システムインテグレーション事業の活性化及び最適化を目的に、ジェイシーテクノロジーがジェイズ・コミュニケーションからシステムインテグレーション事業を承継するとともに、ジェイズ・テクノロジーへ商号変更し、新体制となって始動している。ジェイシーテクノロジーでは従来は若手エンジニアの採用・教育を行っていたが、ジェイズ・テクノロジーへの改編に伴い採用するエンジニアを若手から経験者中心にし、エンジニアのスキルアップを図り、先進 IT ソリューションと高度な技術力を顧客の希望に合わせて提供するサービスの展開を目指す。2023年4月には、顧客のDX推進を強力に支援するため、東京と福岡にDXセンターを開設し、DX推進をサポートする「情シス」業務トータルソリューションを実現するサービス「Kaetec」(カエテク)の提供を強化するとともに、DXセンターの稼働にあわせ、10名の技術者を採用している。今後、別の地域へのDXセンター増設も計画している。
c) 自社開発ビジネスの拡大
「自社開発ビジネスの拡大」としては、自治体情報システム強靭化案件の獲得、医療機関・金融機関・製造業等の民需展開、販売パートナーの拡充や協業加速、新シリーズやクラウドバージョンの開発、クラウドサービスの提供、開発部隊の増強を推進する。売上高目標としては、2021年12月期の6.0億円から、2024年12月期に13.8億円(年平均成長率31.6%)と、ビジネス別で最も高い成長率を掲げている。
目標達成に向けて、2022年12月期には、掲げた施策を着実に推進し、売上高は計画を超過した。2023年12月期は売上高11.1億円の計画に対し、第2四半期の進捗率は37.4%とやや低調であるが、売上総利益については6.7億円の計画に対し、第2四半期までの累計は3.17億円と約50%の進捗率である。官公庁大型案件の獲得や自治体向け引き合いは堅調に推移したが、セグエセキュリティで当初計画からの遅れが生じたことが影響している。下期は、RevoWorksクラウドバージョンのリリース、セグエセキュリティでの新規自社開発サービスの展開などによって、売上、売上総利益ともに計画達成を目指す。
新たな取り組みとしては、2022年11月に、より高度なセキュリティサービスの提供を目指して、ホワイトハッカー集団(サイバー攻撃などからユーザやシステムを守るセキュリティ人材)である(株)レオンテクノロジー代表 守井浩司氏との共同出資により、セグエセキュリティを設立した。同社は、マネージドセキュリティサービスやフォレンジック、セキュリティ対策のコンサルティング等、サイバーセキュリティに特化した事業を展開し、セキュリティソリューションの充実、セキュリティ技術者の育成加速を図っていくことを目的としている。まずは、人員募集(中途・新卒いずれも)と教育に取り組むほか、知名度を高めて案件獲得につなげられるための露出をセミナー中心に実施する計画である。2023年12月期上期には、高度IT・セキュリティ技術者の採用は順調に進み、企業へのコンサルティング提案活動を推進し、新規自社開発サービスは計画が遅延しつつも販売体制が整うなど、着実に成果を積み上げている。
また、同社では、より一層安全なクラウド利用環境の提供を目指し、RevoWorksのクラウドバージョンの開発を進めており、2023年冬のリリースを予定している。現在、多くの企業で各種クラウドサービスを利用したデータ活用頻度が高くなっており、業務上インターネットアクセスが必須となっているが、インターネットアクセスが起因のランサムウェアやマルウェア等による被害が増加している。RevoWorksクラウドバージョンでは、独自の技術によりクラウドアクセスとインターネットアクセスを論理的に分離することで、安全なクラウド利用環境を構築できるという。ユーザ利便性とコストパフォーマンスも追求するとしており、これまでの自治体からの需要だけでなく、民需(一般企業向け)への対応を目指しているものだ。ただ、2023年12月期においては開発コストが先行するため、一時的に売上総利益率の低下を見込んでいる。しかし、RevoWorksのように利益率が高い自社開発製品の販売が、同社の長期的な成長のカギを握ると弊社では考えている。
(3) 資本・業務提携など
「資本・業務提携」としては、先端技術・独自技術を有する企業との提携拡大やM&Aの実行を推進する。
2022年は、11月にセグエセキュリティ株式会社を共同出資により設立した他、12月には、タイでメンテナンス、サポートサービス事業をベースに製品販売、ソリューション事業を展開するISS Resolutionを子会社化した。同社としては初めての海外進出である。グローバル展開企業としてのポジショニング確立を目指し、ASEAN市場での事業展開を進めることに加え、対象会社の既存ビジネスの強化やセキュリティトレーニングなどの新規事業の構築にも取り組む。また、国内だけでは不足が予測されるIT人材確保の場が海外にも広がることになる。買収後、利益体質への転換が進んでおり、既存ビジネスの強化や新規ビジネスへの準備を進めている。
また、2023年5月には、秘密計算中心のデータセキュリティ技術、AI設計技術を有するEAGLYS(株)に追加出資を実施し、産学連携により社会的課題解決に取り組んでいる。同社の技術力向上と、大学からの優秀なエンジニア採用も目指している。同社では、今後も国内・国外企業を問わず、既存ビジネスの躍進に資するような、より規模の大きなM&Aに挑戦するとともに、先端技術・独自技術を有する企業との提携を拡大していく。
(4) 資本政策やSDGs
「IR・資本政策」としては、株主や投資家との対話機会を増やすほか、既存株主との間で同社株式の流動性を高めるための施策に関する対話を実施する。
「SDGsへの取り組み」としては、IT&セキュリティ人材の育成及び輩出、エンジニアトレーニングの顧客への提供、高付加価値な成果を上げる人材の育成、より働き甲斐のある仕事を実施できる環境の整備、AIなどの新しい技術や独自技術を有する企業への継続投資などを推進する。
同社は従来からSDGsについても積極的に対応している。SDGsは、国連サミットで採択された2030年までの国際目標であり、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されている。同社でも、IT及びセキュリティの企業グループとして、事業活動を通じて技術を守り、社会の発展にも不可欠なIT&セキュリティ人材の育成及び輩出を進め、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上に取り組んでいる。人材育成では、採用組織の強化、組織再編による環境整備、高度セキュリティ技術者組織の新設などグループ全体で取り組みを推進している。
また、働き甲斐のある環境づくりを目指し、オフィスの増床・整備、各拠点の整備、社内システムの増強、社内制度の見直しなどにも取り組んでいる。今後も、採用進捗・人員増加に伴い、オフィス増床を計画している。
近年、日本を含め世界的にESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと)が増加傾向にあることから、同社のこうした取り組みは大いに評価されると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《SO》
提供:フィスコ