サムティ Research Memo(1):2023年11月期上期は大幅な増収及び営業増益を実現
■要約
1. 会社概要
サムティ<3244>は、関西圏及び首都圏のみならず、全国主要都市に展開している総合不動産会社である。「不動産開発事業」(賃貸マンション※1やホテルの開発及び販売等)と「不動産賃貸事業」(賃貸マンションの保有等)のほか、「ホテル賃貸・運営事業」なども手掛けており、成長と安定のバランスの取れた事業構成や一気通貫型のビジネスモデルに特長がある。また、2015年にはJ-REIT事業※2へ進出し、さらなる事業拡大に向けて体制を整えると、ここ数年は展開エリアの拡大と積極投資により高い成長を続けてきた。
※1 本レポートで使用している「賃貸マンション」と「レジデンス」の文言は同義である。
※2 2015年3月に設立したサムティ・レジデンシャル投資法人<3459>(以下、SRR)を東証J-REITに上場させた。また、2021年11月にはホテル特化型REITであるサムティ・ジャパンホテル投資法人を設立し、2024年11月期以降の上場を目指している。
2021年1月に公表した中期経営計画「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」(以下、中期経営計画(アフターコロナ版))では、今後の環境変化を勘案し、「資産保有型」ビジネスへの転換や海外事業の強化、長期的視野でのホテル事業の取り組みにより持続的な成長を目指している。インフレ進行や日銀による金融政策の見直しなど、外部環境には不透明感があるものの、景気変動の影響を受けにくい賃貸マンションは堅調に推移し、今後に向けた戦略的投資(開発用地や収益不動産の取得)もハイペースで進捗している。また、ベトナムでの分譲住宅事業が本格的に立ち上がってきたうえ、ここ数年新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けてきたホテル賃貸・運営事業もインバウンドの回復とともに好転しており、業績面、戦略面ともに順調に進捗している。
なお、2023年1月に公表した不適切な会計処理(連結対象範囲の判断)に係る疑義については、特別調査委員会の調査により解消済みであり、過年度決算の修正には至らなかったものの、事態を招いたことを重く受け止め、内部統制やコーポレートガバナンスの一層の強化に取り組む方針である。
2. 2023年11月期上期の業績概要
2023年11月期上期の業績は、売上高が前年同期比80.2%増の65,282百万円、営業利益が同139.9%増の6,604百万円、経常利益が同64.4%増の3,278百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同21.3%減の1,311百万円と大幅な増収及び営業増益となった。積極的な物件販売により「不動産開発事業」が大きく伸びたほか、「海外事業」の本格化、及び「ホテル賃貸・運営事業」の好転などが増収に寄与した。また、重視する「インカムゲイン」※についても、「資産保有型」ビジネスへの転換に伴うグループ資産の拡大等により順調に伸ばすことができた。利益面でも、「不動産開発事業」の伸びや「海外事業」による貢献などにより大幅な営業増益となった。また、ここ数年コロナ禍の影響を受けてきた「ホテル賃貸・運営事業」についても、稼働率や客室単価の上昇などにより損益改善が進んできた。開発用地や収益不動産の取得を始め、グループ資産拡大に向けた戦略的投資はハイペースで進捗しており、開発パイプラインも順調に積み上げることができた。
※「不動産賃貸事業」「ホテル賃貸・運営事業」「不動産管理事業」の売上高を合計したもの。
3. 2023年11月期の業績予想
2023年11月期の業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比28.4%増の165,000百万円、営業利益を同27.8%増の18,000百万円、経常利益を同23.8%減の11,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同44.8%減の6,000百万円と、通期でも増収及び営業増益となり、実現すれば過去最高売上高、営業利益を更新する見通しである。引き続き「不動産開発事業」及び「海外事業」の拡大に加え、インバウンド需要の回復等に伴う「ホテル賃貸・運営事業」の好転継続が増収に大きく寄与する。利益面でも、「海外事業」の本格的な貢献や「ホテル賃貸・運営事業」の損益改善(黒字化)などにより営業増益を実現する想定となっている。
4. 中期経営計画「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」の概要
2021年1月に公表した5ヶ年の中期経営計画(アフターコロナ版)では、(1) 「資産保有型」ビジネスへの転換(インカムゲインの拡大)、(2) ホテルREIT設立に向けた取り組み、(3) 地方大都市圏における戦略的投資、(4) 海外事業での収益基盤の構築を基本方針に掲げており、5年間の投資計画は約7,500億円、最終年度(2025年11月期)の業績目標として売上高2,200億円水準、営業利益350億円以上、ROE15%水準、ROA7%水準、自己資本比率30%以上を目指している。特に、グループ資産(REITを含む)を1兆円規模にまで拡大するとともに、営業利益の50%をインカムゲイン(賃貸収入等)、15%を海外事業で構成する収益構造への転換を図る。
■Key Points
・2023年11月期上期は積極的な物件販売に加え、海外事業の拡大やホテル事業の好転により、大幅な増収及び営業増益を実現
・開発用地や収益不動産の取得など、グループ資産の拡大も順調に進捗
・2023年11月期の業績は、期初予想を据え置き、通期でも増収及び営業増益を見込む
・中期経営計画(アフターコロナ版)では、「資産保有型」ビジネスへの転換(インカムゲインの拡大)や海外事業の強化、長期的視野でのホテル事業の取り組みにより持続的な成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《AS》
提供:フィスコ