極東貿易 Research Memo(3):経営危機をバネに、経営の舵取りと企業構造を大きく転換(2)
■会社概要
3. 特長と強み
(1) 理系出身の営業職・技術営業職は7割以上
通常、商社の営業現場は文系出身者が多いとされているが、極東貿易<8093>では営業マンの6割以上を大学の理系出身者が占める。顧客へ納入した装置が原因不明の停止や故障になる度に海外メーカーに問い合わせるのでは時間がかかることから、導入・据付、運用・保守までエンジニアリング全般を同社営業マンが仕入れ先の海外メーカーに頼らず、顧客に対して自主的に技術サポートできるように、理系出身者の採用を重視してきた。さらに、同社では点検・保守メンテナンスを適時的確に対応すべく、専門子会社(日本システム工業(株))を設立して運用している。
同社では資源開発機器事業を展開しており、大学の地質工学や自然エネルギー資源の研究をしてきた学生を積極的に採用している。同事業の担当者は海外の採掘メーカーの技術者とともに海洋資源探査船に約3ヶ月間乗り込み、採掘装置の動作試験や立会試験まで関わっている。
(2) 顧客は大手企業が中心
同社はこれまで日本の基幹産業に深く関わってきたため、大手企業との取引が多い。同社創業以来、取引が継続している企業もあり、信頼関係とロイヤリティを得ている。欧米等の海外市場でも米国自動車Big3や独自動車メーカーとも取引がある。これは同業技術商社と比較しても優良な顧客構造になっている。その根拠として、中堅商社の課題である「貸し倒れ」が、同社ではほとんど発生していないことが挙げられる。
また、国内主力製鉄所には出張所(室蘭、東関東、知多、広畑、水島、大分)を配置して、細やかな営業サービスで差別化を図ってきた。製鋼の特定プロセス分野の装置を含めたプロセスソリューションの役割を同社が担っている。
(3) 「誠実さ」と「粘り強さ」で取引先から高い評価
大手企業から厚い信頼を得ている背景には、誠実さと真面目さが挙げられる。顧客との交渉シーンでも顧客から「この価格でお宅は商売になるの」と言われることもあるようだ。また、新商材・新規事業において困難があっても粘り強さを発揮する点も特長だ。その好例が「軽量ケーブル」である。2007年頃に航空電子営業部門が海外から持ち帰り、国内小型航空機向けに粘り強く提案とフォローを繰り返してきた。同時に2012年からラグジュアリーカー向けに提案営業を繰り返し、2016年に採用までこぎ着けた。そのような営業人材が多いことが技術商社にとっての強みである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
《SI》
提供:フィスコ