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サイバネット Research Memo(9):2026年12月期に売上高300億円、EBITDA38億円を目指す


■中期経営計画

1. 中期経営計画の進捗状況
サイバネットシステム<4312>は長期視点での企業価値向上を実現すべく、2022年2月に5ヶ年の中期経営計画(2022年12月期~2026年12月期)を発表した。コア技術であるシミュレーション技術に加えてIoT/AR/VR/AIなどの周辺技術も活用することで、モノづくりのDX支援を行うとともに、エネルギーや医療、スポーツ、環境・防災、金融分野などモノづくり以外の領域への事業展開を強化し、シミュレーション技術を通じて様々な社会課題の解決に貢献する企業として成長することを目指す。

2026年12月期の経営数値目標としては、売上高30,000百万円(2021年12月期比32.2%増)、EBITDA3,800百万円(同23.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,200百万円(同23.1%増)、ROE12.0%を設定した。営業利益ではなくEBITDAを数値目標としているのは、M&Aの活用を視野に入れているためだ。M&Aの対象としては国内外で規模は問わず、技術コンサルティングやエンジニアリングサービスを提供する企業をメインに、同社とは異なる顧客基盤を持つ代理店のほかソフトウェア開発企業なども対象としている。また、KPIとして自社開発製品・サービスの売上高比率を2021年12月期の24.2%から2026年12月期に40.0%に、海外売上高比率を23.3%から25.0%に引き上げていく。さらに、事業ポートフォリオの長期的な目標として(2030年頃)、自社開発製品・サービスの売上高比率50%、海外売上高比率40%、非製造業売上比率(単体)50%(2021年12月期実績28.6%)を目標に事業展開を進める方針だ。

初年度の2022年12月期の業績は計画を若干下回ったものの、KPIとする自社開発製品・サービス売上高比率は30.1%、海外売上高比率は23.5%とそれぞれ前期実績から上昇した。2023年12月期も第2四半期までは前述のとおり若干計画を下回るペースとなっているが、自社開発製品・サービスの売上高が順調に拡大しているほか、成長の源泉ともなる人材の採用・育成についても順調に進んでおり、今後は海外事業の拡大も含めて人材投資の効果が顕在化し、成長軌道に乗ってくるものと予想される。

2. 成長戦略
長期の企業価値向上に向けて、「トップラインの成長」「高水準の利益率」「積極的な株主還元」の3点を基本方針として取り組んでいく。「トップラインの成長」は人材投資やM&Aなどを活用しながら自社開発製品の強化、アジア事業の拡大、モノづくりのDX促進、SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用を進め、5年間で売上高30%成長を目指す。また、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら、EBITDAマージンを2022年12月期の10.1%から2026年12月期に12.7%に引き上げていく。株主還元策については、DOEで6.0%を目安とする安定配当を重視し、株価水準によっては自己株式の取得等も積極的に検討する方針である。なお、「トップラインの成長」については以下の4点を重点戦略として掲げている。

(1) 自社開発製品の強化
同社は販売代理店ビジネスのリスクが顕在化したこともあり、自社開発製品・サービスの売上構成比を高めることで、販売代理店ビジネスの喪失リスクへの対応と収益性向上を目指す。なかでも自社開発製品の売上目標としては、2022年12月期の38億円に対して2026年12月期は60億円と約1.5倍増を目指す。海外のソフトウェア製品開発子会社、並びに国内での開発体制を強化し、製品のラインナップ拡充と機能強化による差別化を推進するほか、M&Aの検討も継続的に進める。

海外子会社のうち、Maplesoftでは2022年末に大企業の顧客開拓に特化した専門チームを組織化した。今後は北米だけでなく日本、中国、ドイツなどでの顧客開拓に注力する方針だ。パートナーシップの拡大と合わせてOEM技術ライセンス供与を進め、2024年には新製品の投入も計画している。Sigmetrixは3次元公差解析ツールの機能強化とともに、グローバル展開を推進する。Noesisについては欧米や中国の顧客企業に対して汎用型最適設計支援ツール「Optimus」やエンジニアリングサービスを提供していくほか、新製品の投入により売上成長を目指す。同社の自社開発製品ではIoTソリューションとなるビッグデータ可視化ツールのほか、大腸内視鏡検査向けAI搭載画像診断支援ソフトウェアの成長が期待される。同ソフトウェアはオリンパスの営業活動に依存するが、日本のほか香港、インド、タイ、ベトナム、韓国で販売が可能であり、保険適用されれば売上が一気に伸びる可能性がある。

(2) アジア事業の拡大
日本の大手製造業向けにシミュレーション技術を提供してきた経験を生かして、アジア事業の拡大を進める。アジア向け売上高はSynopsys製品の売上がなくなった影響で2022年12月期に落ち込み、2023年12月期もエレクトロニクス業界の景況感悪化から第2四半期までは低調な推移となっている。ただ、アジアにおける製造業の成長ポテンシャルは高く、2024年以降は高成長路線に転じるものと弊社では予想している。主力のAnsys製品は機械系に加えて光学系製品の販売拡大が見込まれるほか、IoTソリューションを中心としたDX事業やITソリューションサービス事業も展開していくことで、アジア向け売上高を2022年12月期の21億円から2026年12月期は40億円へと拡大していく。

(3) モノづくりのDX推進など
同社のコア技術であるシミュレーション技術と最新の開発手法であるMBSEやIoT、AI、AR/VRなどの先進技術を用いてモノづくりのDX促進を支援していく。同社はシミュレーションと親和性の高いAIやデジタルツイン、ビッグデータ分析等の技術を有し、これらを組み合わせた付加価値の高いソリューションを提供できることが強みであり、今後も関連売上高の高成長が見込まれる。また、ITソリューションサービス事業では、サイバー攻撃の脅威に対抗する新規製品・ソリューションを拡充しながら成長を目指す。

(4) SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用
同社は脱炭素社会の実現や環境問題の解決、健康の維持などSDGsをテーマとした分野についても、同社が蓄積してきたシミュレーション技術やノウハウを活用し、事業活動を通じて貢献していく考えだ。

具体的な導入事例としては、風力発電装置の発電効率や安全性の向上を目的にシミュレーション技術を用いて解析、最適な設計を実現し、CO2排出量削減に貢献している。また、電気自動車の低コスト化を実現するためにインバータやモーターの小型化・高性能化に向けた開発工程の効率を高めるため、複数のパラメータを組み合わせてシミュレーションできるマルチフィジックス解析ツールが活用されている。

モノづくり以外の分野でも、ビッグデータ分析とシミュレーション技術を用いて、都市インフラの効率運営支援や金融のコンプライアンス支援などでの需要が見込まれるほか、ヘルスケアや建築、環境分野などシミュレーション技術を活用できる領域は幅広く、こうした需要を今後積極的に掘り起こすことで長期的な成長を実現する戦略だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YI》

 提供:フィスコ

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