セレンディップ Research Memo(2):事業承継のトータルソリューションカンパニー
■会社概要
1. 会社概要
セレンディップ・ホールディングス<7318>は、「100年企業の創造」というグループビジョンを掲げ、事業承継などの課題を持つ日本の中堅・中小製造業に経営革新をもたらすことを目的に、モノづくり事業、プロフェッショナル・ソリューション事業、インベストメント事業の3事業を展開している。モノづくり事業では事業承継を目的にM&Aを実施した企業の企業価値を引き上げ、利益成長という長期的な果実を得ている。プロフェッショナル・ソリューション事業では、事業承継などの経営課題を抱えた中小企業に対しプロ経営者やエンジニアなど派遣しており、インベストメント事業では投資先企業への経営関与を高め、同社のノウハウを活用して企業価値を向上した後に、売却してキャピタルゲインを獲得している。東京証券取引所の業種分類では輸送用機器となっているが、モノづくり事業のなかの自動車部品の売上構成比が高いため(2023年3月期は約83%)で、実態は経営人材の派遣や投資、M&Aといった手法によって事業承継のトータルソリューションを提供する、実業を伴うコンサルティング会社である。現在、モノづくり事業のプラットフォームに加え、プロフェッショナル・ソリューション事業とインベストメント事業のプラットフォームを確立しつつあり、利益成長に弾みをつけようとしているところである。
事業承継と長期成長による企業価値向上を目指すビジネスモデルを構築
2. 沿革
同社は、企業の成長に関わる経営支援を目的に2006年に設立され、当初はベンチャーキャピタルやIPO支援などベンチャー支援事業、事業再生・M&Aに関わる経営コンサルティング事業を行っていた。そのようななか、2013年に自ら経営を行うことを目的にパン製造販売会社を買収、経営コンサルティングのノウハウを駆使して業務標準化や新商品開発などを進めた結果、早期黒字化を達成し売却に至った。この経験を通じて、事業承継に関する課題を抱える企業を譲り受け、プロ経営者チームを派遣して経営執行を行うことで、円滑な事業承継と長期成長による企業価値向上を目指すビジネスモデルを構築した。現在は、事業承継という課題をトータルで解消するため、M&A実行基盤、経営管理基盤、モノづくり基盤といった3つの手法によるプラットフォームの確立を進めているところである。
日本のモノづくり産業における事業承継ニーズは強い
3. 事業承継に関する環境
日本のモノづくり産業は中堅・中小企業が多数を占め、サプライチェーンを支えるとともに多くの雇用を創出している。しかし、これらの中小企業オーナー経営者の高齢化に伴い、高い技術力・製品力がありながらも後継者不在により事業の継続が困難となり、多くの中小企業が廃業に至るという社会問題が顕在化している。また、承継に限らず、近代経営の複雑化・高度化に対応した経営管理体制が十分に構築されていない、少子高齢化に伴う労働力不足などによって経営資源を充分に確保できない、生産性が低く稼ぐ力が弱いといった課題を抱えた中堅・中小企業も数多く存在している。一方、日本の中堅・中小企業は高い技術力・製品力を有していることが多いため、製造現場のDXや省人化、経営人材の育成など経営の質を改善することによって、企業価値を飛躍的に向上させることも可能である。しかし、こうした中堅・中小企業による事業承継支援などのニーズに対して、国内のM&A実績やトータルソリューションなど支援側の体制が追い付いていないのが現状である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《YI》
提供:フィスコ