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東証P
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11:29 11/27
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「CDMO」本格離陸へ、バイオ医薬品を主戦場に水平分業で活躍の機熟す <株探トップ特集>


―革新的な創薬開発やグローバルな競争力強化に貢献、製薬企業のパートナーへ―

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は8月21日、エーザイ <4523> [東証P]と米バイオジェン<BIIB>が開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の承認を了承した。アルツハイマー病の進行を遅らせる世界初の治療薬で、早ければ年内にも市場に投入される見通しだ。

 「レカネマブ」はアルツハイマー病の分野で世界に先駆けて上市された治療薬だが、コロナワクチンや治療薬でその大部分を海外からの輸入に頼ったことから見てとれるように、かつて「製薬大国」と言われた日本は昔のことになりつつある。海外では研究開発に資源を集中する製薬会社や創薬ベンチャーと、製造を担う企業の「水平分業」が進んでいるのに対して、日本は出遅れていることがその要因の一つともされている。

 ただ、日本でもここ数年、CMO(医薬品製造受託企業)CDMO(医薬品製造開発受託企業)を巡る動きが活発になっており、政府も経済産業省が2021年2月にまとめた「バイオテクノロジーが拓く『第5次産業革命』」でバイオ医薬品などのCDMOの競争力強化などを打ち出している。成長分野だけに株式市場での注目度も今後更に増しそうだ。

●CDMOとは

 CDMOは、製薬会社向けに開発段階から製造を受託する企業のこと。既に承認された医薬品の製造を受託するだけではなく、有効成分となる原薬を効率的に生産するためのプロセスの開発や、投与に適した薬の形にする製剤化なども手掛けている。

 製薬産業は、以前は一つの製薬会社が創薬から臨床での治験、更には大量製造に向けたプロセス技術の開発、量産までを自社で行うことが多かったが、当然その間に巨額すぎる投資が必要となり、失敗すれば企業が一発で破綻するほどのリスクを抱えていた。

 そこで欧米企業を中心に、治験や量産を外部企業に委託する水平分業化により、リスクを分散する動きが進展。これが革新的な創薬やグローバルな競争力の強化につながっている。特に製剤化工程など治験薬の開発も担える点でCMOより事業範囲が広いCDMOは、いまや製薬会社にとってなくてはならないパートナーといえよう。

●バイオ医薬品分野が成長

 CDMOのなかでも、特に注目されているのが、バイオ医薬品の分野だ。経産省の資料によると、バイオ医薬品のCMO/CDMO市場は成長を続けており、今後10年間で年率8%程度の成長が見込まれるという試算もあるとしている。

 バイオ医薬品のようにより高度な専門性が求められるような分野では、より画期的なアイデアを持ったベンチャー製薬企業が開発の初期段階になるほど増える傾向にある。こうした企業の多くは資金力に乏しく、臨床試験を突破するかどうかわからない段階で製造設備に投資する余力はないため、アイデアを製品化する工程をCDMOに委託するケースが多い。また、大手製薬企業であっても、より革新的な医薬品を創り出すために、リソースを開発に傾ける企業が増えており、こうした面からもCDMOの存在感が増している。

●グローバルで存在感を増すCDMO

 海外の大手CDMOが大規模な設備投資により製造能力・技術を高め、事業規模を急拡大させる一方、出遅れが目立った日本企業だが、M&Aや積極的な設備投資でグローバルに活躍するCDMOも増えている。

 富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]は、11年に米メルク<MRK>からCMO2社を買収しCDMOに参入して以降、積極的にM&Aや設備投資を展開し、現在では世界有数のCDMOに数えられている。23年3月期のCDMO事業の売上高は1942億円に上り、当初掲げていた「24年度の売上高2000億円超」という目標を前倒しで達成する見通し。現在もデンマークや米ノースカロライナ州、富山県などで大型設備投資を行っているが、引き続き大規模な設備投資を行い、同事業の成長を加速させる方針だ。

 AGC <5201> [東証P]は、25年以上の実績を持ち、日米欧3極で展開するグローバルCDMO。合成医農薬CDMO、バイオCDMOを含むライフサイエンス事業を戦略事業の一つと位置付けており、22年12月期の売上高1472億円を、24年12月期には当初計画より1年前倒しで2000億円以上へ拡大することを目指している。

●CDMO事業への注力を強める企業

 シミックホールディングス <2309> [東証P]は、静岡県の製剤開発センターで医薬品の製剤化検討や治験薬製造を行うほか、国内4拠点(静岡、西根、富山、足利)及び海外2拠点(韓国、米国)にて商用生産を行い、22年9月期のCDMO事業の売上高は248億円(前の期比16.8%増)に上る。今年5月に大日本印刷 <7912> [東証P]と戦略的事業連携し、大日印の医薬原薬のプロセス開発・製造から、シミックの製剤開発・製造に至る一貫体制を確立しており、これにより更なる成長を図る方針だ。

 味の素 <2802> [東証P]は13年に米アルテア・テクノロジーズ社を買収して以降、CDMO事業を本格的にスタートさせている。同社では特に味の素グループの持つオリゴ核酸の技術をベースにした事業展開により近年成長を加速させており、CDMO事業の売上高は31年3月期には17年3月期の3.5倍にあたる1000億円規模に拡大させる見通しだ。

 日東電工 <6988> [東証P]は11年に米アビシア・バイオテクノロジー社を買収し核酸医薬品のCDMO事業に参入。その後、大規模な設備投資を行い同事業を拡大させ、核酸医薬に限定すれば、CDMOで世界大手となっている。24年3月期下期からはマサチューセッツ州の新工場が本格稼働を開始する予定で、同事業の更なる拡大が見込まれている。

 積水化学工業 <4204> [東証P]は近年、CDMO事業の拡大に取り組んでおり、5月に発表した中期経営計画でもM&Aを活用し事業拡大を図る分野として同事業を挙げている。今後は再生・遺伝子分野への進出を目指す。

 テルモ <4543> [東証P]は山口工場(山口県山口市)や富士宮工場(静岡県富士宮市)でCDMO事業を展開。同社では、CDMO事業の売上高を27年3月期に22年3月期の2倍強にする目標を掲げており、設備投資を積極化させる方針だ。

 タカラバイオ <4974> [東証P]は14年に滋賀県草津市に遺伝子・細胞プロセッシングセンターを建設し、 再生医療等製品や遺伝子治療薬のCDMOに本格参入。23年3月期の同事業の売上高は81億円だったが、中期経営計画では26年3月期に143億円を目指しており、受託メニューの充実などに力を入れている。

 このほか、22年5月に米バイオノバ・サイエンティフィック社を買収し抗体医薬品のCDMO事業に参入した旭化成 <3407> [東証P]や、17年に米ミナリス・リジェネレーティブ・メディスン社を買収し再生医療等製品のCDMO事業に本格参入し、その後もM&Aで事業拡大を図るレゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]、再生医療等製品のCDMO事業を手掛けるジャパン・ティッシュエンジニアリング <7774> [東証G]とその親会社の帝人 <3401> [東証P]などにも注目。また、6月27日に東証グロース市場に上場したクオリプス <4894> [東証G]も再生医療等製品のCDMO事業を展開しており、今後の成長が期待されている。

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