城南進研 Research Memo(1):教育ソリューション事業に注力し、2026年3月期に営業利益率10%を目指す
■要約
城南進学研究社<4720>は東京・神奈川を地盤とする総合教育ソリューション企業。大学受験の「城南予備校」から出発し、社会環境の変化に対応して小中学生や乳幼児へとサービス領域を拡大してきた。子会社では、保育園や学童保育の運営、社会人向け英語教育サービスなども展開している。一生を通じた一人ひとりの主体的な学びを支援し、たくましい知性としなやかな感性を育む能力開発のリーディングカンパニーを目指している。
1. 2023年3月期は経費削減を継続するも売上減が響き若干の営業赤字に
2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比4.9%減の5,945百万円、営業損失で32百万円(前期は78百万円の利益)となった。デジタル教材・ソリューション部門や幼少教育部門は堅調に推移したものの、主力の個別指導部門の売上高が高校生の減少並びに売上単価の低下により前期比20.3%減の1,352百万円と大きく落ち込んだことが減収要因となった。収益構造改革の断行を継続し、人件費や経費等の費用削減に努めたが、減収による利益減をカバーできず、営業利益は2期振りの損失計上となった。
2. 2024年3月期は2期振りの増収、黒字転換を見込む
2024年3月期の業績は売上高で前期比5.0%増の6,245百万円、営業利益で169百万円(前期は32百万円の損失)を計画している。売上高についてはデジタル教材・ソリューション部門を除くすべての教育サービスで生徒数を増やしていくほか、個別指導部門においては2期振りの増収を見込む。利益面では、教室当たり生徒数の増加に伴う固定費率の低下や経費削減を継続し、営業利益の黒字転換を目指す。個別指導部門においては、算数専門の「りんご塾※」の併設を進めた効果で、小学生が大きく増加するなど好転の兆しも見え始めており、顧客満足度の維持向上を図ることで生徒数を回復していく方針だ。また、デジタル教材・ソリューション部門は3年連続で参画した経済産業省の「未来の教室」実証事業が無くなることが減収要因となるが、オンライン学習システム「デキタス」のBtoB向けについては着実に拡大していく見通しだ。また、2023年4月に業務提携を発表した明光ネットワークジャパン<4668>とは、同社の持つ質の高い乳幼児教育ブランドと明光ネットワークジャパンの持つ教室運営ノウハウやFCノウハウを融合した事業展開を進めていく戦略だが、今回の業績計画には織り込んでいない。
※「りんご塾」は算数オリンピック対策に特化した専門塾。算数オリンピックとは、小学生以下の子どもを対象とするコンテストで、1992年より毎年開催されており、「日本数学オリンピック」参加選手の登竜門ともなっている、算数を共通語に思考力と独創性を競う大会。
3. 乳幼児向け複合型スクール「城南ブレインパーク」のFC展開を開始予定
同社は、2024年3月期からスタートする3ヶ年の中期経営計画を発表した。「学びの個別最適化と教室力の強化」「付加価値の高い幼少教育事業の新展開」「教育格差を是正する教育ソリューション事業の積極的展開」「攻めの収益構造改革」「理念経営を具現化する人財の育成」の5項目を基本戦略として取り組み、企業価値向上を目指していく方針だ。なかでも、教育ソリューション事業については幼児から高校生まで各種教育サービスを全国で提供していくというコンセプトのもとLTV戦略プロジェクトを新たに発足し、今後注力していく方針となっている。オンライン学習教材「デキタス」の導入を学校や学習塾、学童保育、スポーツクラブ等へ進めていくほか、「りんご塾」や「城南ブレインパーク※1」の全国FC展開、「くぼた式育児法※2」の保育園・幼稚園等への導入を推進していく。業績目標としては、2026年3月期に売上高6,780百万円、営業利益率10%を目指す。売上拡大に加えて付加価値の高いソリューション事業の成長、収益構造改革の継続により利益率の向上を図っていく。とりわけ、「城南ブレインパーク」は少子化の進行により学習塾や保育市場で顧客獲得競争が激化するなか、有力コンテンツとしてFC展開で拡大していく好機と見られ、今後の動向が注目される。
※1 育脳とSTEAM教育によって子どもたちの「たくましい知性」と「しなやかな感性」を伸ばし、これからの時代に必要な能力を開発する複合型の乳幼児向け教育スクールで、2025年3月期よりFC展開を開始する予定。
※2 くぼた式育児法とは、記憶力・思考力・判断力といった「考える力」に影響する重要な脳の領域である「前頭連合野」を0歳から徹底して鍛えることで、自発的に考え、行動し、問題解決能力を持った人へと成長させるための土台を築く育脳プログラム。
■Key Points
・2023年3月期は前期比4.9%の減収、収益構造改革の継続により若干の営業赤字にとどめる
・2024年3月期は主力事業の売上回復と経費削減効果により増収、黒字転換を目指す
・2026年3月期に営業利益率10%を目指す新中期経営計画を策定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ