プロパスト Research Memo(4):パターン化でデザイン性と低コストを両立
■賃貸開発事業
1. 事業概要
賃貸開発事業は、首都圏を中心に用地取得から中規模賃貸マンションの企画・建築・販売を行っており、期間としては2年程度の中期プロジェクトである。プロパスト<3236>は首都圏エリアを中心とした立地かつ最寄駅から徒歩10分圏内のマンション用地を取得し、40~100坪程度の土地に1棟15~30戸程度の中規模かつ中低層の賃貸マンションを建設する。そして、利便性の高い物件を一時的に自社保有し、同社のネットワークを駆使して空室率を最小限に抑制するとともに、優良なテナント付けを行うなかで賃貸業務を行っている。賃貸付け後は外部環境を勘案しながら、投資物件として売却時期を検討する。売却価格は、1棟で500~2,500百万円であるが、最近は1,000百万円以上の大型物件も複数売れており、平均単価も上昇している。都心の資産価値が高い優良物件に特化した戦略が奏功しているようだ。
賃貸開発事業の2023年5月期の売上高は13,202百万円(前期比14.5%増)、営業利益は2,903百万円(同17.9%増)と大幅な増収増益となった。売却物件数は前期と同じ15プロジェクトであったが、物件が大型化したことで増収となった。また、エリアの優位性すなわち中央区、千代田区、港区、渋谷区、新宿区など、超富裕層が好む場所に立地した物件であることが評価されて増益となった。この結果、同事業は、売上高で会社全体の66.0%、営業利益でも75.4%を占め、引き続き同社の稼ぎ頭となっている。また、営業利益率も22.0%の高水準で、同社の中では最も収益性が高い事業でもある。
売却先は、相続税対策として銀行借入によって物件を購入する首都圏及び地方の国内富裕層が多い。さらに、最近は円安効果もあり、再び海外投資家も増えつつあるようだ。投資家ニーズにマッチする物件を供給していることが、賃貸開発事業が好調の理由と言えるだろう。ただ、2023年5月期は前期に引き続き、国内の個人富裕層の買い意欲が極めて強かったことから、同社の想定以上の業績となったようだ。
2. 特長
分譲開発事業などで培った同社のデザイン力を生かし、コストを抑制しながら、ハイセンスな賃貸マンションを建築することで、最終的には投資家やファンド向けに売却を行う。中規模かつ中低層物件に特化することで、物件取得時以降の外部環境の変化や建築費用の上昇等の変動要因の影響を抑制する。
コンセプト重視の分譲開発事業とは違い、賃貸開発事業ではパターン化を行うことで低コストを実現している。外壁をコンクリートの打ちっぱなしにするなど、デザイン性を損なわない工夫もしている。また、分譲開発事業と同じく、ローンが付きやすいRC造にこだわって展開している。比較的近年にスタートした事業ではあるものの、今では戦略的に重要な位置付けとなっている。視覚的に訴求するような資料を作成し提案に使用しているが、建物や部屋のデザイン性を強調しながら、立地の良さや利回りも明記しており、仲介会社からも評判が良い。
3. 実績例
賃貸開発事業の最近の主な実績例は以下のとおりである。
(1) コンポジット千川(東京都豊島区長崎、2023年7月竣工)
(2) コンポジット目黒学芸大学(東京都目黒区目黒本町、2023年6月竣工)
(3) コンポジット南蒲田 THE CROSS(東京都大田区南蒲田、2023年5月竣工)
(4) ジェノヴィア鵜の木(東京都大田区鵜の木、2023年5月竣工)
(5) グランパセオ日本橋イースト(東京都中央区日本橋馬喰町、2023年5月竣工)
(6) グランジット文京湯島(東京都文京区湯島、2023年5月竣工)
(7) グランジット菊川(東京都江東区森下、2023年5月竣工)
(8) コンポジット戸越公園(東京都品川区豊町、2023年2月竣工)
(9) コンポジット清澄イースト(東京都江東区白河、2023年2月竣工)
(10) コンポジット目黒学芸大学 THE PARK(東京都目黒区目黒本町、2023年2月竣工)
(11) グランジット大手町(東京都千代田区内神田、2023年2月竣工)
(12) ガリシア両国II(東京都墨田区石原、2023年1月竣工)
(13) コンポジット清澄(東京都江東区清澄、2022年12月竣工)
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《YI》
提供:フィスコ