イチネンHD Research Memo(1):2023年3月期は期初計画を上回り営業利益は前期比2.8%増
■要約
イチネンホールディングス<9619>は自動車リース関連事業(自動車リース、自動車メンテナンス受託、燃料販売等)、ケミカル事業、パーキング事業、機械工具販売事業、合成樹脂事業等の幅広い事業を手掛けている。自動車関連が中心だが、それ以外にも事業が分散されていることから業績は比較的安定しており、利益の急変動が少ない企業であると言える。
1. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の業績は、売上高が127,822百万円(前期比5.9%増)、営業利益が8,861百万円(同2.8%増)、経常利益が9,102百万円(同4.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が5,923百万円(同4.9%増)となった。セグメント売上高は、合成樹脂以外は増収となった。合成樹脂も前期比では減収だが、計画比ではプラスとなった。セグメント利益は、ケミカル、機械工具販売、合成樹脂は減益となったが、主力の自動車リース関連とパーキングが大幅増益となり全体の営業増益に寄与した。この結果、営業利益は20期連続で増益を達成したが、事業が様々な分野に分散されている同社の事業モデルの良さが出た結果と言えるだろう。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の業績は、売上高が131,000百万円(前期比2.5%増)、営業利益が8,200百万円(同7.5%減)、経常利益が8,200百万円(同9.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が5,480百万円(同7.5%減)の予想となっている。主力の自動車リース関連が前期の反動により減収減益となる見込みであることから、全体では営業減益を見込んでいる。自動車リース関連以外は増収増益の予想となっている。しかし全体では、2024年3月期における各事業の前提をかなり保守的に見ている印象で、今後の状況によっては計画より上振れする可能性もありそうだ。
3. 中長期の成長戦略及び株主還元
ロシア・ウクライナ情勢や米中の覇権争いなど先行きは依然として不透明であるが、中長期的には今後も各事業分野を伸ばしていく方針で、M&Aも積極的に行う考えだ。社内に向けた長期経営数値目標(時期は明示していない)として、売上高2,000億円超、営業利益200億円超を掲げている。今後の外部環境(ロシア・ウクライナ情勢や原油価格の動向等)によっては計画の見直しもあり得るが、現時点ではこの目標は変えていない。株主還元においては、2021年3月期は年間40円、2022年3月期は同46円、2023年3月期も同50円の配当を行った。進行中の2024年3月期も年間50円(予想配当性向21.9%)を予定しているが、利益が上振れるようであれば、増配の余地もありそうだ。加えて、2023年3月期末を最後に「持株数に応じたクオカードの進呈」を取りやめたこともあり、これに替わる株主還元策として増配の可能性は高いと弊社では見ている。
■Key Points
・自動車リース関連事業を主力に様々な事業を展開、安定した収益力が特色
・2023年3月期は20期連続で営業増益を達成。2024年3月期は減益予想だが上振れの可能性も
・社内的な長期経営数値目標として、売上高2,000億円超、営業利益200億円超を掲げる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《YI》
提供:フィスコ