明日の株式相場に向けて=日銀YCC修正観測と止まらない円高
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比259円安の3万1943円と反落。前日に日経平均は6日ぶりに反発したものの上げ幅はわずかであり、TOPIXの方は下げ止まらなかった。きょうは両指数ともに軟調で下値模索が延々と続いている印象である。日経平均が終値で3万2000円台を割り込んだのは6月8日以来となる。
日本時間今晩9時半に発表が予定される6月の米消費者物価指数(CPI)に世界の耳目が集まっている。この結果によって何が変わるのかといえば、何も変わらない可能性も高いのだが、とにかくこのイベントを通過しないことには機関投資家はポジションがとりにくいということのようだ。もっとも、このCPIの内容が事前コンセンサスと比較して上下どちらに振れても、今月25~26日開催のFOMCでFRBが0.25%利上げを決めるのは、もはや既定路線としてマーケットには織り込まれている。
つまり、マーケットの関心は9月以降、年内残り3回予定されるFOMCであと1回の利上げが行われるのかどうかという点である。よく米株安の背景として“FRBの利上げ長期化を懸念”という文言が使われるが、長期化どころかゴールはもう目の前に見えていて、利上げは多くてあと1回というような時間軸にある。そういう意味では、今回の米CPIが天下分け目のビッグイベントとはいえない。年内のFRBの金融政策は、2つある選択肢のうちのどちらを引くかという段階の話で、そのどちらであっても相場の大勢トレンドにはさしたる影響はなさそうである。いうまでもなく、次の関門はFRBによる利下げシナリオだが、これも今の時点では気の早い話。来年以降の利下げのタイミングを、今晩発表のCPIから予測するというような芸当は、生成AIなら何らかの回答を捻り出せるかもしれないが、人間では無理である。
東京市場に目を向けると、今週末14日にはオプションSQ算出を控えており、きょうは俗に言う「SQ週の魔の水曜日」にあたる。しかし、前日の欧州株市場が全面高に買われ、欧州時間のリスクオンを引き継いで米国株市場でもNYダウが300ドルあまりの上昇をみせた。この流れを受けて東京市場でも朝方取引開始前は「さすがに今日は(日経平均が)上昇するだろう」という見方が市場関係者の間にも広がっていた。だが、その当たり前のリスクオンが回ってこないところに今の相場の弱さがある。
株価変調の背景は為替の円高が加速していることで、きょうは1ドル=140円台を割り込み、あっという間に139円台前半まで円が買い進まれた。円高にリンクした株売りプログラムの発動によって、日経平均の下げ幅は一時400円超に広がり、「魔の水曜日」が本領を垣間見せる場面もあった。その後は押し目買いや空売りの買い戻しが観測され下げ渋ったとはいえ、約1カ月ぶりに終値で3万2000円台を割り込んだ。
日本株についていえば、投資家の視線は既に今晩の米CPIを飛び越えて、日銀の次回会合(27~28日開催)に向かっている。日本では、イールドカーブ・コントロール(YCC)とマイナス金利という、2つの異常な金融政策を続けている。このうち、正常化に向けてまずは前者を取り払おうという段階にあるが、その時点で株式市場は激しい動揺を隠せない状況となった。仮にYCCを撤廃しても、日銀は世界で唯一のマイナス金利を導入している中央銀行というレッテルは貼られたままだ。足もと急速なドル安・円高進行が加速しているが、水準的には春先以降の過激な円安が一服した程度のレベルのはず。しかし、仮にマイナス金利を解除する時間軸に来たらYCCどころではない。皮肉にも今回の政府・日銀の為替介入思惑は幻のまま立ち消え、気がついたら円売り介入へと立場を変える近未来図が待っている可能性がある。
あすのスケジュールでは、国内で目立ったイベントは見当たらないが、午前中に20年物国債の入札が予定されている。なお、個別企業の決算ではセブン&アイ・ホールディングス<3382>、ファーストリテイリング<9983>の四半期決算発表が注目される。海外では韓国中銀の金融通貨委員会、6月の中国貿易統計、5月のユーロ圏鉱工業生産、週間の米新規失業保険申請件数、6月の米生産者物価指数(PPI)、6月の米財政収支など。このほか、ウォラーFRB理事の講演も予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS
日本時間今晩9時半に発表が予定される6月の米消費者物価指数(CPI)に世界の耳目が集まっている。この結果によって何が変わるのかといえば、何も変わらない可能性も高いのだが、とにかくこのイベントを通過しないことには機関投資家はポジションがとりにくいということのようだ。もっとも、このCPIの内容が事前コンセンサスと比較して上下どちらに振れても、今月25~26日開催のFOMCでFRBが0.25%利上げを決めるのは、もはや既定路線としてマーケットには織り込まれている。
つまり、マーケットの関心は9月以降、年内残り3回予定されるFOMCであと1回の利上げが行われるのかどうかという点である。よく米株安の背景として“FRBの利上げ長期化を懸念”という文言が使われるが、長期化どころかゴールはもう目の前に見えていて、利上げは多くてあと1回というような時間軸にある。そういう意味では、今回の米CPIが天下分け目のビッグイベントとはいえない。年内のFRBの金融政策は、2つある選択肢のうちのどちらを引くかという段階の話で、そのどちらであっても相場の大勢トレンドにはさしたる影響はなさそうである。いうまでもなく、次の関門はFRBによる利下げシナリオだが、これも今の時点では気の早い話。来年以降の利下げのタイミングを、今晩発表のCPIから予測するというような芸当は、生成AIなら何らかの回答を捻り出せるかもしれないが、人間では無理である。
東京市場に目を向けると、今週末14日にはオプションSQ算出を控えており、きょうは俗に言う「SQ週の魔の水曜日」にあたる。しかし、前日の欧州株市場が全面高に買われ、欧州時間のリスクオンを引き継いで米国株市場でもNYダウが300ドルあまりの上昇をみせた。この流れを受けて東京市場でも朝方取引開始前は「さすがに今日は(日経平均が)上昇するだろう」という見方が市場関係者の間にも広がっていた。だが、その当たり前のリスクオンが回ってこないところに今の相場の弱さがある。
株価変調の背景は為替の円高が加速していることで、きょうは1ドル=140円台を割り込み、あっという間に139円台前半まで円が買い進まれた。円高にリンクした株売りプログラムの発動によって、日経平均の下げ幅は一時400円超に広がり、「魔の水曜日」が本領を垣間見せる場面もあった。その後は押し目買いや空売りの買い戻しが観測され下げ渋ったとはいえ、約1カ月ぶりに終値で3万2000円台を割り込んだ。
日本株についていえば、投資家の視線は既に今晩の米CPIを飛び越えて、日銀の次回会合(27~28日開催)に向かっている。日本では、イールドカーブ・コントロール(YCC)とマイナス金利という、2つの異常な金融政策を続けている。このうち、正常化に向けてまずは前者を取り払おうという段階にあるが、その時点で株式市場は激しい動揺を隠せない状況となった。仮にYCCを撤廃しても、日銀は世界で唯一のマイナス金利を導入している中央銀行というレッテルは貼られたままだ。足もと急速なドル安・円高進行が加速しているが、水準的には春先以降の過激な円安が一服した程度のレベルのはず。しかし、仮にマイナス金利を解除する時間軸に来たらYCCどころではない。皮肉にも今回の政府・日銀の為替介入思惑は幻のまま立ち消え、気がついたら円売り介入へと立場を変える近未来図が待っている可能性がある。
あすのスケジュールでは、国内で目立ったイベントは見当たらないが、午前中に20年物国債の入札が予定されている。なお、個別企業の決算ではセブン&アイ・ホールディングス<3382>、ファーストリテイリング<9983>の四半期決算発表が注目される。海外では韓国中銀の金融通貨委員会、6月の中国貿易統計、5月のユーロ圏鉱工業生産、週間の米新規失業保険申請件数、6月の米生産者物価指数(PPI)、6月の米財政収支など。このほか、ウォラーFRB理事の講演も予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS