横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (40)「売買タイミングと銘柄選別の判断に使う株価指標はこれだ!」
横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)
◆市場全体の方向性は日経平均のEPSで確認
まず、EPSについてみていきましょう。「EPS(Earnings Per Share)」とは1株当たり純利益のことで、企業を評価する際に使われる指標の1つです。EPSは当期純利益を発行済み株式数で割ることで計算することができます。
個別企業においては、前期以前のEPSと当期のEPSを比較することで、企業が順調に成長しているのかを確認することができます。また、同業他社のEPSと比較すれば、数値が高い企業の方が収益力は高いという判断が可能です。このように、EPSからは個別企業の「稼ぐ力」、いわゆる成長性と収益力の2つを見ることができるのです。
個別の企業だけではなく、株式市場の方向性を見極めるのにもEPSは有効です。どのようにするのかというと、日経平均採用銘柄のEPS(以下、日経平均のEPS)で分析していくのです。日経平均のEPSですが、日本経済新聞社が公表する日経平均のPERを使って計算することが可能です。例えば、6月28日時点の日経平均株価の終値は3万3193円、PERは15.31倍です。EPSは「日経平均株価(3万3193円)÷PER(15.31倍)」で算出でき、28日の値は2168円となります。
日経平均のEPSの低下は、ざっくり言うと日本を代表する企業群の1株当たり純利益が低下していると捉えることができますので、株式市場の方向性としては下落しやすくなると見ることができます。反対に、日経平均のEPSの上昇は、日本企業の1株当たり純利益の増加を意味しますので、株式市場の方向性としては上昇しやすくなると考えられます。
今回の3月期決算発表の集中期間をみていくと、日経平均のEPSは初期段階では低下基調にあり、ゴールデンウイーク明けの5月10日に直近では最も低い値をつけています。しかし、その後、発表が進んでいくと上昇に転じ、6月に入ってからは高い水準で張り付いて推移しています。こうした状況を見ると、3万円という水準の是非はさておき、日経平均株価が上昇したのは当然といえば当然の流れだったのです。日本の株式市場の方向性を考える場合には、日経平均のEPSを見ることが分析に役立つといえるでしょう。なお、日経平均のEPSの推移については、私のYouTubeの「横山利香の株チャンネル」でも紹介していますので、是非ご覧になってください。
◆個別銘柄で高値掴みを避けるために
次に個別銘柄でどのようにEPSを見ていくのかを、FPパートナー <7388> [東証G]を例に見ていきましょう。
株探のトップページにある検索窓に「7388」を打ち込んで、FPパートナーのページを開いてみましょう。簡易的に推移を見る場合は、基本情報のページの中央辺りに「業績推移」の表があります。表の右から3番目に「1株益」と記載されています。これが個別銘柄のEPSですので、その推移を過去から現在に向けて確認していきます。この表では3期分しか確認できませんが、さらに長期の推移を知りたい場合は、銘柄欄の「決算」のタブをクリックします。さらに「今期の業績予想」の表の「業績推移」タブをクリックすると、無料会員の方は今期予想を含めて最大5期の「修正1株益=EPS」の数値をご覧いただけます(プレミアム会員の方であれば最大26期にわたる推移をご確認いただけます)。
2022年9月に上場したFPパートナーの場合、遡ることが可能なのは2017年11月期までとなります。同社の「2019.11」(2019年11月期)の修正1株益を見ると、「65.8」と記載されています。ここから最新のデータである「予2023.11」(2023年11月期予想)に向けて数字を追っていくと、2021年11月期以降、順調に増加している様子がわかります。
図1 FPパートナー 業績推移
では、株価はどのように推移しているのかを見てみましょう。銘柄欄の「チャート」のタブをクリックして多機能チャートを表示します。すると、上場以降、株価も順調に上昇していることがわかります。一般的に、業績に対して株価が割安、もしくはやや控えめに評価されている場合、EPSの増加とともに株価は上昇していきます。株価の動きを分析する際には、EPSの推移も確認してみてください。
図2 FPパートナー 株価チャート
どのタイミングで、そしてどの銘柄に投資をすればよいのかは、私たち個人投資家を悩ます永遠のテーマであるといえます。簡単な方法としては、日経平均株価のEPSを参考にすることで株式市場の方向性から売買タイミングを分析することができるようになるでしょう。さらに、個別銘柄のEPSを参考にすることで、どの銘柄に投資するのかを判断することができるようになるでしょう。
このように参考にする指標があるだけで、高値掴みやどこまで下がるのかといった不安も多少は遠ざけられることでしょう。ぜひ、皆さんもEPSを使いこなしてみてくださいね!
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株探ニュース