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「超高齢化」到来で待ったなし!「健康寿命延伸」関連が活躍の舞台へ <株探トップ特集>


―厚労省「健康日本21(第三次)」基本方針を公表、平均寿命との格差短縮に注力姿勢―

 国内の高齢者数が一段と増加している。内閣府が20日に発表した2023年版の「高齢社会白書」によると、22年10月1日時点での65歳以上の人口は3624万人となり、総人口の1億2495万人に占める割合(高齢化率)は29.0%となった。65~74歳は1687万人、75歳以上は1936万人で、70年には2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると予測されている。こうしたなか、健康上の問題で日常を制限されることなく生活できる期間である「健康寿命」の延伸が政府にとって重要な課題となっており、関連銘柄には目を配っておきたい。

●味の素はNTTと取り組む

 厚生労働省では、国民が主体的に取り組める新たな国民健康づくり対策として「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を展開しており、5月31日には「健康日本21(第三次)」を推進するうえでの基本方針を公表した。基本方針では、健康寿命(19年で男性72.68年、女性75.38年)を、平均寿命(男性81.41年、女性87.45年)の増加分よりも延ばすことを目標に、適正体重や睡眠時間など各種目標値を設定。今後も平均寿命の延伸が予想されるなか、平均寿命と健康寿命の差を短縮することで、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、医療費や介護給付費などの社会保障負担の軽減につなげる構えだ。

 健康に過ごす寿命をいかに延伸させるかは重要な社会課題となっており、健康産業の市場は今後一段と拡大することが見込まれ、関連企業にとって追い風となりそうだ。直近では味の素 <2802> [東証P]が東京大学と社会連携講座「栄養疫学・行動栄養学講座」を開設したほか、NTT <9432> [東証P]とはデジタルツインコンピューティングと食と健康を科学するアミノサイエンスなどを組み合わせた生活者のWell-being(心身ともに満たされた状態を表す概念)向上と健康寿命延伸の実現への取り組みを推進している。

 また、日本曹達 <4041> [東証P]はこのほど、ヘルスケア分野のスタートアップ企業を対象とする投資ファンド「JMTCヘルスケア投資事業有限責任組合」に1次募集出資者として参画。平均寿命と健康寿命の差を短縮するためには、疾患に対する診断・治療に加えて予防の重要性が増すとともに、罹患しても日常生活にできるだけ制限を受けずに生活していく取り組みが求められるが、同社はグループの保有技術を活用した材料開発での協業により、ヘルスケアスタートアップ企業の成長に貢献しつつ、中核技術の確立・高度化を図りたい考えだ。

 これ以外では、ユーグレナ <2931> [東証P]が栄養検査ベンチャーのユーリア(名古屋市西区)と栄養課題を広く解決する栄養分析技術の開発を推進しているほか、日本システム技術 <4323> [東証P]は3月に大阪公立大学大学院生活科学研究科と「メディカルビッグデータを活用したヘルスケア分野における研究推進」に関する連携協定を締結したと発表。ロート製薬 <4527> [東証P]とアシックス <7936> [東証P]は下北沢病院(東京都世田谷区)、足のモーションセンサーを開発・販売するORPHE(東京都渋谷区)と健康寿命及び歩行寿命の延伸実現に向けた取り組みを行っている。

●フレイル関連株にも注目

 高齢化が深刻化していることから、心身の活力減退を防ぐ「フレイル」対策の関連銘柄にも注目したい。フレイルとは、frailty(虚弱、老衰、脆弱など)が語源で、加齢に伴って心身が衰え、ストレスに対する回復力が低下した状態を表す。要介護状態に至る前段階と位置付けられ、身体的脆弱性のみならず精神心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいとされる。

 JMDC <4483> [東証P]は、物流最適化や需要予測、フレイル検知や教育など、基幹産業を中心とした幅広い分野で、一気通貫型の高付加価値な人工知能(AI)ソリューションを提供している。4月には中部電力 <9502> [東証P]が開始した電力スマートメーターの電力使用実績データを活用した国内初となる自治体向けのフレイル検知サービス「eフレイルナビ」に、特許を所有する「電力データ解析によるフレイル検知AI技術」を提供。この技術は、電力データから外出回数や睡眠情報、活動量などの情報を抽出し、あらゆる生活習慣に関するパターンを大量に学習することで、高齢者のフレイル状態を検知できるという。

 FUJI <6134> [東証P]は愛知県武豊町と連携し、6月から独居高齢者を対象とした生活行動の見守り、迷い人の可能性検知の効果測定を目的とする実証試験をスタート。自宅内での生活行動をデータ化し、小さな変化を捉えることで早期のフレイル検知と予防的介入につなげ、自宅での自立した生活維持をサポートする。

 フレイルを予防するためには、加齢による筋肉・筋力の衰えを最小限にとどめることがカギを握ることから、ルネサンス <2378> [東証P]、セントラルスポーツ <4801> [東証P]、カーブスホールディングス <7085> [東証P]、東祥 <8920> [東証S]などにも商機がありそうだ。

●見逃せないPHR関連株

 個人の健康・医療データを意味するPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の関連銘柄からも目が離せない。PHRとは、生涯にわたる個人の保健医療情報(健診・検診情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果など診療関連情報、個人が自ら日々測定するバイタルなど)のこと。「生涯型電子カルテ」ともいわれ、健康増進や生活習慣の改善を実現するための活用が進められている。

 7月10日には「PHRサービス事業協会」が設立される予定で、シミックホールディングス <2309> [東証P]、Welby <4438> [東証G]、塩野義製薬 <4507> [東証P]、エーザイ <4523> [東証P]、テルモ <4543> [東証P]、エムティーアイ <9438> [東証P]など15社が参画する見通し。同協会は多様なPHR関連の商品・サービスを提供する事業者が主導する国内初のPHRサービス事業者団体で、「多様なステークホルダー間の協調を促進し、PHRサービス産業の発展を通じて、国民の健康寿命の延伸や豊かで幸福な生活に貢献すること」が主な目的だ。

 このほかの関連銘柄としては、グループ会社がヘルスケアサポート事業を手掛ける総医研ホールディングス <2385> [東証G]、国内最大級の量と質を誇る診療データベースを持つメディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]、自社開発の健康管理システム「バリューカフェテリアシステム」を利用して各種健康管理サービスをワンストップで提供するバリューHR <6078> [東証P]、子会社がクラウド型健康管理サービスを展開するメドピア <6095> [東証P]、カナダ企業が開発した非接触バイタル計測ソリューションの販売を開始した理経 <8226> [東証S]などが挙げられる。

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