ソフト99 Research Memo(5):ファインケミカル事業は海外向け仕入販売が伸長
■ソフト99コーポレーション<4464>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) ファインケミカル事業
ファインケミカル事業の業績は、売上高が前期比4.5%増の14,738百万円、営業利益が同22.0%減の1,724百万円となった。売上高は8期連続の増収となったものの、営業利益は4期ぶりの減益に転じた。売上総利益率が前期の47.3%から42.7%と4.7ポイント低下したことが減益要因となった。海外向け仕入販売商品の急増による販売ミックスの変化で3.7ポイント、原材料価格の上昇による影響で0.9ポイントの利益率低下要因となった。
売上高の内訳を見ると、国内一般消費者向け販売(自動車分野)は総じて低調に推移した。コロナ禍が収束に向かうなかで行動規制の緩和とともに外出機会が増え、車を手入れする機会が減少したことが背景にある。分野別では、ボディケア製品が前期比3.4%減、ガラスケア製品が同2.5%減、リペアグッズが同0.8%減となった。ただ、コロナ禍前の2020年3月期と比べて、すべてのカテゴリーで売上水準が上回っている点は評価できる。新製品の販売が好調だったこともあり、既存の得意先での売り場獲得が進んだことによるもので、今後もヒット商品を開発、投入していくことで着実な成長を目指す。
業務用製品販売(自動車・産業分野)は前期比9.5%増と3期連続で増収となった。新車向けについて上期は低調だったものの、下期に入って販売台数が回復傾向となってきたことや、高価格帯の高機能製品の販売比率が上昇したこともあり、OEM製品、自社ブランド品ともに増収となった。中古車向けについても、自社ブランド品の価格改定効果や高機能・高価格帯製品の比率が上昇したことにより増収となった。また、家庭用製品販売(生活分野)は前期比14.4%減と2期連続で減収となった。主力のメガネケア製品が巣ごもり需要の一巡により減少したことが要因だ。ただ、コロナ禍で販売ロケーションが拡大したことにより、2020年3月期の売上と比較すると1.7倍弱の水準となっている。
海外市場向け販売(自動車分野)は前期比66.0%増と大幅増となった。このうち自社製品は現地語パッケージの推進や仕向け地専売品の拡充により、同15.5%増と順調に増加した。仕入販売については欧州向けを中心に同134.9%増と大幅増となった。主な商材はエンジンオイルやオイルフィルタ、ラジエータ用不凍液などで、現地代理店の要望に応じて国内メーカーから仕入れて販売しているため、利益への貢献は軽微である。地域別で見ると、中国向けはゼロコロナ政策の終了による経済活動再開や、販路別の販売促進活動を強化したこともあり、ガラスケア製品を中心に好調に推移した。東アジアや東南アジアについても増収となった一方で、欧州についてはウクライナ紛争長期化の影響もあって自社製品の販売は減少した。その他の地域では、ブラジルが業務用関連製品の新規開拓もあって増収となった。
TPMS(自動車分野)の売上高は前期比25.9%減となった。下期以降はOEM製品の出荷が増加したことで前年同期並みの水準で推移したものの、一部トラックメーカーの出荷停止に伴う新車販売向け製品の落ち込みをカバーしきれず、減収となった。
電子機器・ソフトウェア開発(産業分野)は前期比11.1%増となった。遠隔監視システム等で使用されている3Gの無線通信サービスが2026年3月末に終了することが決まっており、3Gから4G対応の通信システムへの切り替えのための受注が好調に推移した。上期までは半導体不足により製品出荷が遅れていたが、下期以降は部材の調達状況が改善し、増収につながった。なお、その他売上が222百万円のマイナス計上となっているが、これは季節商材に関する販売店からの在庫返品分によるものである。
(2) ポーラスマテリアル事業
ポーラスマテリアル事業の業績は、売上高が前期比11.7%増の8,554百万円、営業利益が同5.7%減の1,042百万円となった。売上高は3期連続で過去最高を更新したものの、営業利益は2期ぶりに減益に転じた。売上総利益率が前期の34.9%から31.3%と3.6ポイント低下したことが要因だ。エネルギー価格の高騰や原材料の上昇に加えて、2022年秋に新工場が稼働したことに伴い、減価償却費が46百万円増加したことが利益率の低下要因となった。
売上高の内訳を見ると、産業資材部門は前期比13.0%増の6,790百万円と9期連続の増収、過去最高を更新した。このうち、国内向けは同6.5%増となった。主力の半導体製造用途分野で一部在庫調整が発生したものの、リチウムイオン電池の材料となる電解銅箔の製造装置(チタン製ドラム)向け砥石の販売が伸長したほか、医療分野における手術向け各種製品の販売好調によりカバーした。一方、海外向けは同19.7%増と2ケタ成長を持続した。半導体製造工程で用いられる洗浄材の販売が台湾や韓国、米国の大手半導体メーカー向けに増加したほか、アジアの中堅半導体メーカー向けの販売も伸長した。なお、海外向けは円建て取引となっているため、円安による直接的な影響はなかったものの、ドルベースでの価格は低下し、競合の米系企業に対する価格優位性が出たことも好調を持続した一因と考えられる。
生活資材は前期比7.0%増の1,762百万円と3期連続で増収となった。国内向けについては、自動車用製品が低調だったものの、家庭用製品の販売がメディアに取り上げられたこともあって好調に推移したほか、スポーツ向け製品もコロナ禍前の水準まで回復し同8.1%増と2期ぶりに増収に転じた。海外向けは、主力仕向け地先である米国向けが減少したものの、インドネシアや韓国向けの好調でカバーし同5.6%増となった。
(3) サービス事業
サービス事業の業績は、売上高が前期比0.5%増の5,455百万円、営業利益が同13.0%増の226百万円となった。売上高は微増にとどまったものの、売上構成費の変化による売上総利益率の上昇(前期比0.3ポイント上昇)や、販管費率の低下(同0.2ポイント低下)が増益要因となった。
事業別の売上動向を見ると、自動車整備・鈑金事業は入庫台数が低調だったものの、部品供給が一時的に回復したことで、出庫台数が増加したほか修理単価の上昇が続いたこと、プロテクションフィルムやボディコーティングの施工・物販が順調に伸びたことで前期比5.3%増となった。自動車教習所事業は、職業用免許の教習が好調に推移したものの、学生による普通免許の取得ニーズが一段落したことにより同1.5%減となった。生活用品企画販売事業については、コロナ特需の反動減が続き同4.2%減となった。
(4) 不動産関連事業
不動産関連事業の業績は、売上高が前期比14.0%増の1,422百万円、営業利益が同7.8%増の251百万円と増収増益が続き、コロナ禍前の収益水準まで回復した。
事業別の売上動向を見ると、温浴事業は前期比24.4%増と2ケタ増収となった。通常の営業時間でのサービス提供が可能となったことで、温浴施設への来場者数が回復したことが増収要因となった。また、不動産賃貸事業は保有物件で一部事務所の退去が発生した影響で同3.2%減となった。また、介護予防支援事業はコロナ禍からの回復基調にあるものの、高齢者の感染症に対する警戒感が依然強く、利用者数の減少が続いたことで同5.4%減となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
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