テクマト Research Memo(1):2024年3月期は情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業が業績をけん引
■要約
テクマトリックス<3762>は、情報基盤事業とアプリケーション・サービス事業、医療システム事業を展開する。情報基盤事業では、独自の“目利き力”により、北米を中心に高い技術力、競争力、成長力を持つネットワーク及びセキュリティ関連の製品を見出し、製品販売に留まらずシステム構築、保守・サポート、運用・監視サービスまでを含めたワンストップ・ソリューションサービスを提供している。また、アプリケーション・サービス事業では、CRM、ソフトウェア品質保証、ビジネスソリューション及び教育の4つの分野でソリューションサービスを展開し、医療システム事業では、2022年2月に子会社化した旧PSP(株)と旧(株)NOBORIを同年4月に統合して生まれた新生PSP(株)のPACS※が主力製品・サービスとなっている。
※PACS(Picture Archiving and Communication Systems):MRIやCT、超音波診断装置、内視鏡、PET等の医療検査機器で撮影された画像データを受信、データベースへ保存し、端末に表示するシステム。旧PSPはオンプレミス製品の大手で、旧NOBORIはクラウドサービスの最大手となる。ともに導入施設数は約1,100施設で、統合後の稼働施設数ベースでは国内シェアは約22%と第2位である。
1. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の連結業績は、売上収益で前期比25.8%増の45,950百万円、営業利益で同36.5%増の5,098百万円といずれも過去最高を大幅に更新した。売上収益はクラウド型セキュリティ対策製品の旺盛な需要を背景に、情報基盤事業が前期比18.6%増と好調を持続したほか、医療システム事業も旧PSPの事業が加わったことで同104.9%増と大幅増となり、全体収益をけん引した。利益面では、円安の影響や人件費増、案件の大型化による採算性低下により情報基盤事業が同2.3%増と伸び悩んだほか、アプリケーション・サービス事業も不採算案件の影響(2023年3月期第3四半期で収束)や教育分野で先行投資による損失が続いたものの、医療システム事業が同173.8%増と急増し、全体の利益を押し上げた。なお、受注高は同36.6%増の58,427百万円、期末受注残高は前期末比31.2%増の52,409百万円となり、それぞれ過去最高を更新した。
2. 2024年3月期業績見通し
2024年3月期の連結業績は売上収益で前期比7.7%増の49,500百万円、営業利益で同4.0%増の5,300百万円と増収増益が続く見通し。医療システム事業において、旧PSP製品のクラウドシフトが進むことで一時的な減益を見込んでいるが、情報基盤事業とアプリケーション・サービス事業の収益拡大でカバーする。セグメント別の営業利益増減額で見ると、医療システム事業で同613百万円の減益を見込んでいるのに対して、情報基盤事業は豊富な受注残と情報セキュリティ対策への旺盛な需要を背景に同275百万円の増益、アプリケーション・サービス事業はサブスクリプション課金の積み上げに加えて、ビジネスソリューション分野で前期発生した不採算案件がなくなること、教育分野の赤字縮小が見込まれることなどにより同541百万円の増益を見込んでいる。全体的には保守的な印象であり、市場環境が今後大きく変化するようなことがなければ上振れ余地があると弊社では見ている。
3. 中期経営計画「BEYOND THE NEW NORMAL」の進捗について
2024年3月期までの3ヶ年の中期経営計画では当初、2024年3月期に売上収益で40,000百万円、営業利益で5,000百万円を目標に掲げていたが、情報基盤事業の売上収益が想定以上のペースで拡大していること、旧PSPを子会社化したことによる医療システム事業の拡大によって、売上収益・営業利益ともに上振れて着地する見込みとなった。重点施策に掲げていたテーマのうち、「海外市場での事業・拡大」については新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)ということもあって思うように進まなかったが、「取扱製品の拡大・新規サービスの立ち上げ」「サービス化の加速」「多様なアライアンス・M&A(既存事業の拡充と新規事業の創出)」などはおおむね順調に進んだものと評価される。医療システム事業におけるクラウドシフトの影響で一時的に業績が伸び悩む可能性はあるものの、各事業における成長の芽は順調に育ってきており、2025年3月期以降も安定した収益成長が続くものと予想される。
■Key Points
・2023年3月期は医療システム事業のM&A効果により過去最高業績を大きく更新
・2024年3月期は情報基盤事業の拡大とアプリケーション・サービス事業の収益改善により増収増益が続く
・中期経営計画の重点施策はおおむね順調に進捗、最終年度となる2024年3月期業績も当初目標から上振れて着地する見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ