ブランディング Research Memo(7):短期的な影響にとどまると見られる
■ブランディングテクノロジー<7067>の業績動向
3. 業績未達の要因と対策
ブランド事業のセグメント利益の減少及び大型プロジェクトの減額は、2023年3月期下期実績及び2024年3月期予想に影響を与えているが、詳細及び要因分析と対策は次のとおりである。
ブランド事業のセグメント利益が2022年3月期の334百万円から283百万円へと減少したが、要因はグループ内オフショア関連事業への支払いが円安の影響で増加したこと(連結損益への影響はない)もあるが、主としてサービス提供部門の人員増強に向けて採用費や人件費など原価及び販管費を先行的に増加させたものの、期待した成果を上げることができなかったことにある。当初スポット・ブランディング支援で単価1,900千円、380案件、売上総利益率42%を想定していたが、実績が単価1,922千円、320案件、売上総利益率42%と、特に案件数が伸び悩んだのである。これに対し、安定的したスポット受注・納品及び利益の確保に向けて、営業体制の再構築、営業人員の稼働効率の最適化、マーケティング活動による見込み顧客創出の強化、業界特化ノウハウやテンプレートを活用したサービス提供による品質と効率性の両立――といった施策を既に実行済みである。
同社とともに成長し、デジタルマーケティング事業の中で唯一の大型プロジェクト(恒常予算で月額3,000万以上)となった3顧客から成る特定顧客群が、広告運用体制をインハウス化したことにより、第4四半期以降同社との取引を大幅に減額することになった。これによる業績への影響は、売上総利益率が非常に低いため利益への影響は小さいが、主に2023年3月期第4四半期と2024年3月期予想の売上高に相当の規模で現れることになった。対策として、今後、大型プロジェクトを獲得せず、本来の中堅・中小企業へのサービス提供に集中する考えである。
医療・美容外科向けマーケティングリサーチ支援を開始
4. 提携・新サービス
2023年3月期は、新サービス「マーケティングイネーブルメント※β版」及びシンフォニカルの設立と、「住宅業界応援プロジェクト」、品川美容外科グループのデジタルマーケティング支援など、将来の成長を見据えた提携やサービス開発を加速させた。なお、2024年3月期に入った2023年5月、地方自治体のデジタルマーケティング推進を目的に設立された一般社団法人公民連携推進機構に加盟した。
※イネーブルメント(Enablement):強化・改善のための取り組み。マーケティングイネーブルは、マーケティングの強化・改善への取り組みを指す。
(1) 「マーケティングイネーブルメントβ版」のリリース
2022年7月、新サービスとして「マーケティングイネーブルメントβ版」をリリースした。CMOなどマーケティング責任者の育成に課題を抱える企業向けに、教育プログラムをベースに未来のCMO人材を育成するコンサルティングサービスである。コンサルタントがメンターとなって未来のCMOと伴走しながら学習し、未来のCMOが自ら走り出せるような状態を作り出す。顧客にとって未来のCMOを育成できるサービスだが、必然的に同社との間口が広がりつながりも強まる仕組みとなっている。
(2) シンフォニカルの設立
2022年10月に、子会社のシンフォニカルを設立し、医療機関・医療関連ビジネスにおけるブランディング及びデジタルシフトに関する事業をシンフォニカルに移管した。歯科・医療業界に特化した専門ブランドを構築することで顧客に選ばれやすい環境を作ると同時に、医療専門のフロント人材を採用・育成することで専門性を高め競争力を強化する。また、経営責任の明確化を図るとともに、意思決定の迅速化、機動的な組織運営、経営資源の選択と集中の実現を目指す。なお、歯科・医療業界が特に専門性が高い分野のため分社化したのであって、他分野での分社化は当面検討しない方針だ。
(3) 「住宅業界応援プロジェクト」のリリース
2022年10月、新サービスとして「住宅業界応援プロジェクト」をリリースした。1社契約だと数100万円~数1,000万円かかる有名タレントとの広告掲載契約を同社が行い、利用企業を全国各エリア1業種1社に絞ることで、1社当たりの契約料金を150万円程度に抑える。これにより、中小・地方企業でも訴求効果の高い有名タレントを自社の広告に起用でき、ブランド力を強化できる。現状では不動産や工務店、住宅メーカーなどの住宅業界に限定して展開しており、公式アンバサダーである竹原慎二氏(元WBA世界ミドル級チャンピオン)の肖像を、顧客のWebサイトや広告・宣伝ツール、営業用資料など幅広い範囲で活用している。
(4) 品川美容外科のデジタルマーケティングを支援
2023年2月に品川美容外科、品川スキンクリニックおよび品川近視クリニックを運営する医療法人社団翔友会と資本業務提携を行うことを決議した。品川美容外科および品川スキンクリニックは、開院から30年以上で全国に39院を展開し、症例数は業界屈指の1,300万件以上という実績を誇る。品川近視クリニックは、全国に5院を展開、レーシック132万症例以上、ICL(眼内コンタクトレンズ)45,000症例以上の実績を持つ視力回復治療専門のクリニックである。同社社長である木村裕紀氏が所有する同社株式の一部を、翔友会理事長である綿引一氏に譲渡して安定株主化を図る一方、同社が品川美容外科などに対しデジタルマーケティングによる全国規模の集患支援を実施するとともに、施策データを蓄積することで医療業界向けノウハウのさらなるアップデートを行い、デジタルマーケティングに関するコンテンツの開発やセミナーの開催につなげていく計画である。また、得意の歯科医院以外の医療領域における事業展開や自費診療獲得の支援強化も進めていく考えである。
(5) 「健康経営優良法人2023」認定
2023年3月、経済産業省が制度設計し日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。ウェルビーイング(心身の幸福)を推進し、働きがいのある職場環境を創るために、スタッフの健康を経営的な視点でとらえ職場環境を戦略的に整備してきたことが評価されたようだ。今後は、スタッフが心身ともに健康で、生産性が高く働きがいのある会社になることで、グループ各社、スタッフのブランドを研鑽できる環境を創り、グループミッションである「ブランドを軸に中小・地方企業様のデジタルシフトを担う」を体現できるスタッフを増やしていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SI》
提供:フィスコ