アジア投資 Research Memo(5):2024年3月期は減収ながら株式売却益の改善等により黒字転換を見込む
■業績見通し
1. 2024年3月期の業績予想
日本アジア投資<8518>は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2024年3月期については、ある一定の前提をもとに策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、2024年3月期については、営業収益を前期比23.8%減の2,300百万円、営業利益を200百万円(前期は185百万円の損失)、経常利益を120百万円(同224百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益を120百万円(同269百万円の損失)と減収ながら株式売却益の改善等により、黒字転換を見込んでいる。
営業収益は、株式売却高の減少やプロジェクト売却益の減少により減収となる。一方、損益面で黒字回復するのは、1) 前期業績の足を引っ張った株式売却損の解消をはじめ、売却銘柄の利益率が高まる見通しであること、2) 黒字化が遅れているプロジェクトの収益改善を見込んでいることが主因である。なお、評価損や引当金繰入額については保守的に合計430百万円(前期は合計304百万円)と前期を上回る水準を見込んでおり、そのうえで黒字化を実現する格好となっている。また、第3四半期までは赤字となり、利益の大半は第3四半期及び第4四半期に発生する想定としている。
2. 弊社アナリストの見方
引き続き、不確実性が高まっている社会・経済情勢をはじめ、不安定な株式市場の動きには十分に注意が必要であるものの、前期の利益を圧迫した株式売却損がなくなる見込みであることやプロジェクトの収益改善を前提とすれば、黒字転換はもちろん、同社の業績見込み値も十分に視野に入ってくると弊社では見ている。さらには、保守的な金額を見込んでいる評価損や引当金繰入額についても、結果的に想定以下に収まることで、利益の上振れ要因となる可能性にも注意が必要である。注目すべきは、中期経営計画の最終年度として、いかに今後に向けた総仕上げをしていくのかにある。後述のとおり、数値計画は大きく下振れる見通しであるが、フィナンシャル投資資産を売却した資金で、プロジェクト投資と戦略投資を積み上げる資産の入れ替え、事業の進捗に遅れが見られるプロジェクトや戦略投資先へのハンズオン支援など、来期以降の収益の拡大に向けた活動にも注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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提供:フィスコ