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3479 ティーケーピー

東証G
1,248円
前日比
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単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
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時価総額 529億円
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TKP Research Memo(8):貸会議室事業及び宿泊事業を2本柱として、本格的に成長軌道に回帰させていく計画


■新中期経営計画の公表

1. 基本方針
ティーケーピー<3479>は、リージャス事業の売却に踏み切ったことや貸会議室・宿泊需要の回復が進んできたこと、仕入れ環境も追い風に向かっていることを踏まえ、アフターコロナを見据えた新中期経営計画(3ヶ年)を公表した。1) 貸会議室の床面積を積極拡大しながら周辺事業を取り込み、シェア拡大と対象市場の拡張を図る、2) 経営効率の最適化を推進し、過去最高の利益を達成する、3) 積極性と合理性のバランスがとれた成長投資を柔軟に実施し、中長期的な企業価値向上への投資機会を逃さない、を基本方針に掲げ、貸会議室事業と宿泊事業を2本柱として本格的に成長軌道に回帰させていく計画である。

2. 環境認識
事業環境は仕入面並びに需要面ともに追い風である。特に仕入面ではコロナ禍でオフィスの流動性が高まるなか、2023年以降、新規オフィスが大量供給される予定であり、中期的な空室率はリーマンショック後のような水準に悪化するとの見方もある(2023年問題)。言うまでもなくオフィス市況の軟化は同社にとって絶好の仕入れ機会となる。一方、貸会議室需要についても、経済活動の再開、さらにはオフィスの在り方が変化するなかで拡大傾向が予想されている。

3. 計数目標
最終年度の2026年2月期の計数目標として、売上高を57,500百万円(年平均成長率25.9%)、営業利益9,400百万円(営業利益率16.3%)、経常利益9,100百万円、ROE 10%を掲げており、売上高・各利益ともに、この期間中に過去最高水準を更新する計画となっている。また、現時点で計画外の新規事業は追加要素としており、あくまでもベースラインのシナリオであることに注意が必要である。

また、財務方針については、安定した営業キャッシュ・フローを成長投資に充てることを基本とし、オーガニック成長(貸会議室や宿泊施設の新規出店や増床等)に優先的に配分するほか、M&Aや新規事業にも積極的に取り組む方針である。

4. 事業別戦略
(1) 貸会議室事業
2025年2月期(2年目)には、懇親会を含めた貸会議室需要がコロナ禍前の水準へ完全回復する想定の下、貸会議室市場の継続的拡大を見込み、東京・大阪を中心に会議室面積を年間約1万坪のペースで出店していく方針である。また、料飲の需要回復に伴う内製化、並びにDX戦略・営業力強化による事業の運営効率化・高付加価値化を推進することで、収益力の最大化を目指す。KPIについては、「坪当たり売上高」41,000円※1、「有効会議室面積」79,000坪※2をターゲットとしている。

※1 「坪当たり売上高」については、2020年2月期(コロナ禍前)が37,558円、2023年2月期が28,963円で推移してきた。
※2 「有効会議室面積」については、2020年2月期(コロナ禍前)が65,085坪、2023年2月期が57,841坪で推移してきた。


運営効率化・高付加価値化のカギを握るDX戦略については、ダイナミックプライシング導入※によるプライシングの最適化と顧客ポータル開設による会議室予約の自動化を実施し、サービスの高付加価値化を加速する考えだ。また、今後は増員等による人的資本の強化にも取り組む方針であるが、DX戦略による効率化・高付加価値化と人による提案営業力(リレーションシップ強化)のバランスをとりながら、各方面の需要を幅広く取り込んでいく戦略のようだ。

※その時々の需給の状況を考慮して、価格を柔軟に変動させる方法。


(2) 宿泊事業
フランチャイズで展開するアパホテルブランドを含めたビジネスホテルを中心に3年間で10施設を目安に出店していく方針であり、貸会議室事業に次ぐ第2の柱に成長させる方針である。仕入れ形態については、賃貸契約か、保有か、その時々の経済合理性を見て決定する。すなわち、「持たざる経営」を基本としながらも、アパホテルブランドのように安定した稼働(集客力)が見込める案件については、保有することにより高い収益性を享受することも検討していく考えだ。また、「石のや」をはじめとする他リゾートホテルでは、リニューアルを通じたブランド力強化によりインバウンドの需要獲得を図っていく。3年後の直営施設数として31施設を計画している。

(3) 新規事業
「空間再生流通事業」におけるコンセプトやビジネスモデルは、事業再生支援や地方創生、PFIなど様々な領域への応用も期待されており、新たな事業機会の創出も視野に入れているようだ。また、ハードだけでなくソフト(周辺サービス)の取り込みでも、付加価値向上に向けて積極的に取り組んでいく方針であり、今回の識学との資本業務提携やリリカラの持分法適用関連会社化についても、その戦略に沿った動きとして見ることができる。

5. 弊社による中長期的な注目点
弊社でも、外部環境(需要面や仕入面)が追い風となってきた貸会議室事業及び宿泊事業の2本柱に注力し事業拡大を目指す戦略には、合理性があると評価している。コロナ禍によって同社の成長は一旦足踏みしたものの、中長期的な視点で見れば、これをきっかけに企業の働き方やオフィスの在り方を見直す機運が一気に加速し、結果としてフレキシブルオフィス市場の拡大に拍車がかかる可能性が高いと見ている。また、コロナ禍前は仕入れコストの上昇が成長の足かせとなっていたことを振り返れば、コロナ禍により図らずも原点に戻るチャンスを得たとの見方もできる。今後は床面積の拡大と「坪当たり売上高」の拡大をいかに進めていくのかがポイントとなろう。特に「坪当たり売上高」については、ソフト(周辺サービス)の拡大による付加価値向上や、ダイナミックプライシングによる価格の最適化にも注目したい。また、中長期的な視点からは、「空間再生流通事業」というドメインでいかに社会課題を解決しながら市場を創出していくのか、そのポテンシャルの高さにも期待したい。その動きとともにM&Aや新規事業への参入が実現すれば、業績のアップサイドとなる可能性も十分に考えられる。いずれにせよ、リージャス事業の売却資金や潤沢な営業キャッシュ・フローの活用が今後のカギを握るであろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《SI》

 提供:フィスコ

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