【植木靖男の相場展望】 ─個別銘柄ではETFに勝てない段階に
「個別銘柄ではETFに勝てない段階に」
●海外投資家の買いをテコに大勢上昇波動に乗る
日経平均株価はここへきて糸の切れた凧、宇宙に向かって飛び出すロケットの如く大きく舞い上がっている。
本年4月27日安値の2万8241円で短期調整を入れた後に上昇し始め、途中、2万9000円処で数日もみ合ったもののすぐに再上昇。5月12日から上昇ペースに弾みがつき、19日には平成バブル崩壊後の高値を上回った。一方、TOPIXもともに躍進し、約33年ぶりの高値をつけた。
こうした展開をみると、明らかに大勢的に上昇波動に乗っている、と考えざるを得ない。
この急騰劇の背景だが、いまさら言うまでもないが、基本的には“市場はカネありき”であり、現状はカネ余り相場の典型と言えよう。海外投資家の積極的な買いが追い風となっているようだ。
そして、投資の神様の“バフェット効果”や円安進行など次々と好材料が顕在化しつつあることが株価を押し上げている。
では、こうした好材料のもとで今後さらに日経平均株価は躍進を遂げるのであろうか。
●30年に一度の大バブル相場、ただし日柄からは目先の高値は近いか
ここでは中長期と短期に分けて先行きを考えてみたい。
まず中長期だが、30年に一度の大バブル相場の2年目に入っていることは明らかだ。一言で言えば、インフレ相場に入っている感がする。報道でも、ようやくインフレとか新インフレといった言葉が散見されるようになった。背景には物価上昇に対して打つ手がない日銀の姿がある。通常なら物価上昇には金融を引き締めるのが常道。ところが、いま日銀はその手を封じられているのだ。
人手不足で賃金も上昇せざるを得ないだろう。こうした形でのインフレは、株式にとっても強い追い風となる。2024年、2025年も株高が続くとみてよさそうだ。
では、短期的にはどうか。あえて気掛かりな点を挙げるとすると、まず好材料が揃いすぎていることだ。贅沢な話だが、株価が底を入れるときは悪材料が満ちあふれているものだ。いまはその逆の状態にある。
また、日柄論からみると、4月27日安値から5月19日まで14日、5月11日からでも7日をすでに経過している。しかも、ここへきて売り方の最後の決断、つまり買い戻しが朝方に成り行きで入っているかにみえる。結果として、連日、窓を大きく空けて上昇をみせている。売り方の心境は如何ばかりか。
ただ、日柄でみると案外、高値をつけるのは近いのかもしれない。ただ、それは一休止であるのか、あるいは少なからぬ下げを伴うのかはまだ見通せない。
さて、物色の対象とすべき銘柄はなにか。まず言えるのは、こうした通常と異なる市況では、いつもの如く個別物色では総じてETFに勝てないのが現実だということだ。
また、TOPIXの強さは、バリュー株が主役であることの証しといえる。とはいえ、米ナスダックが引き続き中間反騰をみせるのであれば、グロース株も循環買いの対象の一角となろうが、その牽引役は出遅れ株であろう。
参考として、丸紅 <8002> [東証P]や自動化機器のワイエイシイホールディングス <6298> [東証P]、それに将来の主役株である三菱重工業 <7011> [東証P]に注目したい。いずれにしても、いまは逃げ足の速い投資家向きの相場だ。
2023年5月19日 記
株探ニュース