【植木靖男の相場展望】 ─インフレ時代に備えて内需株を!
「インフレ時代に備えて内需株を!」
●日経平均3万円が次の目標だが、強弱感も激化
東京市場は大きな転換期を迎えているかのようだ。
日経平均株価の推移をみると、4月18日に2万8658円の高値(終値ベース)をつけた。これは2022年9月、23年3月の高値に対応する。当然のことながら、この高値で買いついた建玉のヤレヤレの売りが予想された。実際、その後5日ほど高値もみ合いが続いた。
しかし、4月26日に米地銀ファースト・リパブリック・バンク<FRC>の多額の預金流出が明らかとなり、金融不安が再燃。米国株安を受けて日本株も大きく窓を空けて急落した。このとき多くの投資家が先行きへの警戒感を強めたはずだ。
ところが、4月28日には逆に大きな窓を空けて急騰、一気に年初来高値を付けたのだ。これはサプライズであったが、その原動力とは何であるのか?
1つめは、植田日銀新総裁が黒田氏の政策を継承したこと。2つめは、為替市場で一気に円安が加速したことだ。
こうした一連の動きは、今後の株価を一変させる迫力がある。加えて、海外勢が先物主導で大幅買い越しに転じたことも追い風となる。4月第3週まで4週連続で合計2兆円強を買い越している。どうやら海外勢の日本株回帰が始まったとみてよい。
このようにみると、今後さらに株価の上昇が期待でき、次の目標は3万円となりそうだ。
ただ、一方で強弱感の対立も激化しそうだ。市場には、米国の景気悪化は早いとみて、いまの上昇はローソクの最後の輝きと見る向きも少なくない。米国がくしゃみをすれば、日本は風邪をひく、とのたとえもあるが、風邪には至らないまでも、くしゃみはするはずとの見立ても根強い。
大台の3万円には届かず、近く小天井を打つのか、はたまた一気に3万円まで走るのか、今後の日々の株価の動きを注視するしかないだろう。
●インフレ相場が2024年に現出する
いうまでもなく、米国とわが国では金融政策の違いがある。植田新総裁からは過日、正常化には2年、3年後という発言があった。すなわち、金融緩和策を修正するにはまだまだということ。これまで通りお金はジャブジャブであり、黒田体制とは大きな変化はないのだ。しかし、カネ余りは株高の基本条件でもある。
ともあれ、日本経済は米国に比べて周回遅れにある。今後はインフレ時代に突入する公算が大きい。東京23区のマンション価格は2ケタ上昇をみせている。平成バブルを彷彿とさせる展開だ。円安はさらに進み、インフレが強まるとともに株価は上昇基調を持続しよう。これが年後半の基調として、来年はインフレ相場が現出する。
このようにみると、中長期的にみた物色対象は自ずとみえてくる。
4月28日に年初来高値を更新したとき、同じく年初来高値を更新した業種は食品、小売り、建設などだ。インフレ相場を先見した動きとみられる。つまり、内需株である。
今後、さらに人手不足を材料に省力化の設備投資関連、さらに不動産などに物色の輪が広がる可能性が高い。内需株の押し目は中長期狙いで注目されよう。
今回は当面の物色対象として、三菱重工業 <7011> [東証P]に注目したい。航空機事業やロケット打ち上げ失敗の後遺症で安値もみ合いが続いていたが、出番は近いのではないか。
インバウンド関連では、日本航空 <9201> [東証P]、ANAホールディングス <9202> [東証P]などの空運株のほか、百貨店株にも注目したい。
このほか、PBR1倍以下の金融株、三井不動産 <8801> [東証P]や三菱地所 <8802> [東証P]といった 不動産株の出番もあろう。なにしろ、東京23区のマンション価格は2ケタの上昇だ。昔から、ハイテク株の次は不動産株のたとえもある。
2023年5月2日 記
株探ニュース