【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「乱高下しながら年末3万円を目指す」
株式評論家 富田隆弥
◆日経平均3万円に向けて「山あり谷あり」の展開に
今回は年後半に向けての株式展望と注目株を紹介するが、本コラムはチャートを主体にファンダメンタルズ、経験則なども併せて分析していくものである。その点をまず申し上げておく。
では、まず日経平均株価を見ていくが、今年は堅調に推移している。賃金の上昇期待や新型コロナ規制の緩和、インバウンド再開、低PBR企業への是正勧告、ウォーレン・バフェット氏の日本株追加購入などを背景に、4月25日には年初来高値を更新した(本稿執筆は4月27日)。
2023年は1月4日の大発会で2万5661円の安値をつけてスタートしたが、2月6日の2万7821円、3月9日の2万8734円と高値を切り上げ、そして4月25日には2万8806円と、ここまで順調な上値追いの展開をみせている。足もとでは岸田内閣の支持率回復や外国人投資家の買い越しも支援要因となっている。
日経平均株価の週足チャートを見ると、昨年からは「2万5600円~2万9000円」の往来が続いており、2021年に3万0700円台の高値がある。本稿執筆時点の日経平均株価は2万8457円に位置するが、今年はどこで2021年9月以来となる3万円大台を回復するかがポイントになる。
相場展望を先に述べると、日経平均株価は年末に「3万円」を回復すると見ている。ただし、テクニカル指標(騰落レシオ、サイコロジカル、RCI、ストキャスティクスなど)の過熱を踏まえると、5月にスピード調整を入れるだろう。その後、6~7月に2万9000円台に乗せるが、8~9月には2万7000円前後に調整するなど、年末までは「山あり谷あり」の展開を想定している。
◆NYダウの節は3万4300ドル台
世界に目を向ければ地政学的リスクは依然として残り、コモディティ価格の高騰、インフレ圧力、金利上昇という構図も続く。3月以降は景気後退懸念や金融システム不安も浮上した。米国の株式市場はこれまで「インフレ鈍化→利上げ打ち止めの接近」を好感し、「バッドニュースはグッドニュース」とばかりにポジティブに受け止めてきたが、最近では人件費の高騰を背景に「金利上昇継続→景気後退」を懸念するようになってきた。
NYダウは4月27日に前日比524ドル高の3万3826ドルと大きく上昇したが、上には昨年12月高値の3万4712ドルが控えており、3万4300ドル台が厚い節目になっている。チャートを好転させるには、少なくとも1月と2月に上値を抑えた3万4300ドル台の節を抜かねばならず、それを確認するまでは乱高下の展開を想定することになる。NYダウが「3万4300ドル台」の節目をどこで抜くか、これが2つ目のポイントになる。
◆年後半に向けての「注目株」
今回は、出遅れ感のあるチャート妙味を持つ銘柄を紹介する。日本株は年末12月にかけて高値を更新する展開を想定するが、それまでに調整を挟むので「押し目買い」での対応が望まれる。また、相場は流れに従うのが基本であるから、日経平均株価で下値支持線になっている25日移動平均線(4月27日時点2万8109円)や13週移動平均線(同2万7847円)を割り込むことがあるなら、個別株もポジション調整を行うなど慎重に対応することを心掛けてほしい。
○J.フロント リテイリング <3086> [東証P] ―インバウンド享受―
4月11日に決算を発表。2024年2月期の連結売上高は前期比14.8%増、営業利益は2.0倍、最終利益は79.1%増、EPS(1株当たり純利益)は97.2円を見込み、配当は年33円と3期連続で増やす。同社は大丸と松坂屋が統合した百貨店大手グループであり、インバウンド再開の効果は大きく、コロナ前の利益水準をほぼ取り戻す見通しだ。
株価は4月24日に1464円まで急騰し年初来高値を更新。足もとで百貨店株が軒並み買われて人気が偏っていたこともあり、目先は調整を挟む可能性は高いが、好業績を背景に調整が入れば押し目妙味となる。足もとの1株純資産は1370円。PER 14倍、PBR 1.0倍、配当利回り2.3%前後と依然として割安感があり、年後半にはコロナ前の株価水準である「1600~2000円」を目指すと考える。
○DMG森精機 <6141> [東証P] ―円安寄与、PER 8倍、利回り3%―
工作機械大手。EV(電気自動車)関連の設備投資増を背景に業績は好調。23年12月期の連結営業利益は前期比21%増の500億円、最終利益は26%増の320億円、EPS は255円を見込み、配当は年80円(前期70円)に増やす。為替想定レートは1ドル=130円、1ユーロ=140円であり、直近のレート(4月27日時点、1ドル=133.90円、1ユーロ=147.5円)を踏まえると上方修正に動く可能性は大きい。
株価は3月9日に2320円の高値を付けた後、2100円台で足踏み中だが、75日移動平均線(4月27日時点、2080円)や13週移動平均線(同2129円)を下値支持線にしてもみ合うチャートの形状は悪くない。時価はPER 8倍、PBR1倍、配当利回りは3%台後半と割安で、いつ二段上げに動き出してもおかしくはない。もたつく場面は買いで攻めてみたい。
○NEC <6701> [東証P] ―5G・6G関連、PBR 0.9倍―
通信インフラ大手で、顔認証など技術力に定評がある。デジタルトランスフォーメーション(DX)需要が旺盛で、5G・6Gの通信インフラ(基地局)にも注力。"日の丸半導体"の復活を期す「Rapidus(ラピダス)」にも出資している。本稿執筆後の4月28日に発表される決算がポイントの1つだが、24年3月期も増収増益が続き、連続増配に動くことが想定される。(編集部注:発表された24年3月期の連結営業利益は前期比29%増の2200億円に伸び、配当は年120円と10円増配の見通し。)
株価は5000円台を回復し、週足で4900円台にある52週移動平均線を突破。昨年1月安値4330円と今年1月安値4405円でダブルボトムを打ったが、今年1月安値は昨年7月高値の5590円に対する期日底でもある。前期(23年3月期)ベースで時価はPER 11倍、PBR 0.9倍、配当利回り2%と割安感があり、今後の浮上に期待が募る(編集部注:5月2日時点の24年3月期予想ベースではPER 11倍、PBR 0.9倍、配当利回り2%)。
○オーイズミ <6428> [東証P] ―スマスロ+化粧品、PBR0.7倍―
パチスロなどメダル計数機の最大手。24年3月期も増収増益と増配が期待される(決算発表は5月12日の予定)。スマートパチスロの導入・普及により、主力のスロット機の需要増が見込める。さらに、昨年8月に子会社化した武内製薬(東京都品川区)が通年で寄与する。武内製薬(年商14億円)はEC市場でスキンケアやプロテイン、歯のホワイトニング関連製品などを提供する成長企業。20年には「蒟蒻ゼリー」を手掛ける下仁田物産(神奈川県厚木市)を傘下に収めるなど、M&A戦略を積極化させている。
株価は昨年まで400円台で推移していたが、今年になり500円台に上昇してチャートは好転を明確にした。足もとは550円近辺で足踏みしているが、上昇前のスピード調整として注目できる。23年3月期ベースでPBR0.74倍、配当利回り2.1%と割安だが、5月12日に開示される24年3月期予想ベースではさらに割安感が強まろう。
(4月27日 記、毎週土曜日に更新)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
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