迫る物流の「2024年問題」、攻勢期待の「モーダルシフト関連株」を追え <株探トップ特集>
―内航海運や鉄道などに需要シフト観測高まる、物流DXへの需要拡大も鮮明化へ―
「荷物が届かない」「店舗の棚に商品が並んでいない」――。トラック運転手の残業時間に上限が課せられることによる 物流業界の混乱が懸念される「2024年問題」に絡んで、こんな事態に陥ることが恐れられている。混乱を避けるための対策がいま急ピッチで進められているが、とりわけ、物流業界のデジタル化推進などが求められるとともに、トラックからフェリーなど 海運や貨物鉄道に輸送手段を移す「モーダルシフト」に向けた期待が急浮上している。株式市場では同関連株への関心が膨らんでいる。
●政府は6月上旬メドに対策提示も
物流業界では、2024年4月からトラック運転手の時間外労働が年間960時間までに規制される。残業時間の上限規制は、事務職や作業職にはすでに適用されているが、ドライバー職への適用は5年間猶予されており、その期限は来春に迫ってきた。これに伴い、もともと慢性的な人手不足が叫ばれるトラック運転手は、ますます足りなくなり、物流が立ちゆかなくなることが懸念されている。これが物流の「2024年問題」であり、その期限まであと1年を切った。
物流は国民生活や経済を支える重要な社会インフラだが、大手シンクタンクでは同問題に絡み全国の荷物総量のうち、30年には約35%が運べなくなる可能性も指摘している。こうしたなか、岸田文雄総理は3月末に同問題への対応を協議する閣僚会議を開き、6月上旬をメドに政策パッケージを取りまとめることを指示した。
●トラックから大量輸送機関である船舶や鉄道へのシフトも
「2024年問題」の具体的な対策としては、荷主・物流事業者間などの商慣行の見直しや物流の標準化、DX(デジタルトランスフォーメーション)などデジタル化の推進といった対策が打ち出される方向にある。更に、2024年問題で注目されそうなのが、「モーダルシフト」だ。モーダルシフトとは、貨物の輸送をトラックから内航船や鉄道へ移すこと。輸送手段をトラックから大量輸送機関である船舶や鉄道に転換することは、人手不足への対策に限らず、環境負荷の低減などの面からも効果は大きいとみられている。
ただ、トラック運送は小回りが利くうえに輸送時間やコスト面でも優れていることから、なかなかモーダルシフトが進まなかったというのが実状だ。しかし、2024年問題が迫るとともにモーダルシフトに対する関心は日増しに高まっている。
●内航海運の栗林船などに熱視線集まる
モーダルシフトに絡んでは、まず内航海運業界が注目されそうだ。内航海運とは、国内貨物の海上運送のことを指し、日用品や食料品、産業資材などを運搬している。例えば、栗林商船 <9171> [東証S]は内航海運の大手で、6隻のRORO船(貨物専用フェリー)を運航し、国内最大規模の海陸複合一貫輸送を実現。モーダルシフトを推進している。
また、川崎汽船 <9107> [東証P]は傘下に川崎近海汽船を擁している。昨年9月には首都圏と九州を結ぶ大型高速RORO船にユーグレナ <2931> [東証P]が販売する次世代バイオディーゼル燃料を使用し、実証試験航海を行っている。商船三井 <9104> [東証P]も、フェリー・RORO船事業を展開している。
鉄道では、日本貨物鉄道(JR貨物)が主役となるが、JR東日本 <9020> [東証P]、JR西日本 <9021> [東証P]、JR九州 <9142> [東証P]なども新幹線を活用した荷物輸送で活躍している。空運では、日本航空 <9201> [東証P]はヤマトホールディングス <9064> [東証P]とタッグを組み24年4月から貨物専用機の運航を開始する。ANAホールディングス <9202> [東証P]も貨物事業を積極展開している。
●倉庫の三井倉HDや港湾運送の東洋埠頭なども注目
更に、保管や輸送などの拠点となる 倉庫や港湾関連銘柄も注目される。三井倉庫ホールディングス <9302> [東証P]や三菱倉庫 <9301> [東証P]、安田倉庫 <9324> [東証P]、澁澤倉庫 <9304> [東証P]、それに港湾運送に絡む上組 <9364> [東証P]や東洋埠頭 <9351> [東証P]などが関係する。
また、物流ソリューションを展開するダイフク <6383> [東証P]、輸送用パレットを手掛ける日本パレットプール <4690> [東証S]、ユーピーアール <7065> [東証S]、フォークリフトの三菱ロジスネクスト <7105> [東証S]などには新たな需要も期待される。倉庫内オペレーションコンサルティングなどに絡むファイズホールディングス <9325> [東証P]や物流DXに絡んではYE DIGITAL <2354> [東証S]やロジザード <4391> [東証G]、トランコム <9058> [東証P]などへの期待が高い。加えて、物流施設に投資するREITの産業ファンド投資法人 <3249> [東証R]やGLP投資法人 <3281> [東証R]やアドバンス・ロジスティクス投資法人 <3493> [東証R]なども関心を集めている。
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