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7868 広済堂ホールディングス

東証P
548円
前日比
+12
+2.24%
PTS
549円
23:54 11/27
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
15.1 1.65 2.32 7.75
時価総額 790億円

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「TOBには続きがある」との気づきが、運用成績を引き上げる

目指せ億トレ、頑張り投資家さんの稼ぎ技 ゆうとさんの場合-第2回

文・イラスト/福島由恵(ライター)、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

登場する銘柄
ユニゾホールディングス<3258、上場廃止>、西松建設<1820>

【タイトル】■ゆうとさん(ハンドルネーム・20代・男性)のプロフィール:
大学生のころから投資を始め、投資歴10年になる20代後半の若手投資家。40万円の元手に追加資金を加えた運用資産を10倍程度まで膨らませた実力から、交流するすご腕投資家たちからも「ネクスト億り人」として期待がかけられている。投資スタイルは、カタリストのあるバリュー株への投資。増配など株主還元策の強化による株価上昇を狙う。「起きている時間のほとんどは投資のことで頭がいっぱい」という自称株オタクで、会社員になるも投資に専念するため、数年前に専業投資家に転身している。

第1回「狙うは「物言う株主×PBR1倍割れ」で、"資産テンバガー"の技」を読む

第1回目の記事で紹介したように、ゆうとさん(ハンドルネーム)が現在手掛ける投資法は、ファンダメンタルズ重視の成長株投資でも、一般的なバリュー投資でもない。対象は自ずとバリュー株になるが、バリュー投資というよりは「アクティビストのカタリスト投資」と呼ぶのが適している。

自称「株オタク」というだけに、開示情報をきめ細かくチェックし、注視する材料を丹念に拾いながら手掛けるこの手法は、人によってはマニアックのように見えるかもしれない。

なぜ、ゆうとさんはこの手法にハマったのか。今回は、その考え方やきっかけとなった投資事例を見ていく。

凡才の自分も勝てるやり方は?

「自分はただの凡人だから」。ゆうとさんは、アクティビスト・カタリスト投資を手掛ける理由をこう話す。成長株投資を上手くこなすには、銘柄選択の目利きに加え、買い時や売り時のタイミングをはかる冴えた判断力を伴う、ある種の才能が必要だ。

一方で、アクティビスト・カタリスト投資は、対象が割安株になることもあり、想定する下値を大きく割り込むリスクは小さく、一定のセオリーに従えば好リターンが狙いやすい。

カタリストに注目することで、投資の入り口と出口が見極めやすくなり、また万年割安状態のバリュー・トラップ(罠)にハマるリスクも回避しやすくなる。詳細は次回以降に譲るが、ゆうとさんはカタリスト投資の前に、資産バリュー株に着目する「ネットネット株投資」を手掛けていた。

しかし、待てど暮らせど自分の持ち株の株価が上がらないケースもあり、本人はストレスをかかえていた。そこから、たどり着いたのがアクティビスト・カタリスト投資だった。

勝ちのコツをつかんだユニゾHDトレード

「これはイケる」。そんな掴みを得たのが、2019年~20年に手掛けたユニゾホールディングス<3258>(上場廃止)の成功事例だ。ユニゾHDは不動産賃貸やホテル事業を行う企業で、19年初夏ごろは、株価2000円どころで足踏み状態が続いていた。

そこに転機が訪れる。同年7月、当時4.79%の株式を保有する筆頭株主だった格安航空券大手のエイチ・アイ・エス<9603>が、ユニゾHDの同意を得ずにTOB(株式公開買い付け)を実施すると表明したのだ。

■ユニゾHDの日足チャートと主な出来事(19年1月~20年4月)【タイトル】
出所:QUICK・ファクトセット

このイベントに同社株は動意づく。以降、株価を動かす材料がてんこ盛り状態になる。まず、ユニゾHDがHISのTOBに反対を表明したことで、両者は敵対関係になる。ユニゾHDはホワイトナイト(買収合戦で味方となる立場)として投資ファンドのサッポロ合同会社(フォートレス・グループ)を向かい入れる。

しかし、その後も米ブラックストーンやその他のファンドが参加するなどで様々な思惑が膨らみ、ユニゾHD株は段階的に株価がつり上がっていくことになった。

20年2月までに6000円と大きく株価が上昇した同社に対する買収合戦は、最終的には、EBO(従業員による会社買収)の形態で終結へ。20年6月18日に同社株は上場廃止となった。

■ユニゾHDが20年6月に発表した上場廃止のリリースの抜粋
【タイトル】

過去の村上ファンド案件を研究

ゆうとさんは、もともとユニゾHDに割安感を感じ、株価が長く2000円あたりで横ばいが続いた状態にあった時期から少しずつ仕込んでいた。HISによる19年7月のTOB表明後に買い増しを強めたことで、この一連の株価上昇をさらい、3倍近い投資リターンを獲得した。

この時点で、本人はアクティビスト・カタリスト投資の経験はなかった。それでも大きくリターンを稼ぐことができたのは、資産バリュー投資の基本を押さえていたことや、これまで村上世彰氏をはじめとする主な物言う株主が成功させた投資案件をじっくり研究してきた土台があったからだ。

特に村上氏などのアクティビストの参加をカタリストにする投資法で意識していたのが、

・会社の解散価値を意味するPBR(株価純資産倍率)1倍が目標株価のメドになる
・持ち合いなどの安定株主が少ない一方で、海外投資家や機関投資家が多く、アクティビストが大量に株式を取得して圧力をかけられる余地のある株主構成か

――ということだ。

ただし、PBR1倍をメドとする際、注視するのは、その会社が抱える資産のクオリティーが高いものなのか。例えば保有する有価証券や不動産は換金性が高いのか、不動産なら含み益の状況やキャッシュフローを安定的に稼いでいる状況なのかなどをチェックする。

ユニゾHDのトレードで特に重視したのは、HISによるTOB表明後の株価の初動だ。HISが買い付け価格としたのは3100円だった。だが、ゆうとさんは、このTOB価格は非常に割安だと感じていた。

そもそも、ゆうとさんがユニゾHDに注目したのは、同社の時価総額より保有する資産価値の方が高い資産バリュー株とみなしていたことがある。

価値が高い資産を持つはずの同社株が2000円水準で停滞していたのは、毎年のように増資が繰り返されたことにより、株式のさらなる希薄化リスクが株式市場で意識されていたからだと捉えていた。

そうした中で、ゆうとさんは同社の保有する賃貸不動産やホテルの含み益を考えると、1株当たりの資産価値は7800円程度と試算していた。この試算に基づけば、HISのTOB価格はかなりの割安となり、これに疑問を感じる投資家がほかにも多く存在すれば、株価はTOB価格を上回っていく可能性がある。

先に触れた増資の繰り返しにより、安定株主比率が下がって浮動株比率が高まってきていたことも、その動きを後押しする状況だと考えた。

トップの思惑も考慮して、動きを読む

追随買い戦略を立てたのには、もう1つ理由がある。ゆうとさんは、最終的には経営陣によるMBOもあり得るとにらんでおり、HISのTOBはすんなり成立しないと考えていた。

その背景にあるのが、ユニゾHDの小崎哲資社長の動向だ。ゆうとさんによると、小崎氏はみずほフィナンシャルグループ<8411>のナンバー2まで上り詰めたにもかかわらず、結局、トップにはなれなかった。みずほ系のユニゾHDのトップになるという人事に落ち着き、このことで「成果を出して見返したいという気持ちが働いたのでは」と推察していたという。

さらに調べると、小崎氏が、みずほ以外のメガバンクや地銀、信金信組から融資を受け、社債発行や公募増資を行いあらゆる手段で資金調達して賃貸不動産を買い集め、ユニゾHDを急成長させた足取りが見えてくる。

ゆうとさんは「ここまでして自分の帝国を築き上げた小崎氏が、やすやすとHISの軍門に下るはずがない。いざとなれば、MBOも辞さないのでは」と読んだのだ。

もし、同社株がTOB価格の3100円より上を目指すモメンタム(騰勢)が強ければ、ゆうとさんの考えたシナリオに沿って話が発展していく可能性が高まるだろうと睨んでいた。

会社を休んで板情報を観察

最終的に、その見立てに沿った形で事態は進んだ。当時、会社員だったゆうとさんは、有給休暇を取って、HISによるTOB表明後の株価の板情報を一日中、見守ることとした。

発表翌日にはストップ高に。ゆうとさんが終日監視したのは、翌々日の値が付いた日の動きだ。株価は想定通り、場中にTOB価格の3100円を超えて推移し始め、終値でも3100円を上回って終了。強く買い向かう投資家がいる様子が確認できた。

「株価はもっと伸びていく」と強気モードになったゆうとさんは、その当時に保有していた優待株などを換金し、ユニゾHD株に全力買いを仕掛けた。

手仕舞ったのは、20年3月。同社株を巡る騒動は、最終的にはEBOを実施していた従業員側のチトセア投資がEBO価格を6000円に引き上げ、これに当時の筆頭株主のエリオットグループ、2位のいちごグループと応募契約を結んだことで、買収合戦が幕引きを迎えたと判断。全保有分を利確した。

広済堂HDで失敗、悔しさをバネに学びを生かす

この成功は、ユニゾHDに投資する少し前、広済堂ホールディングス<7868>のMBO(経営者が参加する買収)を巡る株価の上昇に乗りそこなった失敗からの教訓を生かしたことによる。

広済堂は19年1月17日にMBOを表明すると、直後に同社株は窓を開けて上昇する急騰を見せた。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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