信用
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)のみができる銘柄
株価15分ディレイ → リアルタイムに変更

7325 アイリック

東証G
699円
前日比
+3
+0.43%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.6 1.60 2.86
時価総額 60.9億円
比較される銘柄
SBIIG, 
Bマインド, 
エーインシュ

銘柄ニュース

戻る
 

エージェント・インシュアランス・グループ Research Memo(3):ストック収益とフロー収益のバランスよい構造


■エージェント・インシュアランス・グループ<5836>の事業概要

1. 事業概要
2022年12月期の事業別営業収益構成比は主力の国内事業が94.7%、海外事業が5.3%であった。国内事業は個人及び法人顧客向けに損害保険及び生命保険を販売する保険代理店業を手掛けており、損害保険が74.6%、生命保険が25.4%となっている。保険会社が様々な保険商品を設計するメーカーとしての役割であるのに対し、同社グループは保険代理店として顧客ニーズに合った商品を第三者の立場で選択し、販売する。一方、海外事業は、連結子会社のAgent America, Inc.が世界最大の保険市場である米国で3拠点(カリフォルニア州2拠点、テキサス州1拠点)を展開し、現地に進出している日系企業や米国駐在員を対象に保険代理店及び保険ブローカー業を行っている。米国は各州で固有の法律があり、保険事業を行う際にはそれぞれライセンスを取得しなければならないが、Agent America, Inc.は米国37州(他1特別区)で保険商品を取り扱っていることが強みで、州をまたいで事業展開している顧客に対応できる。海外事業の売上収益のうち8割以上を損害保険による手数料収入が占めている。

同社は、ストック収益の要素が高い損害保険を中心に、フロー収益の要素が高い生命保険もバランスよく取り入れた安定的な収益構造を確立している。損害保険と生命保険は収益構造が異なっており、生命保険は契約を獲得した年に初年度手数料を得て、次年度以降は継続手数料として初年度より低い手数料率を4~10年間得るフロー型ビジネスであるのに対し、損害保険は1年ごとに更新するストック型ビジネスが多い。高い更新率(同社の主力商品である東京海上日動火災保険の2022年12月期自動車保険更新率は94.9%)を維持すれば、翌年以降も継続して同水準の保険料に対する手数料収入が安定的に得られる。また、同社は来店型店舗を展開せず、損害保険の更新を接点とした訪問型の営業スタイルを取っており、ローコストオペレーション体制を実現している。なお、保険代理店業界の大手としては、生命保険代理店では業界最大手のほけんの窓口グループ(株)(伊藤忠商事<8001>が大株主)、FPパートナー<7388>、「保険市場」を展開するアドバンスクリエイト<8798>、アイリックコーポレーション<7325>などが挙げられる。一方、損害保険を収益の主軸とした保険代理店では同社のほか光通信<9435>のグループ会社である(株)E保険プランニングがある。同社の取扱保険料は損害保険175億円、生命保険131億円(2022年12月期)、E保険プランニングの保険取扱保険料は損害保険200億円、生命保険100億円(2022年10月時点)となっている。

2. 市場環境
保険業界の国内市場規模について同社によると、2021年は生命保険が32.0兆円(保険料等収入ベース)、損害保険は8.8兆円(正味保険料ベース)であった。生命保険は損害保険の4倍近くで、かつ米国、中国に次ぐ第3位の規模であったが、少子高齢化や労働力人口の減少などにより、国内の生命保険市場は緩やかな減少傾向が続くと見られている。一方、同社が属する損害保険市場は、自動車保険及び自賠責保険合計で全体の約60%(正味保険料ベース)を占めている。加えて、近年増加傾向にある天災リスクやサイバーリスク等により毎年増加しており、年間8兆円台後半を推移しながら拡大トレンドが続いている。

国内の損害保険市場規模が年間8兆円台を維持し、損害保険の募集従事者数が200万人台※を保っている一方で、損害保険代理店数は1996年以降大幅に減少しており、2021年度末は160,463店※となった。今後も減少傾向が続くと見られているが、これは保険代理店に求められる募集品質や管理体制等の高度化、保険代理店事業主及び従業員の高齢化問題(代理店主の年齢のうち20代は約0.1%、60代以上は約40.6%)が背景にある。

※出所:(一社)日本損害保険協会「2021年度損害保険代理店統計」


このような市場環境の下、同社は後継者不足などから存続が困難である保険代理店及び保険募集人をパートナー社員もしくは勤務型代理店として受け入れる「保険代理店支援プラットフォーム」を展開している。具体的には、営業・事務両面からのサポート、月1回の勉強会の開催、E-Learningを活用した研修支援、FP(ファイナンシャル・プランナー)・AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)資格を持った営業社員同行支援等を通じて、保険業法や各保険会社の規則に則った保険契約更新や募集行為の継続をサポートし、合流したパートナー社員もしくは勤務型代理店が安心して働ける環境を創出している。

3. 手数料ポイント制度
手数料ポイント制度とは、損害保険代理店の主な収益源である損害保険会社からの手数料が、損害保険会社が定める基準によって変動する制度のことである。全国商工新聞によると、同制度導入前は一定の基準を満たせば一律20%前後の手数料が相場であったが、ポイント制度の導入によって20~120のポイント格差が生じるようになった。一例を挙げると、保険料10万円の自動車保険を販売した場合、同制度導入前は20%の20,000円が代理店に手数料として支払われた。一方、同制度導入後は、ポイントが20であれば手数料は4,000円、100であれば20,000円、120であれば24,000円と大きく変動する。

手数料ポイントが収益に直結するため、いかにポイントを高めるかが重要となるが、代理店の規模(年間の収入保険料)と前年対比の増収率がポイント決定要因の大きなポイントと見られる。これに代理店のグレードに応じた認定ランクや業務品質、専属性(自社損害保険のシェア)、損害率、各損害保険会社が推進する施策の達成率など様々な要素が上乗せされ手数料ポイントが決まる。ポイント決定要因の大きなポイントと見られる代理店規模と増収率をそれ以外でカバーすることは難しい。このことから、損害保険会社は保険代理店に対して、手数料ポイント制度の改定を通じて代理店の事業規模拡大や統廃合の推進を求めているとも考えられる。このため、同社は、手数料ポイントの獲得が難しい小規模代理店を中心に事業承継を通じて事業規模の拡大を進め、高い手数料ポイントの獲得・維持を図ることで全体の収益を最大化している。

損害保険会社は効率化のために損害保険代理店数を削減する必要があることが同制度導入の背景にあると考える。地方に多い個人代理店を合併したり、損害保険会社が出資している保険代理店に吸収合併するなど、様々な施策を講じている。これに対し同社は、同社グループの営業収益の約半分を占める東京海上日動火災保険をはじめとした各損害保険会社に対して事業承継のための営業活動を積極的に行い、事業承継を必要としている小規模代理店の紹介を受けている。株式上場により知名度が向上し、代理店が同社に直接問い合わせるケースも増えているようだ。なお、損害保険会社が同制度導入を通じて代理店の統廃合を進めている中、代理店の大規模化や効率化がどのように進むかが注目される。

いずれにしても、大規模代理店が有利となる同制度が維持される限り、小規模代理店の統廃合は進み、大規模化、効率化していく流れは避けられないと言える。損害保険会社が提示する代理店手数料体系は毎年改定されるが、同社のような上位代理店は事業承継やM&Aを通じて相対的に収益性を維持できる環境にあると弊社では考える。なお、従来は同社が事業承継した保険代理店の1件当たり取扱保険料は平均2,000~3,000万円だったが、最近では1億円程度の代理店からの相談も増えているようだ。同社の事業承継先はこれまで保険販売を専業とする専業代理店が大半を占めていたが、今後はより規模の大きな兼業代理店に重点を置く方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)

《SI》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均