スカラ Research Memo(1):ヘルスケア領域や社会課題解決型の共創案件が立ち上がり、業績は成長ステージへ
■要約
スカラ<4845>は、DX基盤を通じて「社会を豊かにする」「個人の生活をより良くする」ための価値を創造し、提供に取り組む持株会社で、IT/AI/IoT/DX事業、カスタマーサポート事業、人材・教育事業、EC事業、保険事業、投資・インキュベーション事業を子会社で展開している。また、M&Aによる事業領域の拡大とシナジー創出を成長戦略の1つに掲げ、中期経営計画「COMMIT5000」業績目標(2030年6月期に売上収益5,000億円)の達成に向け、積極的な事業運営を推進している。2022年4月の東京証券取引所(以下、東証)市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行した。
1. 2023年6月期第2四半期累計の業績概要
2023年6月期第2四半期累計(2022年7~12月)における継続事業※の売上収益は前年同期比52.7%増の6,504百万円、営業利益は140百万円(前年同期は78百万円の損失)となった。共創開発案件が増えたことによる人件費や新規サービスへの先行投資等が増加したため営業利益は計画(400百万円)を下回ったものの、売上収益は計画どおりの進捗となった。EC事業や人材・教育事業が2ケタ増収となったほか、2022年6月期第4四半期に子会社化した(株)エッグ及び日本ペット少額短期保険(株)の寄与が増収要因となった。一方、利益面ではEC事業や人材・教育事業、IT/AI/IoT/DX事業が増益となったことに加え、投資・インキュベーション事業の損失が縮小したことが増益要因となった。なお、一時的な費用を除いたNon-GAAP指標に基づく営業利益は同116.5%増の140百万円となっている。
※2022年6月期第4四半期に連結子会社の(株)スカラワークスを解散及び清算したことにより、同社を非継続事業に分類した。このため、売上収益及び営業利益の前年同期比較は継続事業ベースの数値としている。
2. 2023年6月期の業績見通し
2023年6月期は売上収益で前期比29.8%増の13,000百万円、営業利益で1,000百万円(前期は393百万円の損失)とする期初計画を据え置いた。売上収益はエッグや日本ペット少額短期保険の業績が通年で寄与するほか、EC事業や人材・教育事業の拡大が続く見通し。また、ヘルスケア領域で新規サービスも複数立ち上がり、売上貢献を見込んでいる。利益面では、前期に計上した一時費用がなくなるほか、IT/AI/IoT/DX事業、人材・教育事業、EC事業が増益に貢献する見込みだが、人件費や先行投資費用の増加により計画を下振れする可能性もある。なお、保険事業については収益力強化のための事業構造改革を実施しており、2024年6月期の単月黒字化を目指している。
3. 中期経営計画の進捗状況
中期経営計画「COMMIT5000」では、価値創造経営支援事業、IT/AI/IoT関連事業、社会問題解決型事業を推進し、2030年6月期に売上収益5,000億円、営業利益500億円(2025年6月期に売上収益1,000億円、営業利益100億円)を目標に掲げている。特に、官民共創及びヘルスケア領域を注力分野と位置付け、積極的に展開する方針だ。官民共創分野では、マッチングプラットフォーム「逆プロポ(逆公募プロポーザル)」※を通じた新規案件の増加が見込まれる。ヘルスケア領域では、健康の維持・増進を目的とした「スマートヘルスケアプラットフォーム」を開発した。2023年にリリース予定で、横展開しながら事業拡大を目指す。ここ1~2年の先行投資が2024年6月期以降に本格的に貢献し始めることで、収益成長スピードの加速が期待される。
※企業が「関心のある社会課題」を提示し、自治体が課題解決のための企画やアイデアを提案する共創サービスのことで、従来の公募プロポーザルや入札のベクトルを逆転させた仕組み。
■Key Points
・2023年6月期第2四半期累計業績はM&A効果により大幅増収、営業利益は黒字転換
・2023年6月期は先行投資による利益の下振れ懸念があるものの、2024年6月期以降は成長スピードが加速する見通し
・中期経営目標達成に向けた成長の種が芽生え始め、育成ステージに移行
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《NS》
提供:フィスコ