エリアリンク Research Memo(5):売上高・利益ともに期初予想を上回って着地、主力のストレージ運用が好調
■業績動向
1. 2022年12月期の業績概要
エリアリンク<8914>の2022年12月期業績は、売上高20,878百万円(前期比1.5%増)、営業利益3,742百万円(同22.9%増)、経常利益3,758百万円(同24.9%増)、当期純利益2,883百万円(同9.1%減)となった。また、期初予想に対しては、売上高は1.3%、営業利益は13.4%、経常利益は17.5%、当期純利益は37.3%上回って着地した。セグメント別では、主力のストレージ運用の稼働率が上場来最高値を更新するなど好調に推移した結果、ストレージ事業は増収増益となり、セグメント利益は20%近い伸びを示した。一方で、土地権利整備事業は減収となったものの、ビジネスの質向上により増益に転じた。なお、営業利益及び経常利益の増益に対し当期純利益が減益となった要因は、過年度の法人税の更正を行ったことにより法人税等還付税額として235百万円を計上したことに加え、前期に特別利益として計上した買戻損失引当金戻入益1,610百万円が剥落したためである。
事業セグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) ストレージ事業
売上高は16,366百万円(前期比5.8%増)、セグメント利益は4,084百万円(同19.6%増)と好調に推移した。また、同事業のシェアは売上高で78.4%(前期は75.2%)、セグメント利益で83.0%(同80.6%)に拡大し、セグメント利益率は25.0%(同22.1%)に上昇するなど、コア事業として大きく伸長した。2019年12月期より、毎月収益が安定的に積み上がるストック型のストレージ運用を収益基盤とする方針を掲げており、この成果が表れたと言える。
事業の中心であるストレージ運用は、稼働率が前期末比3.50ポイント増の89.36%と2003年の上場来最高値を記録したこともあり、収益性が高まった。稼働率の上昇要因は主に、出店現場を小型化したことや商品の認知度が向上したこと等により、堅調に成約を獲得できたことによる。コロナ禍に伴うリモートワークや巣ごもり生活を起因とする自宅整理需要を取り込むなど、稼働室数を堅調に伸ばした。また、2016年から2018年にかけて出店した大型物件の稼働率が時間をかけて上昇したことに加え、2019年以降の出店現場の精度向上により新規物件の稼働率が高まったことと、2022年12月期において2,915室を新規出店したものの、毎年定期的に発生する閉店等により、総室数は前期末比797室増の98,581室と微増に留まったことも稼働率の上昇に寄与した。さらに、2020年から約2年にわたり進めてきたコンテナの買戻しによる利益率改善効果に加え、収益性の高い自社出店へ方針転換したことや、初期費用無料などの値引きキャンペーンを抑制したことなどから、ストレージ運用は大幅増益となった。なお、自社出店は賃料等が不要であるため、コンテナを外部販売後に借り上げる場合に比べて収益性が高い。また、2021年12月期末までに対象物件の約4割のコンテナを買い取ったことで、買取対応は終結している。
一方、ストレージ流動化は、出店・建設部門の人件費の計上により小幅の損失が続いているが、ストレージ事業に占める割合は小さく、同事業全体への影響は軽微であった。
(2) 土地権利整備事業
売上高は3,110百万円(前期比16.3%減)、セグメント利益は464百万円(同5.0%増)となった。また、同事業のシェアは売上高で14.9%(前期は18.1%)、セグメント利益で9.4%(同10.4%)となり、セグメント利益率は14.9%(同11.9%)であった。「量から質」を重視した方針へ切り替え、事業規模の最適化を図る取り組みを推進した結果、減収ながらも増益に転じた。数年前からの不良在庫を整理するとともに、仕入基準の見直しなど運用ルールも整理したことでビジネスの質が向上し増益に転じたことから、仕入を本格再開している。
(3) その他運用サービス事業
売上高は1,400百万円(前期比1.1%増)、セグメント利益は373百万円(同2.2%減)となった。また、同事業のシェアは売上高で6.7%(前期は6.7%)、セグメント利益で7.6%(同9.0%)となり、セグメント利益率は26.7%(同27.6%)であった。アセット事業は、借上げ物件の解約もあり減収減益となったものの、高稼働を維持した。オフィス事業は、稼働状況は堅調に推移したため増収となったが、2件の新規物件オープンの出店費用の影響で減益となった。パーキング事業からの撤退が一時的な減収となったものの、より収益性の高いストレージ事業へ経営資源を集中する動きの一環と評価できよう。
2. 財務状況と経営指標
2022年12月期末の流動資産は、前期末比2,712百万円増加し20,032百万円となった。これは主として販売用不動産、仕掛販売用不動産が1,797百万円、現金及び預金が859百万円それぞれ増加したこと等による。固定資産は同728百万円増加し25,610百万円となった。これは主として工具、器具及び備品の取得等により有形固定資産が634百万円増加したこと等による。この結果、資産合計は同3,440百万円増加し45,643百万円となった。
流動負債は、前期末比351百万円増加し6,218百万円となった。これは主として短期借入金が287百万円減少した一方、1年内返済予定の長期借入金が477百万円、前受収益が306百万円それぞれ増加したこと等による。固定負債は同980百万円増加し16,351百万円となった。これは主として長期前受収益が286百万円、リース債務が273百万円、社債が157百万円それぞれ減少した一方、長期借入金が2,338百万円増加したこと等による。この結果、負債合計は同1,331百万円増加し22,570百万円となった。
純資産合計は、前期末比2,109百万円増加し23,072百万円となった。これは主として配当金の支払による減少595百万円等によって、繰越利益剰余金が2,091百万円増加したこと等による。
以上の結果、有利子負債は前期比2,104百万円増加し14,048百万円となった。また、自己資本比率は前期の49.7%から50.5%に改善し、同社が目標とする50%を達成した。自己資本比率は2022年3月期東証1部の不動産業平均の32.9%を大きく上回っており、高い安全性、安定した財務基盤を確保している。また、ROAは8.6%、ROEは13.1%と、2022年3月期東証1部不動産業平均の3.9%、8.1%をそれぞれ上回っており、高い収益性も維持していると評価できる。
2022年12月期の現金及び現金同等物は前期末比859百万円増加し、期末残高は14,299百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは1,605百万円の収入となった。主な収入は棚卸資産の減少額1,797百万円、法人税等の支払額871百万円等で、主な支出は税引前当期純利益3,862百万円、減価償却費計上額987百万円等であった。投資活動によるキャッシュ・フローは2,258百万円の支出であったが、主に有形固定資産の取得による支出額2,189百万円等による。財務活動によるキャッシュ・フローは1,492百万円の収入となった。主な支出は長期借入金の返済による支出額2,364百万円、配当金の支払額595百万円、短期借入金の減少額287百万円、リース債務の返済による支出283百万円等で、主な収入は長期借入れによる収入5,180百万円であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《SI》
提供:フィスコ