イード Research Memo(5):2026年6月期の目標達成に向け、事業領域の拡大と強化を進める
■業績動向
3. 中期目標
イード<6038>は2021年8月に発表した中期計画の中で、最終年度となる2026年6月期に売上高100億円、EBITDA12億円を目標に掲げた。2022年6月期以降の年平均成長率は売上高で13%、EBITDAで17%となる。同社は今後のインターネット市場について、ブロックチェーン技術により信頼が担保されることで誰もがメディア(発信者)となり、収益を獲得することが可能なクリエイターエコノミーの市場が拡大していくものと見ている。こうした市場に対して、メディアの収益化をサポートするプラットフォームとソリューションを提供することで、成長市場を取り込む戦略だ。
事業戦略としては、CP事業を主軸に積極的なM&Aや事業開発を行い、専門領域に特化したメディアを増やしながら事業領域の拡大と収益基盤の多角化を図り、持続的な成長を目指す。売上目標100億円のうち7~8割は既存事業の成長で達成可能と見ており、残りを今後のM&A、新規事業開発で創出することにしている。M&Aについては同社の財務基盤が強化され、過去の成功実績によるノウハウが蓄積されてきたことなどから、従来よりも大型の案件を手掛けることも視野に入れている。
収益基盤の多角化では、ネット広告を中心としたBtoBビジネスからBtoCビジネスまで360°広げて収益の最大化を図る。BtoC領域では、EC物販だけでなくゲーム・エンターテインメント分野のメディアを通じたユーザー課金や投げ銭、イベント収入などの獲得に取り組む。またコンサルティング領域として、メディアを通じたセミナー開催やデータ提供、リサーチソリューションなどに注力する。そのほかにもECショップの運営支援やメディア運営支援、メディアを通じたコンテンツ提供などのサブスクリプション型サービスの育成に取り組む。
業界別の取り組みとして、自動車領域についてはモビリティ革命を支援する「iid 5G Mobility」の取り組みを推進していく。FITパシフィックを子会社化したことで新たなソリューションが加わったほか、2018年からの提携パートナーである(株)ジゴワッツとは、共同開発した「バーチャルキー」(スマートフォンを車の鍵とするシステム)の普及拡大に加えて、今後はEV充電器ビジネスの拡大に向けたサポート強化も図り、EV時代に適したモビリティサービスのためのソリューション提供を目指す。
また2022年8月には、山形大学内に設置された睡眠マネジメント研究センターが主催する「Good Sleep コンソーシアム」のメンバーとして加盟し、同コンソーシアムから快適で健康に良い睡眠の知見を得て、出資先のキャンピングカー等とともに質の高い車中泊の実現を追求していく。また、自動運転による次世代モビリティの発展に貢献することも目指している。このほか、今後も定期的にセミナーを開催し、スタートアップ支援などアクセラレーターとしての役割も果たしていく考えだ。
教育領域では、国内有数の教育情報メディアとして成長した「リセマム」を通じた事業拡大に取り組む。政府のギガスクール構想により、2020年以降教育現場でのICT化が一気に進んだことで、教育市場に携わる事業者もIT関連企業を中心に増加し、同メディアの広告売上も拡大傾向が続いている。また、インターナショナルスクールの開校や外国語教育に注力する私立の幼保園・学校が増加しており、生徒獲得のためのイベント開催なども盛況となっている。新たな取り組みとして、医学部の人気上昇によって受験情報など関連情報のニーズが高まっていることに対応すべく、医学部専門塾と提携し医学部受験の特設サイトを「リセマム」内にオープンした。今後も教育情報メディアとしての価値向上に取り組むことで、さらなる成長を目指す。
そのほかEC領域では、SAVAWAYが2022年10月以降に「dショッピング」や「ebisumart」「MakeShop by GMO」など大手ECサイトやECサイト構築サービスとの連携を相次いで開始し、ユーザビリティの向上を図ることで売上を伸ばし始めており、今後の成長が期待される。金融領域では「貯蓄」から「投資」へ変わりつつあるなかで、投資関連メディアの開発または事業取得を積極的に進めており、今後の成長分野として期待される。
新規事業領域となるWeb3領域では、前述のNFT広告等を活用したソリューションを育成するほか、2022年に出資したシンガポールのArriba Studioを通じて最先端の情報を収集するとともに、国内外の有力なWeb3スタートアップと協業しながら、自社の成長につなげる戦略となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ