トレードワークス Research Memo(9):事業領域の拡大と収益構造の転換を推進(2)
■トレードワークス<3997>の今後の見通し
(3) 事業別売上計画
a) 金融ソリューション事業
売上高を2022年12月期の2,880百万円から2026年12月期には1.6倍の4,500百万円を目指す。Web3.0※の本格到来を見据え、暗号資産・デジタル証券・DeFi・NFT等の新たなテクノロジーへ積極投資し、次世代金融領域のフロンティア・カンパニーを目指す方針だ。施策としては、既存顧客の深耕や新規顧客の開拓を着実に行い、証券インターネット取引システム領域でのシェア拡大を図るとともに、次世代金融領域(暗号資産・デジタル証券・DeFi・NFT等)でのビジネス開拓を進める。
※Web3.0とは、パブリック型のブロックチェーン技術を基盤とするインターネットの概念。
また収益性についても、既存顧客との取引深耕や次世代金融領域での新規顧客獲得によるストック売上高比率の維持向上と併せて、データセンター設備や基盤ソフトウエアの最適化に取り組むことで引き上げていく。そのほか、新仲介やAPIエコノミーの広がりを見据えて現在のASPサービス基盤を拡張し、より接続性の高いプラットフォームに進化することで、新たな金融サービスのビジネスモデル創出・発展につなげる考えだ。
なお、次世代金融領域への展開については、2022年1月に資本業務提携を行ったCXRエンジニアリングとの共同開発により展開していく。具体的には、NFT・STO※・DeFi等のシステムやFX及び暗号資産CFD等の店頭取引システム、暗号資産取引所システムの共同開発に取り組む。CXRエンジニアリングは、暗号資産取引システムの開発を中心に手掛けるスタートアップ企業で、暗号資産取引所マッチングエンジンなど高いコア技術や次世代金融に特化したUX(User Experience)のノウハウを保有している。同社の基盤となる「Trade Agent」のマルチプロダクト型アーキテクチャとの親和性も高く、2022年11月にCXRエンジニアリング向けに提供を開始した「暗号資産取引スマートフォンソリューション」を皮切りに、今後も次世代金融ソリューション分野において様々なサービスを開発・提供していく。証券会社においても次世代金融ソリューションについてはいずれ取り組むべき領域であるため、既存顧客を中心に売上を拡大する好機になると弊社では見ている。
※STO(Security Token Offering)とは、デジタル証券(Security Token)を活用した資金調達手段を指す。
b) FXシステム事業
2026年12月期の売上高は320百万円と、2022年12月期の159百万円から2.0倍を目指す。モデルユーザーに提供したプロトタイプを製品化し他社に横展開することでライセンス・保守収入を獲得し、高利益率を維持しながら売上成長を目指す。また、モデルユーザーの対象企業数を増やし、様々なニーズを収集しブラッシュアップすることで、製品の高付加価値化を図り競争力を高めていく。営業方針としては規模や顧客数を無理に追わず、顧客満足度の向上を優先して取り組むことにしている。
c) セキュリティ診断事業
2026年12月期に売上高80百万円と、2022年12月期の41百万円から2.0倍を目指す。単価がリーズナブルな自動診断ツール「SecuAlive」を契約獲得のためのフックツールとし、付加価値の高い手動診断サービスの受注につなげる。営業方針については金融ソリューションの営業部と連携しながら証券会社向けの顧客開拓を進めていく。
d) 新規事業
新規事業については、計画3年目となる2024年12月期の黒字化と、2026年12月期の売上高1,100百万円を目標に掲げている。新デジタル時代におけるECの多様化・仮想空間の実用化・AIや高度通信技術の発展による様々な変革に対応しながら、「次世代のデジタルコマースを創生する」をミッションとし、金融システム開発で培ったコア技術をベースとして、プラットフォーム/ソリューションの新たなビジネス展開を図る。
新規事業の核となるのは、クラウドECプラットフォーム「Emerald Blue」を基盤としたデジタルコマース事業となる。前述のとおり、既に「AZLM CONNECTED CAFE」や「Tax Free Online」「EC-Fine」などに導入されており、今後はこれらECプラットフォーム上の流通額が拡大することで、レベニューシェアによる売上成長が見込まれる。ECプラットフォームについては引き続き横展開するほか、メタバースソリューションなどと組み合わせて次世代デジタルコマースソリューションなどの開発も推進する予定で、売上高は年率2倍増ペースでの成長を目指す。また、リーガルテック領域の「スマート法律相談」等の今後のサービス展開も注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ