明日の株式相場に向けて=「日銀トレード」のスペシャルウィーク
きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比55円高の2万7402円と続伸。前日の米国株市場ではFOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの関心が集中したが、結果的にポジティブな方向に作用した。ハイテク株中心に買われ、ナスダック総合株価指数は大幅高となり、相場の流れは強気優勢に傾いたようにも見える。だが取引の最中は乱高下を繰り返し、引け後も何か釈然とせず、依然として霧が立ち込めているようなムードが拭えない。
FOMCの結果が公表される前の段階からNYダウはマイナス圏で推移していたが、FOMCの声明文が明らかとなるといったんNYダウは大きく下押す展開となり、下げ幅は一時500ドルを超える場面があった。これは声明文に「利上げの継続が適切である」との文言が残っていたという理由による。これが取り除かれるのではという思惑が一部にはあったが、そうはならなかった。とりあえず今回の0.25%引き上げで利上げが打ち止めとなる線は消え、いわゆる失望売りを誘発する格好となった。しかし市場関係者に聞くと、「今のマーケット(米株市場)はとにかく楽観的な要素をほじくり返してでも見つけ、強気の材料にしたいというニーズが潜在している」(中堅証券ストラテジスト)とする。その後のパウエルFRB議長の会見で、氏が「ディスインフレのプロセスが始まった」という表現で、インフレの鈍化を半ば認めるような発言をしたのだが、これに食いつく格好で今度は一気に戻り足に転じることになる。特に米10年債利回りの低下を背景にハイテク株へのショートカバーに火がつき、ナスダック指数の上昇が顕著となった。
一方、FOMCという宴が終わり結果として買い方の勝利に終わったように見えるが、事前に想定された強気シナリオが成就されたことで目先材料出尽くし的な雰囲気も漂った。NYダウがプラス圏とはいえ引け際に急速に伸び悩み、前日終値近辺まで水準を落として取引を終えたのはそれを裏付ける。大幅高を演じたナスダック指数ですら、引け際にあっという間に100ポイント前後上げ幅を縮小している。
そうした玉虫色のFOMCイベントではあったが、これにはまだ先があった。「パウエル会見には間に合わなかったが、クリーブランド連銀が推計している“CPIナウキャスト”ではサービス価格のインフレが加速していたことが分かった」(ネット証券マーケットアナリスト)という。モノのインフレはピーク越えでも、サービス価格の方はむしろ勢いが増している状況にあり、パウエル氏の想定外にハト派寄りと言えなくもない発言が間の悪いものになってしまった。売り方手仕舞いの後だけに、ここから米国株の上値は重い可能性がある。ともあれ、これから相次いで発表されるアップル<AAPL>をはじめとするハイテク大手の決算が、今度はミクロからのアプローチで相場の方向性のカギを握ることになる。
国内では来週末2月10日に日銀正副総裁の後任人事が判明するとみられている。それまでの大手メディア経由の情報にマーケットの耳目が集中することになる。次期日銀総裁の椅子は政策の継続性を考慮すれば、雨宮正佳副総裁が座るのが自然な流れだが、実際のところはまだ皆目分からない。中曽宏前副総裁あるいは、白川総裁時代の副総裁であった山口広秀氏も有力候補として挙げられている。
山口氏は岸田首相の“推し”であるとの見方が強く、タカ派のイメージがある。このほかでは、日本総合研究所の翁百合理事長の名前も挙がっている。実際のところ翁氏が次期総裁に選出される可能性は低そうだが、副総裁候補としては有力で、その場合はやはりタカ派的な論客として日銀の政策路線変更の動きを後押しする可能性が指摘されている。来週末の日銀人事に向けたメディアの動向は注目であり、「決算プレー」と合わせて、ある意味でスペシャル版「日銀トレード」の色彩が強まることも予想される。
あすのスケジュールでは、2月の日銀当座預金増減見込みが朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。海外では1月の財新中国非製造業PMI、1月の米雇用統計、1月の米ISM非製造業景況感指数などが注目される。また、国内主要企業の決算発表では、キッコーマン<2801>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、デンソー<6902>、伊藤忠商事<8001>、三井物産<8031>、日本郵船<9101>、ソフトバンク<9434>などが予定される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
FOMCの結果が公表される前の段階からNYダウはマイナス圏で推移していたが、FOMCの声明文が明らかとなるといったんNYダウは大きく下押す展開となり、下げ幅は一時500ドルを超える場面があった。これは声明文に「利上げの継続が適切である」との文言が残っていたという理由による。これが取り除かれるのではという思惑が一部にはあったが、そうはならなかった。とりあえず今回の0.25%引き上げで利上げが打ち止めとなる線は消え、いわゆる失望売りを誘発する格好となった。しかし市場関係者に聞くと、「今のマーケット(米株市場)はとにかく楽観的な要素をほじくり返してでも見つけ、強気の材料にしたいというニーズが潜在している」(中堅証券ストラテジスト)とする。その後のパウエルFRB議長の会見で、氏が「ディスインフレのプロセスが始まった」という表現で、インフレの鈍化を半ば認めるような発言をしたのだが、これに食いつく格好で今度は一気に戻り足に転じることになる。特に米10年債利回りの低下を背景にハイテク株へのショートカバーに火がつき、ナスダック指数の上昇が顕著となった。
一方、FOMCという宴が終わり結果として買い方の勝利に終わったように見えるが、事前に想定された強気シナリオが成就されたことで目先材料出尽くし的な雰囲気も漂った。NYダウがプラス圏とはいえ引け際に急速に伸び悩み、前日終値近辺まで水準を落として取引を終えたのはそれを裏付ける。大幅高を演じたナスダック指数ですら、引け際にあっという間に100ポイント前後上げ幅を縮小している。
そうした玉虫色のFOMCイベントではあったが、これにはまだ先があった。「パウエル会見には間に合わなかったが、クリーブランド連銀が推計している“CPIナウキャスト”ではサービス価格のインフレが加速していたことが分かった」(ネット証券マーケットアナリスト)という。モノのインフレはピーク越えでも、サービス価格の方はむしろ勢いが増している状況にあり、パウエル氏の想定外にハト派寄りと言えなくもない発言が間の悪いものになってしまった。売り方手仕舞いの後だけに、ここから米国株の上値は重い可能性がある。ともあれ、これから相次いで発表されるアップル<AAPL>をはじめとするハイテク大手の決算が、今度はミクロからのアプローチで相場の方向性のカギを握ることになる。
国内では来週末2月10日に日銀正副総裁の後任人事が判明するとみられている。それまでの大手メディア経由の情報にマーケットの耳目が集中することになる。次期日銀総裁の椅子は政策の継続性を考慮すれば、雨宮正佳副総裁が座るのが自然な流れだが、実際のところはまだ皆目分からない。中曽宏前副総裁あるいは、白川総裁時代の副総裁であった山口広秀氏も有力候補として挙げられている。
山口氏は岸田首相の“推し”であるとの見方が強く、タカ派のイメージがある。このほかでは、日本総合研究所の翁百合理事長の名前も挙がっている。実際のところ翁氏が次期総裁に選出される可能性は低そうだが、副総裁候補としては有力で、その場合はやはりタカ派的な論客として日銀の政策路線変更の動きを後押しする可能性が指摘されている。来週末の日銀人事に向けたメディアの動向は注目であり、「決算プレー」と合わせて、ある意味でスペシャル版「日銀トレード」の色彩が強まることも予想される。
あすのスケジュールでは、2月の日銀当座預金増減見込みが朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。海外では1月の財新中国非製造業PMI、1月の米雇用統計、1月の米ISM非製造業景況感指数などが注目される。また、国内主要企業の決算発表では、キッコーマン<2801>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、デンソー<6902>、伊藤忠商事<8001>、三井物産<8031>、日本郵船<9101>、ソフトバンク<9434>などが予定される。(銀)
出所:MINKABU PRESS